幕間2 

大賢者は異世界から帰る

幕間として、主人公の古久根 虎雄が異世界から戻る約1ヶ月前からの物語になります。

本来はこの話が第1章 第1話の予定でしたが、異世界から戻る話が長くなってしまったので、順番を入れ替えてみました。 

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「本当に帰ってしまうのか?」


 馬車の御者をしながらのんびり走っていると、突然勇者ペイロンに、そう問いかけられた。


「俺は日本に帰る。」


「何故だ?向こうの世界の話を聞いた時、親兄弟もおらず、友人もいなく寂しい日々だったと言っていたではないか?」


 横から聖女カテリーナも


「タイガ、貴方はこの世界にいるべきだわ。知り合いも沢山いるでしょう?向こうの世界と違い、爵位と領地をもらって優雅に過ごすこともできるのよ?何故友人もいない世界へ戻るの?」


 友人がいない事を地味にディスってくる聖女の言葉が胸に刺さる。


「そうだな、この世界は俺にとっては第2の故郷になった。だが、あくまで第2の故郷であって、やはり俺は生まれた日本の地で死にたい」


 ペイロンはしばらく考えた後に、少し寂しそうな顔をした。

 苦楽を共にした3年半、もしかしたら残ってくれるのかという期待をしていたようだ。


「わかった。決意は固そうだな。この後城に戻ったらパレードがあるぞ。パレードはどうする?パレード後に帰るか?」


「いや、パレードに出た後は、賢者はどこに行ったと騒がれるのも迷惑かかるだろうから、パレードは二人で出てくれ。俺はこのまま城に戻ってから、帰るまで、やり残したことを全てやってから日本へ戻りたい。俺は魔王との戦いで力尽きた為、最後は二人で魔王を倒した事にしろよ。まっ、銅像でも建ててくれるならカッコよく建ててくれな」


「タイガ、今までありがとう。タイガのおかげで色々便利な世の中になり、食事も美味しくなったわ。これ以上新しい料理が食べられないのは残念だわ」


「俺がいなくなることより、料理のレパートリーが増えない方が残念そうだな」


 聖女カテリーナは慌てて首を横に振るが、顔は真っ赤になっているところを見ると図星なんだろう。


「城に戻ってもパレードまでは少し時間があるだろう。覚えているレシピは全部、料理長へ教えておくよ。カテリーナが好きなデザートも教えておくから、食べすぎて太るなよ。ペイロンが抱っこ出来なくならないようにな」


 笑いながらそう言うとカテリーナは真っ赤な顔でほっぺを膨らました。


「ひどーい。これからもちゃんと鍛えるから ふ と り ま せ ん 」


「パレードの後、帰る前に二人の門出を祝って、大きなケーキを作ってから戻るよ。ウェディングケーキと言って、向こうの世界では結婚する時には、結婚する二人がケーキを一緒に切るのが習わしなんだ。それで二人をお祝いするからな。魔王もいなくなった事だし、二人幸せになれよな」


「うん。ありがとう」


「ペイロンはカテリーナの尻にしかれないようにな」


「ふむ、その自信は無い」


「だよな」


「ひどーい こんなカヨワイ女の子を捕まえて」


「カヨワイ女の子はメイス握って振り回さないだろ?」


 王都まで道のりを馬車に揺られながら作りかけの魔道具を作ったり3人で他愛もない話をしていた。



 女神経由でこの世界へ飛ばされた3年半色々な事があり、苦しい事や辛いことの方が多かったが、なんとか魔王を倒す事が出来て本当に良かった。


 これでようやく日本へ帰れる…

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