第123話 新たな魔物
『二年間お前の事を見て、お前の事をよく知れた。良い所も、悪い所もあった。だが、この婚約を断る理由は無かった』
違う。
『お前らが作った最低最悪の失敗作に、お前らは負けんだ。悪いなとは言わない、自業自得だ』
違う。
『愛しているよ』
違う。
『クソッたれな神よ、今はまだ君の方が強いけれど、僕はいずれ君を殺す。残された生を怯えながら過ごしたまえ。君は必ず殺す。絶対に、逃がさない』
「違う‼」
ロウレイがベルに用意した木造の家のベッドの上で声を上げて布団を跳ね除け飛び起きた。
「違う。私は君達ではない、私は私だ。その愛も、その覚悟も、その想いも、私のものではない」
苦しむように頭を押さえ俯きながら呻くように呟く。
「アマデウス、ギルティ………君達は一体、何者なんだ…………」
考えてもわからない。
自分によく似た誰かが、思考を、心を蝕む。
「私は彼らとは違う」
振り払うようにベルは湖に転移した。
冷たい水の中、ベルは深く深く沈んでいく。
空は遠ざかり湖の底へと落ちていく。
なんで、なんで君はそんな風になってしまったんだ。
全て知っている。
全て見せられたから。
それでも、そこまで堕ちる必要があったようには思えなかった。
それほどまでに苦しむ必要があったようには感じられなかった。
私には、わからない。
瞳を閉じ、湖の底へ落ちる中、突如遠方に魔物を感知した。
今までとは比べ物にならない強大な力を持った魔物に、一切の躊躇なく転移した。
「急に現れるな、驚くだろ」
魔物の出現を聞き全力疾走で向かってきたブルーノの目の前に転移したため、ブルーノは驚きながら地面に足を埋めるようにして無理やり停止した。
「…………なんで濡れてるんだ?」
「気にしないでいいよ」
問われてすぐに水気を飛ばしそう答えた。
「それよりも君は下がっていたまえ、これは今までの魔物よりも格段に強い」
「んなこと対峙したときからわかってる。だが、俺の方が強い」
構え直すブルーノの腕に触れ、ベルは拳を下げさせる。
「怪我をしたらどうする」
「お前は俺のなんなんだよ⁉」
そんなことを言い返している間に、巨大な魔物の上半身は消し飛んだ。
「これで終わり。一応今までとは違う系統の魔物だから団長を呼んでおく」
「応。しかしこれじゃあ俺の仕事が…………」
「私と共にこれの監視だ。流石にもう死んでいるとは思うが、初めて見る魔物だ、まだ動くかもしれない。それに、今日出現する魔物がこれだけとも限らないからな」
誰も危険な目に合わないように街の周囲を完全に監視し、魔物の出現にも、一般人の侵入にも警戒し、ロウレイの到着を待つ。
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