第10話 ※運営陣※
リーエン=オンラインが稼働を始めて、六時間と少し。
稼働開始と同時にプレイを開始できた最初期のプレイヤーと、一時間ごとに追従してくる他のプレイヤー達。リーエン=オンラインは新たなシステムを様々に追加しているとは言え、アバターを動かす基本的なシステムは他のVRMMOと大差ない。プレイヤー達はそれぞれ思い思いの行動を取り、個室に到着した時点で一旦ログアウトしてしまったプレイヤーも居れば、冒険者ギルドに赴き、クエストをこなして一段階目の転職を終わらせてしまったプレイヤーも居る。
「中村さん!」
慌てた声で名前を呼ばれた中村は、モニターに注いでいた視線を上げ、声の出所を探す。リーエン=オンラインの開発者の一人である中村も、深夜とは言え当然会社に居残り、ホルダを中心に動き回るプレイヤー達の動向を見守っていたのだが。中村を呼ぶ声は、二つ向こうのデスク、シナリオが正常に進行するかを確認している部署のスタッフ達からだった。
「どうしました?」
「ちょっと見てください!」
手招きをされて覗き込んだモニターの向こう側では、一人の無垢なる旅人が、商人ルイボンに[アンクローク]をかけたところだった。
「……素晴らしい!」
中村は感嘆の声をあげる。
まさかこんな短時間で、何のヒントも与えられていない状況で、
「感激してる場合じゃないですよ。このプレイヤー……【シオン】は、中村さんの選んだ
「えぇ、そうですよ」
「情報漏洩が無いのは確かですが……何なんですか、彼。[三毛猫]にも驚きましたが、こんな序盤でプレイヤーがNPCの
「アバターとの親和率も、【シオン】は他のプレイヤーと頭ひとつ違って抜きんでてますね。一緒に行動してる【炎狼】もなかなかのものですが、類は友を呼ぶってところですか」
「ハハハ」
「だから笑い事じゃないですって……うわぁあああ、得たスキルが【慧眼】……!」
「
「確か、一番最初に転職を果たしたのも【赤】の盟主候補でしたね。さすが、盟主候補達は面白い」
悲喜交交のスタッフ達を他所に、モニターの中で動く【シオン】の姿に、中村は密かに笑いかける。
「頑張って下さい、黒の盟主。リーエンの世界は、あなたと言う
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