善猫神社は寂れてるにゃ
今日はクロ達がいる付近と逆の方向へ散歩にでかけた。チョウチョを追いかけながら……
条件反射って怖い……
しばらくチョウチョと戯れていると山の上へ続く石階段を見つけた。上の方には赤い鳥居が見える。こんな所に神社が有ったことに少しびっくりした。比較的長い間この辺りに住んでいたが全然気が付かなかった。どうせ時間もあるし上まで駆け上がってみた。
「おい! そこのチビ!」
何か呼ぶ声が聞こえたけど、俺じゃないよな?
「おい! お前だ! そこの縞々模様!」
はぁ? 縞々って俺の事か? 完全無視を決め込んで上がっていこうとすると目の前に真っ黒で、しっぽだけが白い猫がいた……
クロの反転版だな、名前は白か?
「おい! 無視するな!」
「もしかして俺の事?」
「もしかしなくても、お前しかいないだろ?」
周りを見渡すが、俺しかいないな……
「そうだな……」
「お前まだチビだけど、親はどうした? ちゃんと食っているのか?」
なんか前にもあったようなシチュエーションだな?
「飯は大丈夫だ。今日は散歩しているだけだから……」
「そうか、ここの神主は優しいから飯がなければ食わせてくれるが、最近はお参りする人も少なくてきつそうなんだ。だから余裕あるやつや自力で餌を確保できるやつは自分たちで確保して、寝るときだけ帰ってくるんだ。でも飯に不自由しているやつは本当は歓迎できないが、受け入れるようにしているんだ」
「神主さんは優しい人だな」
「そうなんだ。自分たちの食い扶持を減らしても俺ら猫の為に食事を用意してくれる優しい人だ。ところでお前まだチビのくせに生意気な話し方だな?」
「生まれつきこんなだから仕方ないだろ?」
なんでそんなに廃れたんだろう?
「昔は流行っていたのか?」
「昔から猫神社と言われて人もいっぱい来ていたし、お祭りとかもあってたらしいんだ。でも最近は下に出来た新しい神社に人が流れてお参りする人が少なくなったらしい」
「下の神社?」
「そうだ、お前が上ってきた階段じゃなく反対側にある階段の下にあるんだ。紫色の蛇が見つかったと言って蛇を祀った神社ができてるんだ。珍しさもあって下の神社に人が集まって、こんな上まで誰も来なくなったんだ」
「紫色の蛇っているのか?」
「さぁな? 名乗るのが遅くなったがこのあたりの長をしているマルだ。もう狩りもできる年じゃないから、神社でお世話になってる。お前名前は?」
シロじゃねぇのか!残念!
「俺はトラだ! 色々あって人間のお世話になっている」
実際には人間のお世話をしているんだがな……
「トラか、まぁゆっくりしていけ、同じくらいの子猫もいるから」
いや、子猫じゃねぇし……
「そうさせてもらうよ」
マルはあくびをしながら階段横の大きな石の上で昼寝を始めた。俺は神社のある場所まで歩いて上った。街を一望できるかと思ったら、想像以上に木々が茂り俺の大きさでは風景を見ることができなかった。仕方ないので木登りをするふりをしながら浮遊の魔法で木の上に登って、街を一望した。自分の家のあるあたりや、クロ達が住んでいる河川敷などを見ることが出来た。ふと境内を眺めると、一人の少女が祠へお参りしては、また入り口に戻るを繰り返していた。お百度参りだな?こんな子供がすることではないだろう?何か訳があるのだろうか……?
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