幕間3-③手紙の中身はなんだろにゃ?

 中身を出して並べるクリスティーネ王女をみんなが暖かく見守っている。クリスティーネは一番楽しみにしていた手紙を開いた。


 でも少し読むのは難しかったのか、


「お母しゃま読んでください」


 女王は頷いて読み始めた。


「クリス様お元気ですか、タイガです。こちらの世界に戻り数週間が経ちました。本来は楽しい生活を送っていたはずなのですが、アルメエル様の間違いで人間として戻る事ができずに、今は猫の姿で過ごしております。猫はそちらにいなかったので今のタイガの写真をいれています。写真はこちらの世界のいろいろな場所の写真も一緒にいれていますので、お楽しみください。

 技術的な事がわかるような写真も少し入れていますので、ハーラルフ宰相と相談して試してみてください。

 こちらの生活は遅くとも3年で人間に戻れるようになっていますので安心してください。猫の姿で少し不便な事もありますが、今のところなんとかやっていけています。

 タイガと一緒に写っている女性は妹のようなものです。人間にしか出来ない事をやってもらっています。

 クリス様はいかがお過ごしでしょうか?返信用の紙とボールペンを入れています。ボールペンは何も付けなくても文字が書けます。書けなくなるまで使えます。

 お返事をこれらが入っていた入れ物に入れ転送陣に置いてください。3日後にそちらから送れるかを実験してみます。4日めになっても消えない場合には失敗ですから違う方法を考えます。中にいれてあった魔石は転送陣の真ん中に置いてください。これでそちらとのつながりを強くする予定です。

 なかなか魔力を使う事や、送れる量が今はまだ小さいですが、次はこちらの様子を動く映像で見せられるような物を送ります。沢山の物を送れるようにして、最終的にはそちらとの行き来ができるように頑張りますのでクリス様もお元気でお過ごしください」


 クリスティーネは嬉しくて嬉しくて涙が止まらなかった。


「あい……」


「タイガ様も向こうで頑張っているみたいですね。これが写真っていうものですね。他の人の事も書かれているので全部読みましょう」


「マルト女王様、そちらにいる時にはお世話になりました。もう少し大きな荷物が送れるようになったら、こちらの世界の化粧品や香水を送ります。王様の手綱をしっかり握っておいてください。

 ロマーノ王子、火魔法を理解しやすくする映像を今度送ります。映像を見て想像力を働かせると火魔法は強い魔法を発動できます。どうかクリスティーネ様をお守りください。

 ハーラルフ宰相様、孤児関連や教育関係は上手く回っていますか?もしも質問などあったら手紙に書いてください。

 カテリーナにも化粧品と香水を送るよ。ペイロンと仲良くしているかい?

 バレーロ王、ペイロン浮気は駄目ですよ」


 それぞれの名前を呼ばれると、神妙に聞き入り頷いていたが、最後の2人だけは何か憤慨していた。


「わしへはそれだけか?」


「えぇ……」


「おとうしゃまはさいごにタイガしゃまとクリスの邪魔をしたのでそれでいいんです」


「くそぉ…… 向こうの世界の養毛剤とやらを送って貰いたかったのに…… クリスたのんでくれないか?」


「そんなの入れたら私達の化粧品が減るではないですか? そんなのはまだまだ先です。まずはクリスの欲しい物、そして化粧品それからロマーノやハーラルフの欲しい物で最後にあなたや、ペイロンのものですね」


「わしは王様なんだが……」


「何か問題でも? あなたの髪が薄いのが治ったところで何か変わりますか? もしかして女性と遊ぼうとでも思ってらっしゃるのかしら?」


 そういいながら指輪を撫でると王様はブルッとして何も言わなくなってしまった。


「お手紙はここまでね、送ってきた物をみてみましょう」


「これがタイガしゃま?」


「そのようね、可愛らしい動物にされちゃったみたい」


「かわいいです」


「後ろの女性が妹さんみたい」


「うぉおお! なんだこの建物や馬や騎獣がいないのに何か走っているぞ?」


「このドレスはすごい! 誰かこのドレスを私のサイズで仕立てなさい! こっちはカテリーナに似合いそうだからカテリーナ用に仕立てなさい!」


「これかわいいです」


「これはクリス様用ですね、しかもクリス様用のデザインの写真がたくさん入ってますよ。良かったですね」


 カテリーナが子ども用ドレスの写真が沢山あるのを見てクリスに話しかけた。


「はい、うれしいです。タイガしゃまがいればもっとうれしい……」


 少し寂しそうな顔になってしまったのでロマーノ王子が慰めた。


「クリス、今回届いたと言うことはタイガ様とうまくいけば連絡が取れるようになるし、悪くても向こうからは送れる事になるから良かったじゃないか?」


「そうでしゅね」


「そうよ、タイガはクリス様の笑顔を守るために魔王と戦ったんだからクリス様はいつもニコニコしておかないとタイガが悲しむわ」


「はい!」


 女性達には洋服や和服等のファッションの写真が人気で王子やペイロン達には車や近代的な建物等が人気のようだった。


 写真の他には魔法陣が中に書き込まれている魔石が入っており、指示通りに魔法陣の真ん中に置いてみると、一瞬輝いてから元の魔法陣の中に自分で潜り込むように融和してしまった。


 それ以外にはボールペンが3本とメモ用紙が数十枚入っていたので明日の夜までに各々が手紙を書いて入れる事にして、他に何か贈ろうかという話になったがお金以外は結構いろいろ持っていったので、何を贈ればよいかなかなか思いつかなかったが、クリスが魔道具を持ってきた。


「これにお話をする」



「そうだな、タイガが作ったボイスレコーダーというやつに皆で声を入れて贈ろう」


 ペイロンがクリスの案に賛成をすると、周りのみんなも頷いていたので、これが一番の贈り物だろうという事に落ち着いた。それをみて王女が声を上げる


「では明日の夜に手紙と、声をいれてセットしましょう。今日は夜も遅くなりましたので寝ましょう。クリスも嬉しくても早く寝ないと知りませんよ!」


「はい、おやすみなさい」








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