第110話 会議
「やぁ」
高いビルの会議室。
市長及びギルドマスターが集まり月に一度の会議を行っている。
そんな場所に何処からともなく突如現れた白髪赤目で狐の面を付けた少年。
口元に笑みを浮かべ長机の真ん中に立っている。
「ギルティ⁉」
「何処から入ったんだい、ギルティ少年」
驚きながら立ち上がり拳を握るアストライアだが、落ち着いているロルフに気付き動きを止める。
「当然正面から普通に入った」
「そうかい。それなら警備員にはきつく言い聞かせておかないとだね。それで、ここにはどんな用事で?」
侵入者を前にロルフはただいつも通り微笑んで話をする。
「この間の巨人が出現したが、この先も現れるだろうから協力体制を敷いていきたい」
いくらなんでもソルトの情報網にも限界がある。
ソルトとラヴクラフトの二人体制であったとしても全てを把握することは出来ない。
「それはむずかしい話だね。協力体制を敷いてしまえば、君達犯罪者組織を認めることになる。残念だけど、君達を黙認することは出来ても協力することは出来ない」
当然だ、協力など出来るはずがない。
すでに殺し屋ギルドは非合法組織となっている。
その証拠にギルティはこの会議に呼ばれていない。
「その答えは当然のものだ。けどね、僕らは必要な人材だ」
窓から見える街に突如巨人が現れた。
それと同時に巨大な鎖が巨人を覆い、一瞬にして締め潰した。
窓から飛び出そうと、動こうとしたアストライアの肩に触れ動きを止める。
「あの巨人たちは地面の中から現れる。だからソルトに調べてもらった。そしたら、この街の地下にはこの世界とは全くの別物、常識の一切通用しない異界が広がっていることがわかった」
どんな場所なのか詳細は一切不明。
分かっているのはあの手の巨人が大量に済んでおり、その巨人たちが恐れる何かがそこにはある、もしくはいるということだけ。
「異界には巨人たちを使役する何者かがいる。その者達の総称を神。僕らが倒すべき敵だ」
「信じるに足る根拠がない」
「これから先巨人は現れ続ける。署長一人戦えても街全体を護りきることは出来ない」
「成程。リスクを回避するための協力だと。けれど君達は巨人が現れれば勝手に殺しに行くだろう。それならば協力という形にこだわる必要はなかったんじゃないかな」
ロルフの言葉にしばし思考する。
確かに今更署長との敵対などどうでもいい。
助けられるのなら、護れるのなら、悪であっても構わないから。
それでも今こうして面倒な行動をしたのはきっと。
「…………うんそうだな、わざわざする必要はない。けど、僕の元には今一人の少女がいる。彼女を想うなら、僕も少しはまともでなくてはならないんだよ」
僕の強さはきっと普通じゃない。
僕の感性はきっと普通じゃない。
僕の行動はきっと普通じゃない。
僕はきっと普通じゃない。
それでも、それでも普通でいたいんだ。
「了解した。そういうことなら」
「戦え」
ロルフの言葉を遮りアストライアはギルティに拳を向ける。
「戦えギルティ。俺を倒して、お前の正義を証明しろ」
「アストライア、貴方今何してるか」
「いいんだよココ。今のギルティには、この問いかけが一番効く」
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