エリクサーの代わりは簡単にはあげられないにゃ

 3人を見送った及川がどのような行動を取るのかを確かめてみると、広いリビングの先にある小部屋へ2匹が入ったケージを下げて持っていった。そこには猫用のソファーやキャットタワーが置かれていてそこへ2匹を放した。


「猫神様、どうか私にエリクサーを1本分けてください。子供が小さい頃に事故にあってから寝たきりの生活になってしまってます。どうにかして子供に元気よくなってもらいたいんです。もしも願いが叶えられたら一生快適な生活をお約束しますので、お願いします」


 なるほど、そういう理由か……


 でもな、勝手に連れてくるのが横行するのは困るんだよなぁ。かといって子供の不幸をそのまま見過ごす事は出来ないし、どうするか悩みどころだな…… ただ、その2匹に話しかけても無駄なんだよな! 無駄とわかったらどういう行動を取るのだろうか?


「猫神様、返事をしてください。お願いします」


 当然返事はない……


「いきなり連れて来られて緊張しているのでしょうか? とりあえずご飯を持ってきますね」


 しばらく引っ込むと滅茶苦茶高そうな猫缶や高そうな牛乳等が入った盆を持って来た。


「猫神様これをお食べください」


 そう言って盆を置くと一度リビングの方へ戻っていった。


【トラちゃんこれ食べてもいいの?】


【いいよ、問題なさそう】


【美味い!】


【ブッチは少しは警戒しろよ】


【こんな美味そうなもの我慢出来ないだろ?】


【美味しいか?】


【美味しいよ、神社のご飯より美味しいかもしれない】


【そうか、じゃここに住んでもいいと思う?】


【俺はここに住みたいかな? 俺だけだと寂しいかもしれないけど】


【私はここよりも神社がいいな、みんなと過ごしたい】


【わかった、じゃ将来はブッチはここに誰かと住めるようにしよう、でも一回は神社へ戻るぞ】


【それでいいよ! 寝床も快適だし言うことない】


【今日はそれ食べたら、すぐに寝ろ!眠たくなくてもドアが開いたら寝たフリをしといて】


【なんかわからんがわかった】


【わかったわ】


 さてエリクサーを出すとまた問題になりそうなので、エリクサーを出さずに娘を治すにはどうすれば良いのかな?ハイポーションでも殆どの病気や怪我は治るから一度、娘の様子をみてみるか? 屋敷の中を見て回ると2階の部屋に人の気配を感じた。こっそり入るとそこにはベッドに寝た状態の少学生くらいの女の子と父親がいた。


「よっちゃん、もうすぐその足も治るからな、治ったらママの墓参りに行こうな?」


「パパ、無理しないでね、治らなくても仕方ないからパパが無理してなにかあったら、そっちが嫌」


「パパは大丈夫だ、よっちゃんが治るなら何だってするよ、もうすぐ神様が願いを叶えてくれるから」


「神様なんていなよ…… いるならママも助かっているはずだし……」


「……」


 父親は黙り込んでしまった。


「ごめんなさい」


「いや、謝らなくても大丈夫、じゃゆっくりおやすみ」


「おやすみなさい」


 父親は子供部屋に行くとリビングに戻ってきて2匹のいる部屋を開けたが、もう2匹共寝ていたのでそのままドアを閉めリビングに引き返しソファに座りくつろぎ独り言を言っていた。


「寝てしまったか、どちらが猫神様なんだろうか? どちらにしてもお願いするしかないんだよな」


 さっさと終わらせようと思いリビングの電気消した。


「うゎっ!」


 いきなりの停電にびっくりしたようだが、俺はそのままリビングにある本棚の上で光リを出す。


『大事な仲間を連れてきたのはお前かにゃ?』


「ね、ね、猫神様でしょうか?」


『そうも呼ばれているにゃ、でもお前が連れてきたのは猫神ではないにゃ、わしの眷属だにゃ、勝手に連れてきたやつには天罰を与えるにゃ、なにがよいかにゃ? 』


「どうか、どうか天罰を与える前に、娘を治すためにエリクサーをください。その後であれば天罰でもなんでもお受けします。自分が娘のような状態になっても構いません。命が無くなってもかまいません。自分が死んでも娘が楽に過ごせるくらいの生命保険には入っていますのでどうかお願いいたします」


 えっと…… そこまでの天罰は考えていなかったんだけど…… 重いわ!


『奇跡の水はもうないにゃ 神社の大事な生命の樹が盗られたからもう二度と出ないにゃ』


「そんなぁ……」


『娘を見たけどあれは治るにゃ』


「エエッ?」


『でも治すには試練があるにゃ』


「なんでもしますので教えて下さい」


『あの神社でお百度参りを続けるにゃ、その時に毎日コップ一杯の水を池からくむにゃ、それをもってお参りするにゃ、そしてそれを毎日飲ませると治るにゃ、但し代理ではだめだにゃお主がお参りするにゃ』


「本当ですか?」


『嘘は言わないけど、この話は広めるでにゃいぞ』


「はい」


『それからあの2匹は一度神社に返すにゃ、もう少しすると譲渡会があるにゃ、そこで今日連れてきた猫の雄と、今日連れて着ていないメスの猫を引き取るにゃ、あの猫はブッチというにゃ、娘が治ったら必ず猫も幸せにするにゃ』


「はい、それはもちろん! あの2匹様はすぐに戻してきます」


『あとはあの2匹を連れてきたものにお金は渡したら駄目だにゃ、そのお金は猫や犬の保護に使うにゃ』


「わかりました。全て然るべきところに寄付させて頂きます」


『よいにゃ、すぐには治らないが必ず治るにゃ』


「ありがとうございます」


『猫泥棒は駄目だにゃ』


「す、すみませんでしたあああああ」


 これだけ言うと俺は姿を消し、電気をつけた。


「夢じゃないよな? 明日からお参りしよう」


 俺はその後2匹にさっきの話をして一度神社へ戻されるけど、ブッチはあとでここに引き取られる話をしてから3人組がいたマンションへ飛んだ。

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