第26話 星たちの語らい
「――例の物の納入はどうなっている?」
「はい、順調です。間もなく組立も完了するかと」
「では、スケジュール通りに」
「ホシザキ コウイチロウに関してはいかがいたしますか?」
「もはや本物はいらん。買収、排除。方法は任せる。ただし殺しはNGだ」
「かしこまりました」
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コウイチロウは電話のあと、再びテンカワ邸に向かった。今後の作戦を練るためだ。作戦会議にはダイスケやケンゴ、マオも参加してくれた。
「コウイチロウ、水くさいと言うかなんと言うか……」
「そうだ。これはスターレンジャーの問題でもある」
「利用された……?許せない」
三者とも口々ににコウイチロウへ不満を述べたが真剣に怒っている様子はない。
「とりあえず、今の状況を整理しておくと、街中にはスターレッド関連の商品があふれているが、天川重工業ビル内にはスターレッドそのものがあふれている。スター装備を身につけてな」
「また、社長のテンカワ コウゾウ氏はスターレッド軍団を使って何かを企んでいる。コウイチロウも探している。ソウイチ氏は行方不明。そんなとこかな?」
「そんなとこね」
コウイチロウとカレンがお互いに目を合わせる。
「ソウイチさんは無事なのか?」
「最後に会ったのは……、カレン? マオ?」
「私が会ったのはCM撮影の直前だから……。そうね。休暇を取るって言いだす直前かな」
「うちにはコウイチロウとの契約が決まった日以来ほとんど帰ってないから……」
「いなくなる直前の様子は?」
「自宅で見た時は普段と変わりなかったわ。ただ大きなプロジェクトが動き出すって鼻息が荒かったけど」
「撮影の打ち合わせの時は楽しそうにスターレッドの演出に口出ししてたわ。理想のヒーロー像について熱く語ったりね」
「うーん。とりあえず無事でいると信じて行動するしかないな……」
コウイチロウは額に指を当てながら少しカレンに視線を送った。どうやらカレンは目を閉じて考え事をしているようだ。
「次、スターレッド軍団について。そもそもスター装備は今も量産されているのか?」
ダイスケがカレンに問いかける。
「会社の事はあまり分からないけど、恐らくね。あれはコウイチロウの方が詳しいのかな?」
「……元々、あれは侵略者との決戦に備えて生産を始めたんだ。特にライセンスとかの契約はしてなかったけど、もしかしたらスターレッドグッズとして今回の契約に含まれてしまっていたのかもしれん」
「でも、その契約書を渡したのはソウイチさんでしょ? やっぱり何か知ってるんじゃ……」
「それは今となってはわからない。契約書を直接作成したわけじゃないだろうし」
「とにかく少なくともスターレッド軍団はスター装備でご活躍中ってわけね」
マオが指で銃の形を作ってコウイチロウを撃った。
「あれを売りにでも出されたらそれこそ紛争の火種にしかならん」
ケンゴはテーブルを叩いた。
最悪、社長・副社長のどちらかを『操作』しなければならないか……。でもそうなってくると命令によっては地球を離れられなくなるしな……。
コウイチロウはみんなの意見を聞きながら最悪の事態も想定していた。スキルについてはその特性上、コウイチロウの胸に秘めていたがこのままではそれも難しいかもしれない。
「ギベオンを倒すまではと思っていたが道を外すなら生産拠点の破壊も視野に入れなくてはいけないな」
「それだけじゃない。もう生産技術は確立されてしまっているんだ。データの消去は容易ではないぞ」
「そうだな。またいつ宇宙から侵略者がやってこないとも限らない。そういった技術が必要とされる時が来るかもしれない」
「全く星の一族といい厄介なものに目を付けられたな。地球も」
ケンゴ、ダイスケ、コウイチロウの弁に少し熱が入る。
「社長のコウゾウさんの企みってのもその辺に関わってくるんでしょうね」
「おそらくはな。正義の味方であり続けるには本物のスターレッドの存在はさぞかし邪魔だろうよ。どんなイレギュラーバウンドを起こすかわからん」
「確かにな。あのスターレッド(偽)の行動からは正義の心は感じられなかった。……言ってて恥ずかしいが」
「そうね、私達も戦いを始めた当初は正義の心なんて持ち合わせていなかったわ。なんで私がってそればっかり」
「私は……今も特にない……」
一同は目を合わせるとマオの発言に笑った。
「そりゃないだろ! マオ!」
「頼むよ、ほんと」
「フフフ、マオらしい」
「これがヒーローとはな」
その時、コウイチロウの携帯にミチルから着信があった。
「ミチルさんからだ。なんだろう」
「もしもし!? コウイチロウ君!? 今テレビつけられる!?」
「どうしたんですか? 藪から棒に」
「大変なことになってるわよ! とにかくテレビでも携帯でもいいからニュース見て!」
「はい、分かりました……。カレン、テレビつけてもらっていいか?」
「いいけど……どうしたの?」
「ミチルさんがニュース見ろって」
カレンはコウイチロウが促すままにテレビの電源を入れた。
『ではここで、会見を冒頭から振り返ってみましょう』
『えー……。天川重工業の代表取締役社長、テンカワ コウゾウでございます。我が天川重工業はこの度、スターレッドと提携し、この日本、ひいては世界の安心・安全を守るべく、全国に順次スターレッドを派遣いたします』
『世にはびこる犯罪者やテロリスト果ては侵略者まで、もはや、正義のヒーローは一人では足りないのです。もちろん、警察の皆様、国防軍の皆様が頼りないと言っているのではございません』
『我が天川重工業のプロデュースするスターレッドは特殊部隊である。とご認識いただければ幸いです。凶悪犯罪に対して、容赦のない対応をお約束いたします。一般市民の皆様を守り、救うには現在の装備や防具では危険すぎる! これからは犯罪抑止の意味も込めて圧倒的な正義の味方が必要なのです!』
『そしてこのスターレッド隊を率いていただくのはこちらに控えております、スターゴールド! スターレッドの特殊装備を研究・改良し遥かなパワーアップを実現した最強の正義のヒーローでございます!』
『ただいま、ご紹介いただきました。スターゴールドです』
「この声……!? まさか!!?」
『星の輝きは! 天の導き、命の煌めきゴールド! スターゴールドここに参上!』
「そ、ソウイチさん……?」
カレンはフラフラとその場にへたり込み、
コウイチロウは画面を見ながら拳に力を込めた。
「これはちょいとヘビーが過ぎるぜ……」
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