05.11.緊急家族会議
台風が過ぎ去って、公園の葉っぱが大量に舞い込んできたものの、我が家の屋根も外壁もガラスも、さらにはフェンスにも、まあ、一言で言ってしまえば家自体には何の損傷も無く、台風一過の雲ひとつ無い一日が終わろうとしていた。
家の中、というか、ある男の心情を除いては。
「緊急家族会議だっ!!!」
珍しく呑みにも行かずに定時で帰ってきた父さんが叫んでる。
「あなた、少し落ち着いたらどう? 二人共怯えちゃってるじゃない」
そして、いつもと変わらない笑顔の
何でこんな事になってるかというと、今朝方かかってきた
「もう、
はい。そうです。僕が悪いんです。『僕と付き合ってよ』なんて言っちゃったから何か照れくさくて。それに、
まあ、『けど』の後に何を言おうとしたのかは気になるけど……
あのまま承諾されても実際困ってたかな。
僕は
それに、もしも付き合い始めてからどっちかが元に戻ったら?
「お前たち……」
「まあまあ、玄関で立ち話というのも何だから、リビングに行きましょうか。ねっ。ほら、あなたも」
ソファーに並んで座る僕と
ダイニングテーブルを挟んだ反対側には父さんと
「まずはどういう状況か説明してもらおうか」
「もう、そんなに威圧しなくても」
「状況って、風が吹いて家が――」
「まって、
「まあ、そんな状況なら仕方ないわよね。
「
「でも……」
「いいの、母さん。ちゃんと説明しないと」
「それで、『覆いかぶさった』とか『キス』とか『続き』とか……、どこまでいってるんだ?」
「あれは僕がふざけてただけだよ。一緒に寝たけど、何も無かったんだから」
「証明できるのか?」
「証明って、馬鹿なの、父さん。起きてないことを証明するのは困難なんだよ。悪魔の証明って聞いたことないかなぁ」
「親に向かって馬鹿とは……」
「だって馬鹿じゃん。キスしてないことなんて証明出来るわけないもんっ!!」
「二人共興奮しないで、ね?」
「あっ、そうだ。ここでパンツ脱いで見せようか。無いことの証明は困難だけど、在ることは見れば判るよね。
僕が未経験なの確認すればいいじゃん」
「それでキスしてない事の証拠になるのかっ!」
「はぁ、ほんと馬鹿だね。無理だって言ってるじゃん。だいたい、キスなんて挨拶みたいにしてる国だってあるのにさ」
「ここは日本だ」
「だから何? じゃあ、僕と
「若い男女が一緒に寝てればそういう事になるだろうが」
「何それ、証拠のつもりなの?」
この糞親父、証拠はとかいいながら自分は出す気もないんだから。ほんと、馬鹿らしい。
「僕達、姉弟なんですけど。姉弟でそんなことするわけないじゃん」
「義理の姉弟だ」
「義理の姉弟ならエッチとかしてもいいってこと?」
「ああ」
「ああって……、じゃあ、何の問題もないじゃん」
「違っ、それとこれとは話が別だ。話をすり替えるな」
「もう、どうしたいんだよ。本当のこと言ってるのに信じないし、一方的に決めつけてるだけで証拠も出てこないし。ずっと平行線じゃん。 ……解った、ぼくの
「この野郎っ」
「二人共、そこまでよっ!!!!!」
うわっ、
糞親父も硬直してやがるし。
「証拠も無いのに言い掛かり付けるなんて、みっともないわよ、あなた」
「それは――」
「無いんでしょ? 証拠」
「……」
ふん、ざまあみろ。
「
「……」
何で僕まで……
「さて、邪魔が入っちゃったけど、実際のところはどうなの?
「本当に
「それから?」
「それだけ」
「なーんだ。赤ちゃんはまだでも、もう少しぐらい進んでるかと思ったのに」
「
「ダメって言っても出来ちゃうものは出来ちゃうのよ? あなただって――」
「ちょっ、その話はまだ」
「そうだったわね。兎に角、こそこそ付き合っていつの間にか出来ちゃいましたってより、公認の方が心の準備も出来るでしょ?」
いや、出来ちゃうこと前提で話されても……
「でもね、だからといって節度をもってお付き合いして欲しいの。高校ぐらいはちゃんと卒業しましょうね、
「えっと……、はい」
僕の心配なのか……
「ちょっと
「そっか。その心配はないよ、
「そうなの? いつもラブラブなのにぃ。期待してたんだけどな、は・つ・ま・ご!」
やめてよ、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます