弁護士との打ち合わせ

「こんにちは! 13時に約束していた岩田ですが、新田先生はおられますか?」


「やぁ! いらっしゃいませ。僕がタイガの友人の新田です。よろしくお願いします。」


 出てきたのは来夢が見上げてしまう身長180センチを越え、体格もガッチリした一見プロレスラーかと見間違うような髭面の男性だったが、来夢を見ると満面の笑みで迎えてくれた。


「よろしくお願いします。猫も一緒なんですが大丈夫でしょうか? ゲージ入れるとまだ暴れてしまうので抱っこしておきたいのですが?」


「まだ子猫ちゃんですね。ちゃんと抱っこしてもらえば大丈夫ですよ! そんなに小さいなら、まだお家に置いて来れないですよねぇ」


「すみません」


「じゃ、そこに座って詳しい話を聞かせて下さい」


 応接室に通された来夢は俺をヒザの上に乗せた状態で、今までの経緯を説明して、まとめていた資料を渡した。新田は資料を読みながらメモを色々書き込んでいた。しばらくして、新田は来夢に質問をしてきた。


「岩田さんは、どうしたいですか? この内容であれば会社に対して退職無効を主張して、復帰することも可能ですし、貰うものを貰って縁を切るかを選べますが、どうですか?」


「あの会社には戻る気は全くありませんので、そういう方向でお願い出来ますか? あと、費用はどのくらいかかりますか?会社から何も貰えずに寮を追い出されて今は全くお金が無いのですが……」


「じゃ方向性は退職で貰えるものと返して貰うものを全て貰うということで、費用はそうですね今日ここで話が解決したら必要ありませんが、もし裁判とかになったら事務員さんとかも使うので実費を頂いていいですか? 」


「はい! それでよろしくお願いします」


「ところでタイガから僕の事はなんて聞いているのかな?」


「はい、新田先生は高校時代からとても頭が良く、ラグビーが好きで友達思いの方だと聞いています」


「マジで?」


「はい、ただ結構やんちゃなところもあって、プールで……」


「ストップ! ちょっと待って!! それ以上は……」


 来夢は新田の方を少しニヤニヤしながら見つめていた。


「全部知ってるの?」


「どこまでが全部かは分かりませんが、プールと裏山の話は聞いています」


「ふぅ〜 こりゃしっかりやらないとヤバいな」


 新田は自分で頬をパンパンと叩いて気合いをいれたようだ。来夢はニッコリしながら


「よろしくお願いします」


 とお辞儀をした。


 新田は高校時代には、問題児で弁護士になんかなるような奴だとは思えなかった。プールの着替えを覗いたり、学校の裏山でタバコを吸ってボヤ騒ぎをだしたり見つかったら退学になるような事を沢山しており、それらのアリバイに協力したりしていたので俺には頭が上がらない。今回の依頼もきちんと対応してくれるだろうし、依頼料もぼったくったりはしないだろう。ただ、来夢との会話の間に俺の方をチラッチラッと変態チックな目で見てくるのはなんだろう? 昔、同級生の可愛い子を見る時の目をしているが、俺は男だし、何よりお前の同級生だぞ?


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