偽物は許さないにゃ

 一度家に戻り、まりのはもう寝ていたので来夢となな子にさっきの話をした。


『完全に偽物の詐欺神社だにゃ』


「新田さんには連絡したけど、物的証拠がないとすぐにどうこうは出来ないって」


『そらそうだにゃ、明日なな子に行って神主に名前を使わせたかどうかだけ確認してもらうにゃ』


「わかったわ、でも高須川さんがそんなのに協力するわけないし、勝手にやってるんでしょうね」


『たぶんそうだにゃ』


「そういえば、トラちゃん厳島神社に行ったでしょ?」


 ドキッ!


『なんのことだにゃ?』


「トラちゃんの姿がばっちり写ってましたよ! まりのがアッ! トラちゃんだって叫んでいたから間違いないでしょ?」


『ばれたにゃ』


「しかも魔法も使ったでしょ? 歩けなかった子供が歩けるようになったり色々奇跡だとか言われてるけど、どうするの? エリクサーがようやく落ち着いたのに……」


『すまんにゃ…… 奇跡は定期的に日本中で起こすにゃ、但し動物の保護に力入れているところだけにゃ』


「神社はどうするの?」


『まずは巫女達に警告するにゃ、その後は黒幕をみんな後悔させてやるにゃ』


「新田さんにはなにか連絡することある?」


『あの神社の持ち主とか調べておいてほしいにゃ。暴力団がもしかしたら神社を買って資金源にしてるのかもしれないにゃ』


「わかったわ」


『また行ってくるにゃ』


 さっきの偽物神社へ飛ぶともう誰もいなかったが、捕らわれている子猫はそのまま放置されていた。


【おい、大丈夫か?】


【だいじょうぶ、さっきお水はもらったから】


【名前はなんて言うんだ?】


【名前はまだないよ、猫とかしか言われないから】


【じゃ今日からコリンだ】


【コリンか、いい名前をありがとう】


【とりあえずこれ食べておいて】


 必殺ちゅるんを口を切って2本出す。


【な、なに?? これ? 美味しい】


【空腹であまり食べるといけないから今日は2本だけだけど、助けたらもっと食べさせてやるよ】


【ありがとう、ん? なんて呼べばいい?】


【俺か? 俺はトラでいいぞ】


【トラにいちゃん?】


 なんかいいな…… 響きがよい


【少なくともあと2日以内には助けるから、そして明日もちゅるんは持ってくるからな】


【まってる、トラにいちゃん】


【おう!】


 元気も良いしコリンも大丈夫だろう。まずは巫女達だな。まずは一人目の家に飛ぶと寝転がってスマホを見ている女性がいた。いつもの如く電気をのスイッチを切り本棚の上で光る。


「ヒイィィィ」


『そんなにビビるでにゃい。よいかお主のやっていること詐欺だにゃ。これ以上続けるなら天罰を与えるのでそのつもりでにゃ』


「て、天罰って?」


『簡単にゃ お主の魂を捨て猫に移すだけにゃ』


「私は?」


『お主の身体は死ぬだけにゃ』


「イヤイヤアアア 助けてええ」


『あの仕事は辞めるにゃ。そしてもらったお金は社会の為に使うにゃ。それが出来なければ猫になるにゃ』


「わかりました。もうやめます。お金も寄付しますから助けてください」


『大丈夫だにゃ、詐欺って知らないでやってたのならにゃ、でも旨い話には気をつけるにゃ』


「はい……」


『じゃ残りの2人にも説明してくるにゃ、今日の3人以外にもいるにゃ?』


「はい、土井美樹ちゃんが……」


『その子にはお主が説明するにゃ』


「はい、必ず……」


 電気を付けて残りの2人も同じように話をして納得してもらった。これで明日は巫女は誰もいないだろう。土井って人に連絡ついたかを確認するために一人目の家に飛ぶとさっきの子が震えて泣いている。そこまで脅してないよな?


『どうしたにゃ?』


「ヒィィィ 私どうすれば……」


『どうしたにゃ?』


「美樹ちゃんに電話したあと明日からバイト行けないって徳江さんに電話したら、明日からも来ないと、家族がどうなるかわからんぞって言われて……」


『にゃんだと……』


「この仕事はヤクザの息子としているから、来ないんだったら1人50万の違約金を払うか家族の誰かが不幸になるって……」


『じゃ明日はみんな行くにゃ、そんなふうに皆に連絡するにゃ』


「でも50万円もないし……」


『大丈夫だにゃ、どうにかするにゃ』


「ありがとうございます」


 さてどうするかな? 神社の神主には追跡の魔石を仕込んでいたので行ってみるか? とりあえず飛んでみたら、そこには神社の奥でお金を数えている3人がいた。しばらく話を聞いていたがこの3人以外には関係している人はいないようだ。じゃ遠慮なくやっちゃうか?

 いきなり電気のスイッチを切ると部屋は真っ暗になった。


「なんだ? ブレーカーでも落ちたか?」


「ちょっと見てきます」


 そう言って徳江が立ち上がろうした瞬間にフラッシュ並の光を放ち3人を前回も使った洞窟へ転移させた。この洞窟も前回よりバージョンを上げて異世界の魔物の像を薄っすら浮かび上がるように蛍光塗料を混ぜた粘土でコーティングしたので、転移前10分程洞窟内を照らし塗料が発光していい感じに見えるようにしている。しかも少し生臭い本物の魔物の臓物も置いてある。


 3人はいきなり光ったと思ったら板張りの部屋から土にかわって混乱している。


「ここはどこだ? 今まで神社にいたよな?」


「あ、あれはなんだ?」


「ヒィイイイ、化け物……」


 3人は真ん中で固まって震えている。でもしばらく放置してみていた。


「あれは化け物? クサイぞ」


「大声出したら気づかれて食べられたりしませんか?」


 リクエストに答えて恐竜ぽい鳴き声を携帯プレーヤーから再生する。サラウンドシステムを洞窟内に埋め込んでいるので、めっちゃ臨場感あるんだよな……


(グォォオオオオオ)


「ヒィイイイイイ」


「オイ、バカ声だすな」


 面白いからいろんな動物の鳴き声を再生してみた。3人はもう声も出ないほど憔悴しきったようだった。そろそろいいかな?


 でもせっかくのサラウンドシステムは利用させてもらう。念話ではなく低めに地声を出す。


「おぬしらは、わしのけんぞくをとじこめ、みずもあたえないでいたな? いまから10日ほどここですごしてもらおう。そのまものたちにうまくコミュニケーションとれたらみずもでてくるかもな」


 相変わらずこのしゃべりは疲れる。


「人の言葉理解できなきゃ死んじゃう」


「おかしなことをいう、あのねこがひっしにみずとうったえていたのをむししただろ」


「すみません。助けてください」


「まものたちがわかればよいがの、おこらせるとたべられるからきをつけよ、3日ごくらいにみにくるかな、さらば」


「おい、これって本当の猫神か?」


「それ以外考えられます?」


「どうするんですか? あいつらに話つうじるんですか?」


「大声出すと食べられるって言っていたし、どうする?


「知りませんよ……」


「高木、お前ちょっと話しかけてこいよ」


「絶対無理です」


「少なくとも3日間生き残る為には交代で休むしかないな。まずは俺が限界までみているからお前ら休め」


「こんな中休めませんよ」


 俺はこの三人を放置して家に戻ってゆっくりと寝た。



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