エリクサー後日談だにゃ

 エリクサーが枯渇して数週間経ったが、クワズイモからは普通の水しか出てこず毎日24時間体制で警備と研究者が張り付いていたが、徐々に規模が減らされて警備員1名と研究者が毎朝水を採りにくるだけとなっていた。

 しかし、エリクサーが出たという噂が噂を呼び神社へは結構な人数の参拝客が来るようになり、お賽銭等も今までよりも集まるようになっていた。

 遊水地からの水を飲むとエリクサーのような効果は無いが、体調が良くなる人が出てきて湧水池が荒らされそうになってしまった。そのため金儲けで水を利用すると悪影響を与え、神社にちゃんと参拝して心からのお祈りをしないと効果は全く無いこと。エリクサーのような効果はあのイモが無くなったのでもう二度と出ることはない事。ただ湧水池の水をコップ1杯分を飲むことでほんの少しだけ体調をよくする効果がある事をまりの経由で神社から参拝客へ伝えてもらった。猫神様と話をした少女からの話だということで、湧水池を荒らされることも無く神社も落ち着きを取り戻しつつあった。


 しかしフェイザー製薬は現状では1円の収入どころか、神社の賃貸料で3000万円もの金を支払ったので売上的にはマイナスで、武村に医院長経由で渡した残りの3分の1の量のエリクサーがあるだけで、そのエリクサーも調べども何も有効成分は出てこなかった為、部長の成井は焦っていた。


「おい、中林エリクサーはもう少しどうにかならんのか?」


「どうにかもなにも、移したら駄目だと言ったのを移したのは部長ですよね? それで戻したけど効果がない理由はわかりませんし、あの葉っぱから出ない以上もう出ないんでしょう」


「そんな、どうにかしろ!」


「何をどうすれば?」


「いざとなったら、その女の子を攫ってでもどうにかしろ!」


「今、何を言ったのかわかってますよね? この会社で誘拐とかバレたら会社が消滅しますよ?」


「うるさい、このままじゃ、俺は破滅だ」


「破滅でも命はなくならないでしょ? どっかに異動になる程度で……」


「異動なんかしたくない! その子の名前と住んでるとこはわかるのか?」


「わかりますが、お教えはできませんよ」


「言わないと服務規程違反でリストラ候補にいれておくぞ」


「そんな、馬鹿な話はありませんよ」


「あのリスト出すのは上長の俺だから、馬鹿な話もなにもないぞ、言わなきゃリスト入だ」


「教える事はできませんが、少女の連絡先を書いた紙は自分の机の上に置いてあります。自分は外出してそのまま直帰の予定です。その間何かあっても自分の知らない範疇です」


「わかった、気をつけてな」


「では行ってきます」


 中林が部屋を出るが早いか、成井部長が中林の席に飛びつくのが早いかわからないくらいのタイミングで成井が中林の机まわりを調べて何やら住所を書いた紙を見つけ、自分の手帳に書き写していた。


 中林は一度神社に行って、あの子供がいないかを探していた。神社をくまなく探したが見当たらず諦めて帰ろうとしたときに、階段を上がってくるまりのを見つけた。


「下西まりのちゃんだよね?」


「知らない人には教えられないです」


「そうだよね、じゃお母さんに手紙を書くからそれだけ渡してもらえるかな?」


「手紙なら渡すの」


 中林は同じ会社の成井部長が良からぬことを考えていることや、すでにまりの達の情報を掴んでいることを手紙に書いてまりのに渡した。

 帰ってからまりのからの手紙を読んだなな子はすぐに俺の所に連絡をしてきた。まだ同居準備中だが、状況が状況だけに


『とりあえず、すぐに移動するにゃ、うちに来れば安心だにゃ』


「まだ引っ越しの手配とか全然してませんが……」


『大丈夫だにゃ、全部持って行くにゃ』


 アイテムボックスに家具ごとダンボールごとに放り込んで30分もしないうちにすっからかんになった。


「トラちゃんすごいの」


『このくらいは朝飯前なのだにゃ』


 予定より早いが今日から同居生活の始まりだ。来夢にはなな子経由で連絡させておいた。


『とりあえず二人共これを持っておくにゃ』


 二人にはペンダント式の魔石で作った防犯ベルを持たせた。まりのは薄い板状にしてお守りに入れて首から下げるようにしたので、学校でも問題ないだろう。何か仕掛けてきても対処できるように万全の準備をしておく。まりのの学校は今までより少し遠くなったが歩けない距離ではないので、できるだけ一緒に登校したり帰りも俺か、シロ達に護衛をお願いしている。


 俺の家から通い始めて3日めくらいから、誰か後を付けてくるようになったので、そろそろしかけて来そうだな。


 5日めの学校帰りにいつもの如く、神社へ向かいお参りをしていた。そこにガラの悪い3人くらいのチンピラみたいなのが、まりのを取り囲みんだ。


「こんにちは、なにかごようですか」


「はい、こんにちは、まりのちゃんだよね? お願いがあって来たのだけど、あの薬をどうにしかして手に入れられないかな?」


「あれはもうないの。あそこに立っているおじちゃんの会社が持っていってからもう出なくなっちゃったの」


「それって本当は他でも出るんでしょ? 出してくれないとママが大変な事になっちゃうかもよ?」


「大変なこと?」


「そう、怪我したり、行方不明になったりしたら大変だ」


「おじちゃん達がママに怪我をさせたり、どこかに隠したりするの?」


「あれがないともうママと会えなくなるかもしれないな」


「いやなの、またもらえるように猫神様にお願いしてみるの」


『まりの、神社へお参りするふりをするにゃ』


 まりのは本殿へ向かい一生懸命お参りをした。


 俺はわざと金色に光りながら本殿前で一鳴きした。


『まりの、明日出すから明日の午後に来るようにいうにゃ』


「猫神様が明日出してくれるの、だから夕方またくるの」


「そうかわかった」


 冗談だと思っていた猫神らしき猫が目の前で光なにを少女へ話していた。もしかしてこの子は本当に神様につながっているんじゃないだろうな? こんな事をして天罰とか当たらないよな…… そんなことをまりのを襲ったチンピラは思っていた。


 明日渡すやつは異世界で調合を失敗したエリクサーもどきを渡すつもりだ。少量だとエリクサーのような効果が出るが、量を飲むと活性が高すぎて老化をすすめてしまう薬だ。


 翌日の朝に露を採りに行くとすでに露は無かった……


 フェイザー製薬の人間が先に採取していったようだ。夕方はどうするかな? 念の為、まりのについて夕方神社へ行ったがあのチンピラは来なかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る