第15話―曙光魔法使いの一撃必殺その3―
王城であるフィデス城の敷地はあまりにも広大な面積と美しさに圧巻させられる。目に届かいところまで
敷地内に入ってしまえば別世界に来たみたいだと北に聳え立つ城を見上げて思う曙光魔法使い。
「誇れるものはある、
「いや、怖じ気ついたとか理由じゃない。それに敗戦じゃないわよ」
青き髪と瞳をした青年の言葉に曙光魔法使いルーナは肩を竦めてみせて最後まで発せずに否定した。
ルーナは曙光魔法使いと呼ばれジョブはセイント ウィザード
上意魔法使いだ。
長い金髪には左右に結ったツーサイドアップ、黄色い瞳には理知的てありながら何処か好戦的が隠れている。
ルーナは振り返ると過酷な遠征に戦い抜き疲弊した数多くの兵士。
「でも未来と平和を享受するべきであった民を救えずに、騎士としての矜持を考えさせるものだったわ」
魔法ロープの裾をルーナは強く握りしめる。遠征でボロボロになったロープよりも心の傷は大きいと
好青年は察して言葉を探す。
「…もっと強くなるしかないでしょう。きっと、それが騎士道だと
信じて」
「そうね、ブルー…」
鉄のごとく硬い精神力の持ち主と思っていた好青年の弱音に驚いたルーナは目を見開いていた。
なんて声を掛けるべきか迷っていると数百メートル離れた城から国王が出るのをルーナ達は気づき背筋を整え、私語を慎むのだった。
(後に続く人達の格好はドレスとタキシード…ずいぶんと呑気にしているじゃないか)
こっちは長く夜営と警戒で、貴族達は遊惰だとルーナはそう心で罵倒に留める。諸事情でルーナは貴族という階級社会を辟易し、幻滅している。それで国王グレイソンの忠義心が落ちることはない。
遠征任務部隊は国王が現れるとルーナの命令がなくても陣を作り片足を膝につき頭を下げる。
ルーナと好青年も先頭になる位置で頭を下げて国王の声を待つ。
「よくぞ戻ってくれた。顔を上げよ」
「はっ!」
声が掛けられルーナと好青年は顔を上げる。後ろの騎士達は顔を下げたままである。命令を無視をしたのではなく、上官に責任のある者以外は決して上げるな!と叩き込まれている。国王の傍らに立つ
宰相は国王の代わりに問う。
「長い任務ご苦労であったルーナ・アンティークとブルータス・セルヴィリア。して戦況報告は」
ルーナは苦痛な表情で報告する。
「わたくし遠征軍は見事に南部に展開した各部隊の魔族を妨害に加え、撃退に成功。他に古代文明期と推測される魔物の予期もしない生息を発見と即時に独断で討伐しました。数百の犠牲を出た事を思えば圧勝にはいかず辛勝いたしました」
国王と宰相は疑問を抱いた。何故か暗い顔をする騎士達と率いたルーナも同様。遅れて城を出たのは
異世界転生した救世主とエイブリー、カーミラ、ブルックリン。
護衛が多く連れているため壁になってよく見えずどうするかと考える晴人。
「あっ!あれってルーナじゃないか」
人差し指をルーナがいる方向へ、なんとか見えないかと晴人は壁になる人と人の間にある隙間からしかわずかにしか見えない。
「でしたら、あちらに」
ブルックリンが指すのは翼を広げる形ような護衛達から右、どうやら強行突破ではなく邪魔にならない程度に傍観する。
「そうですね。ハルトくんとミラちゃん話が終わるまで待つんだよ。それじゃあ行こう」
「そのエイブリーさん俺そんなに子供じゃないですよ」
カーミラと同じ扱いに異議を唱える。騒がしい声にルーナはエイブリー達も無事に終わったみたいねっと感慨深い気持ちになる。
「分かった。しかし解せぬ事が一つ、疑念を抱いている顔をしているが何か起きたのか?」
ルーナの説明に頷いていた宰相フィッレトは疑問を追及した。
ルーナは凄惨な光景が写真のように浮かび霧のように消えて次の絶望を浮かび上がり、うつむく。
応えよるのはブルータスであった。
「指揮官の代わりに隊長である自分が応えます。我が遠征軍は村や街を守れず護りきれなかったのです。多勢に無勢にすべてを盾になれず多くの民を蹂躙されました。
そして助けられた人らも」
自分が犠牲になるべきだった精神状態の人のケアーを遅れた
ことなど様々な。
(セルヴィリアの獅子が感情的になるとは…それほど悪夢だったのか)
これは早く心の治療も検討しなければならないかと宰相は思った。
「武勲、大義であった。騎士には必ず治癒魔法師に見てもらうように」
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