05.05.続・プールが怖い

 「ねえねえ、もうすぐ夏休みだよねー。プール行こうよ、皆んなで。楽しみだなー、姫ちゃんのハイレグビキニっ」


 そんなの着ないけどね……


 「でっ、いつにする?」


 既に行く事は決定していて、あとは日取りを決めるだけとなっているみたいな得利稼えりか


 「そうですね、皆んなで行くのも楽しそうですわね」


 「うんうん、水無みなちゃんのマイクロビキニも楽しみだねー」


 水無みなだってそんなの着ないだろうけど……

 着るのかな……


 「ぼくは遠慮しておこうかな」


 「そうだったわね、武神たけがみさんが行かないなら私も遠慮しておこうかしら」


 「私も止めておこうかな。お母さん、この所体調悪いみたいだし、女の子二人とってのはちょっとね」


 「ってことは姫ちゃんと二人きりかー。いいねいいねー。いつにする? 姫ちゃん」


 得利稼えりかと二人なんて嫌な予感しかしないよ。


 「僕もちょっと……」


 「えー、なになに、得利稼えりかと二人じゃ嫌なの?」


 「いや、そういうわけじゃ」


 まあ、そういうわけなんだけどさ。


 「うーん、伊織いおりが言った通りで、義母かあさん食欲無いみたいでさ。食事の用意とか色々と……、ねえ、伊織いおり


 「お母さんは普通に会社行くみたいだし、プールってそんなにずーっと行ってるわけじゃないから大丈夫なんじゃないかな」


 「あー、そうかもねー」


 もう、凜愛姫りあらったら。


 「じゃあ、平気ってことで」


 何て断ろう……。期末試験は大分先だし……


 「ね?」


 ごめん、可愛くないからそれ止めて、得利稼えりか


 「あっ、そうだ、仕事があったんだ。いやー、ちょうど8月末納期の仕事受けちゃっててさあ。うん、仕事だ、仕事」


 「それ、もう終わったって言ってなかった?」


 「えっ? そう? 他の案件が入ったような……」


 もう、何なの凜愛姫りあら。そんなにプールに行かせたいの?


 「姫ちゃん……」


 「えーっと、僕の勘違いかな。行こうか、プール……」


 「やったーっ!」


 はぁ。気が重い。


    ◇◇◇


 そして、当然のことながら学校指定の水着しか持っていない僕は、プールの前に得利稼えりかと水着を買いに行くことになってしまうわけなんだ。

 ちなみに、学校指定といってもスク水とかじゃなくて、膝まである競泳用の水着ね。やっぱ、股間がきわどいのはちょっと無理かな。


 「姫ちゃん、これなんかどう?」


 「それもう、お尻丸出しにしかみえないけど?」


 「えー、似合うと思うけどなあ。試しに着けてみたら?」


 さっきから只のエロオヤヂなんだけど、得利稼えりか


 「しかし、どれもこれも面積が小さいなぁ。百歩譲ってこれなんだけど、こんなんで収まるのかな」


 手にしたのはボクサーパンツみたいな水着なんだけど、それでも小さい気がする。まあ、はみ出すようなモノは無いんだけどね。


 「ボーイレッグかあ。折角だからもっとエロいのにしようよ」


 「やだよ。得利稼えりかが買えばいいじゃん」


 「勿論、そのつもりだよ?」


 そうなんだ……


 得利稼えりかに何だかんだ言われながらも、そのボーイレッグとかいうのを買うことにした。ついでにパレオ付き。これなら隠せるかな。

 父さんが会社の保養所の抽選当てたみたいだし、1着持っててもいいのかも。


    ◇◇◇


 そして、得利稼えりかとプールに行く筈だった7月のある日。


 「ごめん、姫ちゃん。熱出しちゃってさ。今日無理みたい」


 「そうか。熱なら仕方ないね」


 「何か嬉しそうだね、姫ちゃん」


 「そんな事ないよ? あっ、何か声がつらそうだね。じゃあ、お大事にね」


 幸運にも、得利稼えりかの発熱によってプールは中止となったのだった。


 ちなみに、保養所はというと、7月だというのに台風が直撃したため、海には近づくこともできなかった。建物から一歩も外に出ることができず、おいしい料理を堪能して帰ってきただけとなったのだった。

 折角買った水着は出番なしなのである。

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