クロの最後
今日も朝から来夢は自動車学校や料理教室でいない。俺はのんびり河原を散歩していた。いつもならこの辺りまで歩いていると、誰かに声を掛けれるのだが、今日は誰ともすれ違わない。珍しい日もあるんだな?
河原に珍しく外車の四駆が止まっている。誰か釣りにでもきているのかな? だから誰もでてこないんだろう。そう思いながら近づくと、髪を染め耳には大きなピアスをした派手な男性3人と女性1人が近づいてきた。
「ジン! あんな事したら可哀想だよ、もしかしたら猫ちゃん死んじゃうよ」
「猫は撲滅していいよ! 俺の新車に爪立てて傷だらけにした張本人だし」
「でも、それは家の近くの猫でここの猫じゃないでしょ?」
「猫はどれでも一緒だよ」
「マミ! 無駄だよ!ジンは車に傷つけられて頭に来てるんだから」
「カズもトモも止めてあげればいいのに、一緒に猫いじめるし、信じられない」
「そんなに怒るなよ! 猫は野生だから大丈夫だよあのくらい!」
「頭からも血を出していたし、ねぇ病院つれて行こうよ!」
「はぁ? 病院で何ていうんだ? 俺たちがスリングショットで猫ぶち当てましたけど可哀想なので連れてきましたとでも言うのか?」
なにいいいいいいい?
そんな会話を聞いてしまった……
誰かが被害にあったんだろう、こいつらは許せないけど、先に誰がやられたかを確認しておきたい。この車はコイツラの車のようなので、位置を追跡出来るように魔力を纏わせた魔石をシートの下に差し込んでおいたので後でゆっくり探そう。時間も惜しいので、いつものたまり場にテレポートした。
「わっ! 誰だ? トラか……」
いきなりフク達の目の前にテレポートしてしまったようだ。
「おい、今の人間達になにかされたのか?」
「クロさんがやばい…… たぶん駄目かも」
「何処にいるんだ?」
「そっちの毛布に寝せているけど、人間のヤローがなんか飛ばしてきて、それがモモに当たろうとした瞬間クロさんが間に入ってやられた。その後も何発か飛んできて……」
「おい、何処にいる? 見せてみろ」
「こっち……」
ソラが手招きをした場所で、毛布の上で息も絶え絶えのクロがいた。周りには心配そうにクロの奥さんのキナコと娘のモモとリンが座っていた。
「クロ! 大丈夫か?」
「トラか、大丈夫じゃねぇよ! 多分俺は死ぬ。今までいろいろ見てきたから自分でもわかるがこれは助からない」
頭とお腹にパチンコ玉を食らったようだ、頭にはまだめり込んでいるし、お腹も貫通して血が止まらない。このままだと後数分の命だ。
「クロ、何か言い残したこととかないのか?奥さんとか娘に言える最後のチャンスだぞ!」
「そうだな、リンはもう嫁に行っているからいいけど、モモは誰か良い猫見つけて幸せになるんだぞ、キナコには苦労も掛けたけどお前のおかげで楽しい人生だった。モモの旦那を見る前に死ぬのは残念だが、仕方ないな……」
「フク! クロに言うことは無いのか? 」
ソラもフクに向かって
「言うなら今しかないぞ! 後で後悔するぞ!」
フクは天を見上げるように少し考えて口を開いた。
「クロさん! モモは俺が必ず幸せにするから、安心してくれ! また同じような事があれば、今度は俺がモモを守る! だからモモを嫁にくれ!」
オオオオオォォォ! 言いやがった!
「モモ、フクがこう言っているが、お前はどうなんだ?」
「フクにい、本気?」
「本気だ、前からずっとお前の事が好きだった」
「嬉しいけど、私はまだ全然想像つかないないんだよね、フクにいと結婚するなんて……」
ありゃ? この状況でOKしないの? どうしよう? ソラをみるがソラもどうして良いかわからないような顔をしている。
「フク、OKでなくて残念だったな…… まだ時間はあるからガンバレ! トラもこいつらと仲良くしてやってくれな! そろそろ力が出なくなってきた…… キナコ……
愛してる……」
キナコの手をしっかり握っていたクロの手がスルリと抜け落ちるように脱力していった……
「ぱぱあああああ」
「お父さ~ん」
「クロさ~ん!」
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