幕間3-① 異世界通信の手がかり見つけたにゃ

 エリクサー騒動も沈静化し、地球に戻って半年程が経過していた。

 ずっと空いた時間があれば、アイテムボックスの中の異次元空間で繋がっているであろうトリアムの転移陣を探していた。

 異次元の世界がどのくらいあるのか、そしてそれぞれの時間軸が一緒なのか等の不明な部分が多すぎるが地道に探すかしか無いと思い、いろいろなラノベを来夢に買ってきてもらったタブレットを使って読み漁り、物理関連の本を読み漁り何かしらのヒントにならないかを探っていた。猫にでもわかる相対性理論は猫の俺にも解らなかった……

 異世界に行くとチートで並列思考等もらえる人もいるらしいが、駄メルの加護はそこまで無く、頭の回転は全然変わらなかった。まぁ猫の脳で人間と同じように考えられるだけマシだと納得するしかなかった。


 全く魚がいない死海で釣りをしているような毎日を送る日々だったが、漠然とトリアムの世界を探していたが、姫たちに場所を特定出来るアイテムを渡していた事に気がついた。本来は危険があった時に自動発信するように付加していた魔石だが、こちらの世界のGPSと同じようなイメージを埋め込んでいたので、もしかしたらそれを追跡出来ないかを考えてみた。

 アイテムボックスに手を突っ込み、クリスティーネ 王女の魔石を探すイメージを膨らませていく。サーチをかけると魔力がごっそりと抜けていくのが感じられ、駄女神に絶対に使うなと言われた大規模魔法を使えるくらいの魔力が抜けていった。

 もう駄目だと思った瞬間、細い蜘蛛の糸を掴むような感覚が指先にあり、意識をその糸のようなものに集中すると段々蜘蛛の糸がどんどん太くなり絹糸の太さになり、更に集中するとそれがタコ糸の太さになり最終的にはロープの太さで繋がったような気がした。ただそれを手繰るたぐるだけの魔力が残っていなかったので、そのロープを無くさないように意識を固定をして船から桟橋の杭にロープを結ぶイメージで固定する。

 魔力が回復したらこれを手繰っていけば繋がるような気がした。


 ヘロヘロになってリビングに向かうと来夢が俺を見てびっくりしていた。


「トラちゃんどうしたの? ゲッソリとした感じだけど?」


『今日はちょっと頑張り過ぎたにゃ、何か力の出る料理が食べたいにゃ』


「じゃ今日はスタミナ丼スペシャルにするね! 豚バラにニラにニンニクも入って滅茶苦茶臭い料理だけど、元気バリバリになるよ!」


『臭そうだにゃ……』


 ちょとピリ辛のタレでとても美味しかったが、息をするたびにニンニクの匂いが香るのが少し困ってしまった。早く寝て少しでも魔力を回復させないといけない。向こうの世界よりも魔素が少ないせいかこの様子だと3日ほど魔力が貯まるまでには時間が必要だと思い、3日間程は魔力を使わないようにシロ達やマル達と今後の猫神社での展開について話をしたりして回復するのを待った。


 3日後アイテムボックス内のロープのような感じの意識の道をこちらの世界まで引っ張れないかをやってみたが、全く動くような気がしない。このままではトリアムへ何かを送ることはできない。現状はロープが繋がっているような状態なので、そのロープの中を通してやれば何か送れるんじゃないか?

 イメージ的には昭和から平成前期のラブホテルでの支払いのスタンダードだったエアシューターのイメージをロープのような道に与えていく。あのエアシューターのボトルは無いが、口の広いペットボトルを利用すれば中身も取り出せるし、いろいろ送れるような気がする。ペットボトルを少しずつ中を通すように進めていきながら道を固定化していく作業を繰り返し続けていた……


 すでに数キロ近いイメージだが、これってどのくらいかかるのだろう?

 星と星みたいな感覚だと絶対届かないだろ?

 先が見えない以上繰り返し頑張るしかないので、毎日少しずつ道を広げペットボトルを先に進める作業を繰り返していた。毎回ボトルは戻して問題ないかを調べているが、問題なさそうなので、今後は手元に戻さずひたすら先を進めることにした。


 最初のペットボトルにはこの部屋の場所のイメージを、とにかく詳しくイメージした魔法陣が中にびっしりと書かれた魔石とクリス様や王様宛の手紙とこちらの世界の写真を数点と今の自分と来夢の写真を入れてある。魔石は向こうの転移用の魔法陣に置いてもらうと、テレポーテーションが使えるようになるかもという期待をしている。


 それから数日後に何やら今までの手ごたえと違う抵抗を感じた。向こうの転移門につながったのか?転移門を使用する暗号を思い浮かべながらペットボトルを抵抗のある所から押し込むと、抵抗が全く無くなりペットボトルがどこに行ったのかわからない。


 成功か?


 失敗か?


 とりあえず返事が来るかどうか待ってみよう。











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