孤独な戦隊ヒーローと化した俺はラスボス撃破後を異世界で満喫しますか?→はい いいえ
白那 又太
~序章~ ヒトリハミンナノタメニ
第1話 絶望と孤独のヒーロー
――ヘイ、Liki。今日の予定は?
機械音声「午前9時より建設現場でのアルバイト、18時からは予定がありません」
男は静かにため息を吐き、もぞもぞと布団から這い出した。
「最近はメテロルの発生もないし、ヒト稼ぎしておかないとな…」
男の名はホシザキ コウイチロウ。
年齢は26歳。
柔和な顔をしているが眼光の奥には強い意思の光が点る。髪は男性にしては少し長めの黒髪でサイドに流している。
職業はヒーロー。仲間と共に地球の平和を守る所謂戦隊ヒーローである。
いや。で、あったというのが正しいか。
10年前、一筋の流星を目撃した五人の若者がその『星』の一族に見いだされた。
そして2年前。
地球を巨大な『悪の意思を持った隕石』=『
ゴーストンとの戦いが熾烈を極める中、一つの問題が起こった。
彼らの戦いは企業群によってバックアップされ、その契約期間は1年間と定められていたのだが、(地球を守るのに期限もクソもないもんだが企業側にも限界というものがあるらしい)ついにゴーストンの首領ギベオンをあと一歩の所まで追い詰めたというところで一年を過ぎてしまったのだ。
これまで地球では幾度かの危機を同様の体制で乗り越えてきたらしいのだがこの前代未聞の事態に企業群は激怒。出資を99.99%取り下げてしまった。
このような事態に至った理由はいくつかある。
まずはスターグリーンの怪我による長期離脱。
スターレンジャーの構成は男性3名、女性2名から成り、配色はレッド(♂)、グリーン(♂)、ブルー(♂)、イエロー(♀)、ピンク(♀)であるが、戦闘における男性スタッフの長期離脱は手痛い停滞を招いた。
また、星の一族に見いだされ、且つ流星を見たというのが変身の条件であったためバックアップスタッフがいないのも誤算だった。
続いて、スターピンクの結婚・妊娠。スターピンクの戦闘スタイルは【最速】だったがまさか最速のコンボを味方にキメるというのは大誤算だった。
さらにはスターピンクに淡い恋心を抱いていたスターブルーのうつ病発症。戦闘の高揚感や連帯感から恋に発展する例は少なくないようだが、スターピンクが支援企業の御曹司とデキていたという事実は少なからず彼の心をブルーにしたらしい。そこへきて戦闘の負担増や、企業側の「期日厳守!」といったパワハラまがいの叱責等が彼の心を蝕んだ。
モチベーションの低下は戦隊内に拡がりを見せたが、コウイチロウ達は持ち前の熱血と友情と努力でどうにか侵略を食い止め、それどころか大幹部3名をも期限の1ヶ月前に撃破していた。
ところが、大幹部を全て失ったギベオンは事態を膠着させ、自軍の再編成を図るべく戦力を小出しにし始め、そして自らは完全に表舞台から姿を消してしまったのである。一切の情報を絶ったギベオンの捕捉は困難を極め、やがて《その時》を迎えてしまう。
このような状況下で地球の企業群は自らの功績をPRすべく、期日には戦いの終わりを発表し、政府には緊急事態宣言を取り下げさせたのである。
期日を過ぎてしまった責任を取り、『スターレンジャー』支援結社『プラネッツ』は解散。
以降の散発的な戦闘は民間軍事会社『スターライト』を設立し、全てを丸投げにした。が、実態はコウイチロウただ一人が最前線に立つようなものだった。
というのも冒頭のホシザキ コウイチロウもこの会社に所属する勤め人となったが、怪我人のスターグリーン、うつ病のスターブルー、妊婦のスターピンクは揃って引退。スターイエローはモチベーションの低下を理由に引退。
コウイチロウは首領の討伐を最後まで訴えたが、大幅な戦力ダウン及び平静を取り戻しつつある街並みを理由に深追いを断念させられた。
以後、時折現れる小規模ダクス・メテオであるメテロル(メテオ=トロールの略らしい)の討伐及びアルバイトで口に糊する生活を送っていた……
「仲間……絆……もう遠い昔の話だ……」
物語はここから始まる。
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