エリクサー争奪戦が始まるにゃ
翌日の夕方病院を訪れた2人は浜名医師に挨拶をした。
「本日はよろしくお願いします」
「いえいえ、こちらこそわざわざご足労いただきありがとうございます。まりのちゃんはうちの看護師の田宮が責任を持ってお預かりいたしますのでよろしくお願いします」
「まりのちゃん、こちっちのおいでお友達も沢山いるからね」
「じゃママは頑張ってきてなの」
「頑張ってくるからいい子にしておいてね?」
「はいなの」
看護師の田宮がまりのを連れて行き、残ったなな子は検査を受ける事にした。浜名から出されたメニューは血液検査からエコーにCTとフルコースに近い内容の検査を受けなければならないようだったが、いくらかの協力金も出ると聞いたので、半分は浜名の恩を返すため、半分は生活をしていかなければならないという切羽詰まった状態を脱する為にも必要な事だと割り切るしかなかった。
「まりのちゃんこっちがプレイルームよ。今日は小児科の同じくらいの友達も呼んでいるので一緒に遊んであげて」
「わかったの」
「こちらが、小山ちかちゃん6歳、こちらが、瀬戸彩香ちゃん7歳でずっとこの病院に入院しているから、いろいろお外の事とか話をしてあげてね、ちかちゃん彩香ちゃんこちらは今お母さんが検査を受けている下西まりのちゃんです。仲良くしてあげてね」
「はいなの、よろしくなの」
「「うん」」
3人は人形を使ったり、大きなボールで遊んだり仲良くなっていき、3人でキャッキャと言いながら遊んでいた。
そこに20代前半のポロシャツにチノパンといったラフな格好の女性がやってきてケーキの箱を差し出した。
「こんにちは、私は鹿野美和と言います。下西なな子さんにうちの薬を使ってもらってすごく良く効いたという事で、検査に協力してもらえるようになったから、お礼を兼ねてケーキを買ってきました。ちかちゃん達も先生に許可もらったので一緒に食べましょう」
「「わーい」」
「いいの?」
ちか達2人はサプライズに喜び、まりのは食べて良いのか迷っているようだった。
「さあさあ選んで? 喧嘩にならないようにイチゴのショートとチョコレートケーキを買ってきたからどちらか好きな方を選んで? 余ったら先生たちにおすそ分けするから」
「じゃ私はイチゴ!」
「私はチョコ!」
「私はイチゴなの、でもママにも食べさせてあげたいの」
「うわぁー やさしいね、大丈夫よここにこれと別にお持ち帰り用あるから、これはお母さんと一緒にお家で食べるといいわよ」
「じゃ食べるの」
3人でワイワイ言いながらケーキを食べていると彩香がまりのにしんみりとした表情で話しかけた。
「まりのちゃんのママって病気治ったの? いいな…… わたしはずーっと病院から出られないの…… 同じ病気の人がこの前も死んじゃった…… 次はわたしかも……」
「私も全然お家に帰れない…… 帰りたい……」
ちかも悲しそうな目でぼそっとつぶやいた。
「彩香ちゃんもちかちゃんもずっと入院しているの? 治って学校とかで遊びたいよね?」
鹿野が二人に問いかけると
「うん…… 治りたいけどまだお薬ができてないから治らないの……
「ちかも早く学校行きたい……」
「すぐに治るような薬できるといいね?」
鹿野が言うと彩香が悲しそうな声でつぶやく
「そんな薬ないもん……」
まりのはそんな二人を見て
「私が採ってくるの。猫神社のお薬飲むとすぐに良くなるかも…… でも明日も出てるかどうか解らないの…… それでもよければ採ってくるの」
「まりのちゃん本当?」
「うん、採ってくるの。でも効くかどうかわからないの。でもママとママのお友達の家族は治ったの」
鹿野はそれを聞いて二人に問いかける
「うゎあ、そんな薬あったらいいね、もしも治ったら二人共すぐに学校に行けるようになるね?」
「そんな薬あったらいいな……」
「じゃ明日の朝、神社で採ってくるの、学校あるから学校終わってからここに持ってくるの」
「まりのちゃん、ありがとう」
まりのが二人に約束すると、鹿野は少し離れた場所で携帯電話でどこかに電話していた。
「もしもし、私です。例の件、明日の朝採取予定です。人員を回して監視してください」
鹿野は電話を切ると三人のところに戻ってきて満面の笑みで
「そのお薬で治るといいね?」
「「「うん!」」」
三人一斉にうなずいた。
それからしばらくすると、なな子が戻ってきた。
「ママ、おかえりなの」
「ただいま、良い子にしてた?」
「はいなの、彩香ちゃんとちかちゃんとお友達になったの」
「そうなんだ、二人共仲良くしてくれてありがとう」
「それでね、明日また神社へいくの。二人にも猫神様の水を飲んでもらうの」
「えっ? そ、そうなの?」
「はいなの、早く治ってほしいの」
キラキラ光るまりのの目を見るとうなずくしかできないなな子だった。それから二人と別れて自宅へ帰るとなな子は浜名医師へ電話をして、明日二人分の水を汲んで来ることを報告した。電話を切ると浜名は深い溜め息を吐き、
「はぁ、それで、下西親子だけを検診したんだな…… フェイザー製薬の企みか…… これ以上大きな騒ぎにならなきゃいいんだけどな……」
浜名は一度切ったスマホを握り再度下西に電話をかけた。
「もしもし、浜名ですが、明日の猫神社の水ですが確か、芋の葉っぱの水と遊水池の水を混ぜ合わせるんですよね?」
「ええ、まりのと採った時には金色の雫をが葉っぱからでていたのでそれを3滴採って神社の水と混ぜるんです。まりのが言うには沢山採ったら毒になるから3滴しか採っちゃ駄目ということでした」
「もしかすると、今日の出来事はうちの医院長の企みかもしれません。まりのちゃんの優しさを利用してあの水をとってこさせるつもりでしょう。もしも明日あの水が数本分採れるのであれば、数本、最低でもあの子達2人分はこっそりキープしておいてください。下手すると持っていって飲ませたり点滴に入れようとする時に待ったをかけて、すり替えられる可能性があります。もしも数本採れないなら病院に渡す水は、只の水を渡してください。その後で二人に飲ませれば良いので」
「そうなんですね…… 何かおかしいと思っていましたがあの子達に罪はありませんし、同じ年頃の子供を持つ身からすると治してあげたいですので、数本分準備しておきます」
俺はその様子を下西家のリビングでこっそり見ていた。最近は毎日学校帰りに神社へ来ていたまりのの姿が見えなかったので、神社の入り口で寝ていたマルにも聞いたが今日はきていないということだったので、下西家で二人が戻ってくるのを待っていたのだった。エリクサーは昨日少し補充をしておいたのでまた5本くらいは採れるだろう。明日は病院に行ってどうなるか確認しておかないと、問題が大きくなりそうだ……
いつまでもエリクサーを出し続けるわけにもいかないが、その責任をまりの達に負わせるわけにはいかないので、まりの親子の逃げ道を作ってあげなければ……
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