3年春【漁港跡地で】

 三月二十日(晴れ)


 高三の冬。もう暦の上では春だから春になるのかな。でもまだ寒いから冬かもしれない。

 受験も終えて進路も決まった。成績が悪かった割にはそこそこの大学に合格したと思う。

 卒業式も先日終わった。周りは凄く泣いていたり笑っていたりしていたけれど、私は特に泣くような出来事も、わざわざ思い出話として話せるようなイベントも思い出せなかった。部活も入っていなかったからわざわざ送り出してくれるような後輩もいなかった。

 普通に式に参加して、卒業証書貰って帰ってきた気がする。

 そろそろ四月からの新しい生活に備えて準備をしなくてはいけない時期の夜に、私は家から電車で二時間はかかる漁港の船着き場跡地にいた。

 実はこの漁港は数年前、老朽化を原因に古くなっていた卸売市場の建物を解体し、隣に大きい平屋を構えた。その際に船着き場も新設している。

 元々あった市場はコンクリートの土台部分だけを残して今は更地になっている。船着き場にも船は一艘もない。周りには何もなかった。

 真っ暗闇の中、波が堤防に打ち付ける音、風が顔の横を通ってゆく音など色んな音が混じって聞こえる。いくつかの街灯と月明かりが波に反射している景色が視界に入る。

 そこには私以外誰もいない。世界に一人取り残されたのではないかという普段は味わえない非日常空間。でも朝方になったら漁やなんやで人が来てしまう。それまでに私はここに来た目的を果たさなくてはいけない。

 一気に現実に引き戻された。

 でも高校生活を振り返って、この三年間

「あっと言う間だったなぁ」

 いくら高校の思い出がないからと言っても無意識に感傷に浸りたくなるものだ。

 白い息とともにそんな言葉が出た。マフラーを巻いては来たが、手袋は忘れてしまったことを後悔した。コートの外ポケットに手を突っ込む。そして手をギュッと握った。

 突如、暗闇から声が聞こえた。

「そうですね。三年間、あっと言う間でしたね」

 その声は私のつぶやきに応じた。暗い中コツコツと足音だけが聞こえ、振り返るとこっちに近づいてくる人影が見えた。

 さっきまで静かな波を輝かせていた数少ない街灯の光と月明かりが、彼女の長い白髪を反射する。リネカだ。私の握られた手にさらに力が入る。

 彼女は私の近くまで来ると海の方を向いたまま話しかけてきた。

「ここまで遠かったですよ。こんなところ、他所から来た人はそうそう知らないですよね」

 リネカは私の方に顔だけ向けて微笑む。

「ここは千里さんの思い出の場所、とかですか?」

 私がいつもと違うと思ったのだろう。そんなことを聞いてきた。

 いつもなら答えないであろう質問にも気分がいいから答えてしまう。

「昔この近くに住んでたの。私と私の両親とおばあちゃんの四人で。おばあちゃんは三年前に死んじゃったけどね。それで私の高校進学を機に家を売り払って、今の家に引っ越したんだ」

「そうだったのですね。いいお祖母ばあさまでしたか?」

 そう問われて色々思い出す。あそこに行った。あれを食べた。手を繋いだ。もう詳細まで思い出せない。

 でもよく笑う人だったことは覚えている。

「うん。そうだったかも」

「そうですか。きっとお祖母さまも喜ばれていますよ」

 そうだといいなぁと思った。昔の私の両親は今よりとっても忙しそうで、家にいる時間も今より全然少なかった。だから小・中学生の時はおばあちゃんが私の基本的な世話をしてくれていた。

 ここも何回か一緒に来た記憶がある。

 私はおばあちゃんを見て育ったのでとても尊敬していたし好きだった。

「ところで…」

 私が懐かしく感じていると、リネカがまた話しかけてきた。しかし、さっきとは雰囲気が違くて真剣な話なのだと容易に知ることができた。

「こんなところに呼び出して何の用ですか?千里さん」

 そうだった。こんな昔話をするためにここに来たわけじゃない。

 気持ちを切り替えて本題に入る。

 今回こんな夜遅くに遠くの漁港まで呼び出したのは、今まで突拍子もないことをたくさんやってきたリネカではなく私の方だ。

「手紙に書いてあったでしょう、あんたと話がしたい」

 強気な声で答える。私はここにリネカをメールやトークアプリなどではなく、手紙で呼び出したのだ。書いたのは宛名と今日の日付と時間、この場所と『話がしたい』という言葉だけ。私の名前は書かなかった。

 今まで彼女の行動には驚かされてばかりだったから、こっちが負かしてみたかった。少しでも可能性があるのならやる価値があると思ったのだ。あとは…。

「はい。だから来たのですが、なんの話がしたいのかわからないので教えてください」

 リネカは笑っていた。今まで何度も見てきたこの笑顔の意味。彼女はわかっている。手紙が私からだということもこれから話す内容も。

 私は全て知っている。この二年間以上誰よりも彼女の近くにいた自信があるから。

「私があんたをここに呼んだ理由。それはあんたを殺すため」

 彼女はまだ笑っている。殺すと言われているのに動じない。本当に感情はあるのだろうか。

 私が手紙に名前を書かなかった理由のもう一つの理由は証拠をできるだけ残さないため。

 もし、リネカが殺されたら最初に疑われるのは最後に一緒にいたと思われる人間だろう。しかも相手から呼び出されているのだ。余計怪しいだろう。

 リネカがここに来る。私に殺せれるために。何一つ狂いがなく予定通り進んでいるのに私は全く嬉しくなかった。それどころか徐々にイラつき始めた。

「あんたこそ何しに来たのよ。あんたはわかってたんでしょう。手紙の差出人は私だということも殺すって言われることも、全部わかってたんでしょう。あんたはここに殺されるために来たっていうの?」

 私から発される言葉たちはどんどん大きく強くなる。怒りを込めたような声。自分でも怖いと思うくらい鬼気迫るものだった。

 しかしリネカは私とは対照的に冷静で、左手の人差し指を口に当てて、「しーっ」と静かにするように表して、なだめるような声を出す。

「千里さん今は真夜中です。声が響いてしまいますよ。周りに人はいませんがもしもということもあるでしょう?」

 この言葉で少し冷静になる。今人に見つかったとして困るのはリネカじゃなくて私の方だ。これから人を一人殺すと宣言しているのだ。現場を見られたら一大事。そうじゃなくても誰かが私たちを見たら怪しく思うだろう。

「確かにそうです。私は知っていました、全て。私がここに来たのは千里さん、あなたに殺されるためです」

 そう言い切ったリネカからは清々しさを感じた。少なくとも今から死ぬ人の顔ではない。まるで殺される気などこれっぽっちもないようだ。そして私のこの予想は的中してしまう。

「しかし、私はあなたには殺されない。私はここに自殺するために来たのです」

 さっきとは違う幼い子供のような笑みを浮かべていた。

 私はリネカからいつもの雰囲気を感じた。昼休みに教室でいつもしゃべっていたあの感じ。

「あんた、何言ってんの。自殺しに来た?さっきと言ってることが違うじゃない」

 さっき冷静になったのにまた感情的になってしまった。 一歩、二歩。リネカに近づきながら問いただす。

 私の感じたものは正しかった。リネカに殺される気など最初からなかったのだ。

「はい、私は自殺するのです。理由は至極簡単です。千里さん、あなたはなぜ私を殺したいのですか?高校生までの人生をないものとしてこれからの人生をやり直したいと思ったからでしょう。だからたくさん勉強していい大学を受験して合格までした、あなたの将来のために。でも人生のリセットに私は不要、それどころか害であると判断したから私を殺そうとした。違いますか?」

「……」

「本音としてはあなたに殺される方を望んでいるのですが…あなたが今私を殺せば人生のリセットを願うことも叶いません。一生犯罪者としての罪を背負っていくのです。私はそうなってほしくないので、自殺します。ね、簡単な理由でしょう」

 彼女はまだ子供のような笑顔をしていた。でもどこかに、ふざけてなんかいないと思わせる真剣さもあった。

「では、私の計画を話します。まず千里さんがここから立ち去る。誰かに見られては計画がダメになってしまいます。そして、千里さんの姿が見えなくなったら私はここから身を投げます。このために、私は水をよく吸う服を着てきました。私泳ぐの苦手なので、これで溺死できると思います。そうですね。早ければ明日にはニュースになっていると思うので、それで確認でもしてください。何か異論はありますか?なければ今からでも始めますが」

 これは殺人じゃない、ただの自殺だ。警察はそう判断するだろう、事実そうなのだから。

 私は完璧だと思った。いや、完璧とは違う。一人の人が死ぬことが完璧だとは思えない。

 今の私の最適解、そう言ったほうがあっている。

 そうだ、私がイジメられていた事実をまた掘り出してしまう可能性の高いリネカを消してしまえばいいと思っていた。私の望んだ将来に弱かった私は必要ないから。

 イジメられていたという人生でもっともの汚点をなかったものとして扱えるのなら、リネカが正しいと思った。

 でも私が感じたのはそんなものよりも、強い怒りだった。

 淡々と話し、勝手に準備するリネカに苛立ちを感じた。

 そう気づいた途端、私は自分が子供のようになっているのに気が付いたが、もう抑えることができなかった。次の瞬間には、私の下にリネカがいた。

「馬鹿にしやがって」

 私はリネカに飛びかかっていたのだ。コンクリートの上で私は彼女に馬乗り状態になりながら押さえつけていた。

 私は今持っている全ての感情を彼女にぶつけた。

「そうだよ、全部あんたの言ったとおりだ。イジメられていたという私の人生最大の汚点。そこから抜け出したとして、周りから見れば私は逃げて、あんたに助けてもらったただの弱者じゃないか。その時からだ。いつか『あんたがいたから』とか『あんたがいないと』とか周りから思われない人になりたいと、イジメてきたやつらにも思い知らせてやりたいと思った。そのためにいつかあんたを排除したいとずっと、ずっと、この二年間ずっと考えていたよ。あんたがいなくても私一人でできたんだって、周りに知らしめてやりたかった。でもできなかった――」

 私の下にいたリネカはびっくりしていた。私がこんな大声で叫んでくるとは思いもしなかったらしい。

 私はリネカの首に手を置き、両側から徐々に絞めていく。

「私があんたといるようになって最初に決めたことがなんだかわかる?『あんたとは仲良くならない』あんたのことを利用して、いつかあんたとの立場を逆転させてやるって決めた。なのに――」

 リネカは私の言葉を真剣に聞いていた。徐々に私に絞められている首が辛くなってきたのだろう。苦しそうだ。

 でも私はやめない。まだ全部言い終わっていないのだ。逃げられないようにしなくては。もうこんな想いを繰り返したくないから…。

「なのにあんたに情が湧いてしまった」

「……」

「渡辺の時もそうだ。あんたの弱みを握って脅してやりたかった。だからあんたの告白なんて失敗してしまえって願ってた。でもそれと同時に成功すればいいなぁって心のどこかで思っていた私がいたのも事実。友達を解消しようって言われて一瞬怖くなったのも事実。他にもたくさんある」

 実はさっきリネカに「殺す」って言った時の私の手はどうしようもないぐらい震えていた。何か月も前から覚悟していたことなのに、いざとなるとできないことを知った。

 リネカを消してしまいたかった。

 今は優しくしてくれて隣にいてくれているけれど、いつ私のことを裏切るか分からない。

 私がイジメられている時に声をかけてくれる人は何人かいた。みんな私に優しい言葉をかけてくれた。でも結局何もしてくれなかった。

 相手を知って、見て見ぬふりをし始めた。見捨てられた、裏切られた。

 私はまた裏切られることが怖かった。後々裏切られるぐらいなら最初から近づいてこないで、目の前から消えて。

 その衝動だけで今日の計画を決行した。

 なんとも馬鹿げているように思われるだろうか。それでも私が負った傷は私に馬鹿げた決断をさせるほど深い。

 突如、下にいるリネカの頬に上から水滴が垂れ、顔を伝って流れた。今夜の天気予報は晴れ。実際雨も降っていない。

 私の涙だった。

 最初私はそれに気づけなかった。嗚呼私は今泣いているのだと、悲しいのだと、ロボットのように自分の感情を理解していく。

 そしてリネカの頬に垂れる涙が多くなるにつれて私の視界がぼやけだした。リネカの首を絞める手がほんの少し緩む。

 リネカは私の顔に手を伸ばし、その手で私の涙を拭った。

「…千里さんが私を嫌っていたこと…慣れあうつもりなどないことも最初からわかっていました」

 掠れた声だった。

「千里さんがずっと私との関係に囚われていると知っていました。だから表面上だけでもそれをなくそうとオトモダチになりましょうと提案しました。うまくいけばあなたを鎖から解き放てると。…イジメはもう関係なく対等な関係になれるのではないかと…思ってほしくて。でもダメでしたね。あの時、千里さんは承諾してくれたけど、やっぱりあなたは私との関係を強いものと無意識に感じていたみたいですし」

 笑っている。今までに見たことのない笑顔。

 まだ私にも知らない顔があったのだと知った。友達になりたいと悩み、恋する乙女のような顔も嫌いな人を見る顔も生き生きとした元気な顔も、最近は卒業式で少し寂しそうな顔も見た。でもやっぱり私の中で一番印象に残っているのはリネカの笑顔だった。

 リネカは何種類もの笑顔を使い分ける。今までいくつも見てきたけど、きっとまだ何十種類、何百種類もあっただろう。これからの人生でもっと増やしていくはずだった。

 今まで理由がわからなかった変な行動も全部私のためだったことも知った。

 せっかく拭ってくれたのに涙がまた溢れてきて、リネカはその涙も拭ってくれた。

 そして私に最後の決断を促した。

「千里さん、気は晴れましたか?あと二時間くらいで夜が明けてしまいます。どうしますか?」

 すでにリネカの首から私の手は離れていた。

「あんたの…計画通りにしよう。……うわぁ‼」

 リネカがいきなり上半身を起こしてきたのでビックリした。リネカはそのまま私の方に体を寄せてきて、私の前髪を上げて額にキスをした。

「えっ…⁉」

「これは元気になれるおまじないです」

 いきなりの出来事に動きを止めてしまった私をよそに、リネカは私を退かして起き上がった。退かされ、地べたに座った私を見てクスッと笑うと、手を差し出してきた。私はその手を取って起き上がる。

 立ち上がったリネカは真剣な顔をして海を見つめていた。

 それを見た私はリネカに目を奪われた。固い決意をきめる彼女のその横顔は普段の美しさの中に芯のある強さが見える。

 がん見している私を気にも留めず、規則的な波の動きを見ている。だから私はさらにリネカに意識が持っていかれ、リネカが振り返ったときに凄くドキッとした。

 こっちを振り向いたリネカは上着の内ポケットから白い封筒を取り出して私に差し出した。

「これは私からのプレゼントです」

 渡された白い封筒の真ん中には達筆な字で『遺書』と書かれていた。

「私がここから身を投げて、すこし経ったら開けてください。これを書くのに一日使いましたよ」

 リネカはいたずらがバレた子供のな表情をした。

「では向こうを向いていてください。千里さんには綺麗な思い出のままでいてほしいので」

 私は指示通り海を背後にする。

 —―覚悟を決めなくては。

 ドクン。心音が身体中に反響する。周りは静かなはずなのに、耳元でスピカーから爆音の音楽が流されているのではないかと思わせた。

 コツコツコツ。リネカの靴の音が背後から聞こえる。

 数秒後、靴の音が止まる。端に着いたのだろう。

 ドクッ、ドクッ、ドクッ。脈が速くなる。

「では千里さん、さようなら」

 タイムリミット。リネカの覚悟が決まった合図だった。

 私は振り返る。リネカは海を背後に背中から飛び降りようと考えたらしい。目があった。

「え?」

 リネカはとても驚いたらしい。私が振り返ったことではなく、初めて見たであろう私の満面の笑顔に。

「ありがとう」

 ドボン。

 私が感謝を囁いた一秒後、リネカは海へ落ちていった。高い水しぶきが上がった。

 数秒間だけ上から小雨のような雨が降り注ぐ。冷たかった。

 私はその場にうずくまりながら泣いた。とにかく泣いた。ずっと涙が頬を伝うのを感じていた。

 もう泣けなくなって初めて手に握りしめていた封筒を思い出した。

 封筒を開けて中の手紙を広げて読む。茶色の封筒の中には淡い緑色の便箋がきれいに折られ、黒のインキで、これまた達筆な字で文が刻まれていた。

 

 愛しの千里さんへ

 これを読んでいるということは私は死んでしまっているのでしょうか。最後にあなたといられたこと、とても幸福に感じていると思います。

  あなたにとって私がどんな存在であったか感じることはできても、正解はあなたにしかわからないでしょう。私にとって千里さんは家族のように大切な存在でした。

 最後にこの手紙を捨てることをお勧めします。海に捨ててはどうでしょう。

 あなたのこれからの人生に幸福が降り注ぐことを願って。

 今までありがとうございました。  藤咲リネカ


 私は先ほどのリネカの言葉を思い出す。

『これを書くのに一日使いましたよ』

「こんな、短い手紙書くだけで一日使ったって。こんな、こんな——」

 また涙が流れそうなのを手で拭った。

 私は便箋と封筒を重ね合わせて、目の前の高さまで持ってくる。上部を両手の親指と人差し指で掴んで——一気に逆方向に引き裂く。

 ビリッ、ビリリ。紙の破れる音が響いた。

 私は手紙を破り捨てた。捨てないで、私の持つ彼女の唯一の遺品となったしまったこの手紙を残すという選択肢もあった。

 確かに私は悩んだ。でも私は捨てることを選んだ。

 もし持って帰ってしまったら、リネカがいたことの証明になってしまいそうで、私の目指したリセットのストッパーとして働いてしまいそうだったから。

 読めないぐらいにできる限り細かく。そして海に投げ入れる。リネカの言うとおりに。

 思い通り海に沈んでいったもの、波に流されていったもの、風に乗って全く違うところに行ってしまったものと色々な方へ消えていった。

 そしてそれらを見届けた後、私は駅に向かって歩き出した。

 コートに手を入れると、冷たく固い何かが入っている。

 取り出してみると、文房具のカッターが一本。これは、私がリネカに殺そうと必死に考えた策だった。

 こんな切れ味もよくない、小さなナイフ一つで、よく人を殺そうと思ったものだ。

 今の正常に働く脳なら、どうしてそんな思考になったのかと笑えるが、数時間前までは、そんなことにも気がつかないほど追い込まれていたのかと思うと、簡単には笑えない。

 カッターをポケットに戻し、再び駅の方向に足を運ぶ。 

 始発はまだ先だし、こんな朝早くからやっているお店なんてない。程よい田舎で(それが理由で場所をここにしたんだけど)、近くにコンビニもない。どうやって暇を潰そうかな。

 始発の電車が出発するまでおよそ五時間。その間に昇った日の出は、私の人生の初めの一歩を照らそうとしているようだった。

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