エリクサーを取り巻く悪巧みだにゃ
俺が医院長室へ到着すると、医院長室では医院長と井垣と中林の3人が話をしていた。
「この薬を誰が買うんですか?」」
井垣が質問すると、中林が
「とある大金持ちの息子が重病でこの数日で亡くなりそうだったから、うちの会社が特効薬を開発したのですが、薬事の許可を待っていたら間に合わいということで、もしも完治したら支払う約束で飲ませる約束がされています。今日の結果から体重比率で投与しても問題なさそうなので、この1本のうちに3割程はうちが頂きますが残りを投与してもえば完治すると思いますよ」
「いくらぐらいなんですか?」
医院長が口を開いた
「1回の投与で完治すれば3億円だ」
「ボッタクリですね」
「まっ、これが成功すれば君にもボーナスをだすよ」
「本当ですか? それは助かります」
「じゃ、井垣くんさっきみたいにして7割、3割に分けて7割の方を準備してくれ、3割の方は中林君に渡して欲しい」
「こんな感じですか?」
井垣が7割にしたものに蒸留水を加えてペットボトルサイズいっぱいにしたものを医院長に渡し、残りの分はフラスコにいれ、そのま中林へ渡した。
「じゃ患者に渡して来るから、そのまま今日は戻ってこないからな」
「私もこれを会社へ持っていって鹿野と合流します」
「じゃ私も巡回がありますのでこれで失礼します」
それぞれが医院長室から退出したので、本棚上から飛び降りて医院長の後ろをついて行った。
医院長は運転手の運転する車で移動するようだったので、車のトランクの中へ転移した。しばらく走ると目的地へ着いたようだ。
車から外へ出て表札を見ると[武村]と書いてあったが、その名前で金持ちというのは知らないので土地成金かなにかだろうか? 医院長がインターホンを押して中に入って行こうとしたので慌てて着いて行った。もちろん認識阻害の魔法は掛けているので誰にも見つからないはずだったが、後ろから吠えられた。
《お前誰だ?》(ウゥ-ワンワン)
くそ、普通ドーベルマンを部屋飼いするか? 声を出すわけにもいかないので念話で会話を試みた。
『なんで見えてるんだ?』
《うわぁっ! 見えてないぞでも何かいるのは感じた》(ワンワン ウゥ- わんわん)
『とりあえず害をなすものではないから放っておいて欲しい』
《変な事をしたら噛み付くからな》(ワンワン ワンワン)
『大丈夫だ』
吉見が足をガクガクさせながら
「武村さん、大丈夫でしょうか? 何か吠えていますが……」
「レオン、伏せ! 静かにしなさい」
「きゅーん」
「吉見さん大丈夫ですよ、そんなに簡単に噛んだりはしませんから……」
「大きい犬は苦手なんですよ……」
「ははは、おーい! 健一いるか?」
階段から小学5年か6年くらいのほっそりとして病的な肌の色をした男の子が降りてきた。
「なぁに? おとうさん」
「ちょっと吉見先生にお前の薬を持ってきてもらったんだ」
「もう治らないんでしょ? なんとなく自分でもわかってるんだ……」
「お坊ちゃん、とりあえずこれを飲んでみてください。味もないので飲みやすいですよ」
「苦くないの?」
「水と全く同じなので味も何にもありません」
「そんな怪しい水で本当に良くなるの?」
「とりあえず飲んで見てください。」
健一は、恐る恐るペットボトルの水を飲んでみると体が光始めて、しばらくすると光が治まっていった。
「これで健一さんは完治したと思いますので、明日にでも検査を受けてきてください。ちゃんと完治していたら、治療費のお支払いはお願いしますね」
「本当にこれで治ったのか? 水1本で? 健一、体調はどうなんだ?」
「これ飲んだら、体がすーっと軽くなったような気がする。今までみたいに体が重くない」
「そうか、明日ちゃんと検査してもらおう。吉見さんもしも完治していたらもちろん約束の治療費は払うから安心してくれ」
「ありがとうございます」
俺が異世界から持ってきた薬で金儲けされても嫌だな…… 子供には罪はないし、金持ちに恩を売るのも良いだろう。久々に念話でなく声を出そうと思うが、意識しないとニャ言葉になるから疲れるんだよな……
ちょうど全員を見下ろせる場所に神棚があったのでそこに乗ってみる。子猫の体重くらいならびくともしない頑丈な作りだった。あまりはっきり見られたくないので、一度下りて電気のスイッチをジャンプして消した。
「うぉ、なんだ停電か?」
金持ちらしく屋内シアターの設備があるのでカーテンが分厚く外の光がほとんど入ってこないので、かなり暗い部屋になった。神棚にジャンプして乗ると光魔法で神々しい光を纏ってまずは猫の鳴き声で鳴いてみた。
「にゃあああ」
「な、なんだ? あの猫光ってるぞ」
武村がそう呟いて吉見を見ると、吉見は足をガクガクさせ光る子猫を見ていた。
「猫神様……」
「猫神様?」
「あの水を持ってきた娘が猫神様のご利益のある水だと……」
「薬じゃないのか?」
そんな会話を尻目に俺は少し威厳のある声を発した
「お主ら、その奇跡の水は心優しき娘の為に我が加護を与えた水じゃ。それを金儲けにするとは何事じゃ。このままではお主らには天罰を与えねばならぬ……」
かなりゆっくり目に話をしないと「にゃ」を付けそうになる。
大人は鳩が豆鉄砲食らったような顔でフリーズしている中、健一が前に出て
「猫神様でしょうか? これは僕が病気になったのが悪いのです。どうせ長くは生きられなかったのですから、どうか僕の命をさしあげますのでお父さんたちに罰を与えるのはやめてください」
おぉぉ、なんていい子や……
「いや猫神様、どうかこの子はこのままお願いします。もしも罰を受けるのであれば私にお願いします。たとえ全財産を無くしても、この生命が無くなってもこの子だけは助けてください」
おぉぉ、少し強面のお父さんもいい人や……
「お金なんていりません、無料でいいですからお助けを……」
医院長はダメダメやな……
「ならぬ、罰は与えねばならぬ…… ここに近い将来岩田来夢という我の下僕を遣わせる。それと一緒に善猫神社に猫の楽園を作る手助けをするがよい。それがその方親子への罰じゃ。」
「あのそれが罰なのでしょうか?」
「そうじゃ、金を与えて終わりではないぞ、金よりもお主らのアイデアや協力をするのじゃ、無くなる命を戻す代償は大きいぞ、一生をかけ協力してくれ」
「わかりました。全身全霊をかけて取り組みます」
「いや、そんなに大げさに考えなくていいにゃ」
「いいにゃ?」
「気にするな、金よりもお主の持っている人脈やアイデアで協力するのじゃ。今一番大切なのは子供と接する時間だ。子供も猫にも優しい神社を作る協力をするのじゃ。金はどうしても困った時に援助してやってくれ」
「わかりました。健一と一緒に神社が猫にも人間にも楽しく過ごせる場所にしたいと思います」
「医院長よ…… この水で利益を取るのはまかりならん。もしも金を取ることがあればお主はある日突然ネズミになっているであろう」
「ヒィいいいいいい! わかりました。お金なんて一切請求しませんからお助けを……」
「猫神様、健一が助かったのは確かなので医院長へ食事のお礼等をしたのですが、そのくらいなら大丈夫でしょうか?」
「そのくらいならよかろう。でも一番の功労者は親の為に一心不乱に神社で祈っていた女の子じゃ、そういえばその娘の母親はまだ職が見つかってないと……」
「わかりました。その娘も幸せになるよう気に留めておきます」
「よいな、猫は幸せを運んでくるんだにゃあ」
光を消し、認識阻害を掛けてから電気のスイッチを押した。
部屋にライトが点くとみんな顔を見合わせて
「夢じゃないよな?」
「そうですね」
「猫神様っているんだ……」
それぞれが思ったことを口走った。
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