夢応の鯉魚
真田真実
第1話夢応の鯉魚
ねぇ、雨月物語の
絵の上手な僧侶が夢の中で魚になるお話。
古文の授業で習って面白いなって印象に残ってたんだけど。それがね、私も魚になる夢を見るようになって。
でも、私は池の中じゃなくてまな板の上。
父がまな板の上で私の頭を押さえつけ、包丁で腹を裂くところでいつも目覚めるの。
目覚めると変な汗をたっぷりとかいて体のあちこちが痛く気分もすごく悪くて。
そんな夢を1年近くみてて、どうしよう私、病気なんじゃないかなと思ってたらこないだとうとうその逆の夢を見たの。
まな板の上の魚になった父をね、私が料理する夢よ。
嫌がる父を押さえつけ腹に包丁を押し当てると頼む、許してくれと涙を流して許しを乞うから私は魚のくせに涙なんか流してとすこし腹立たしくなって
すると、父はひゅうひゅうと変な音を出した後やがて静かになったの。
魚の鰓って思ってたより血が吹き出すんだと感心しながら、ぷつりと腹の皮目に包丁を立て少し力を込めたらすうっと腹は裂け、中から柔らかな内臓が見えてきたわ。
腹を開いて内臓がよく見えるようになったらあまりにも内臓がきらきらしていたので…知ってる?内臓って赤い色だけじゃなくてピンクや緑色の内臓もあるんだよ。
でね、私まだ温かくて少し動いてる内臓にしばらく見入っちゃったんだけど、鮮度が落ちちゃうから傷つけないように全部取り出すにはどうしたらいいか考えてたら急に起こされちゃった。
それからはもう魚になる夢も魚の父を料理する夢も見なくなっちゃった。残念。
魚になった父を
また楽しい夢が見れるといいけど。
格子の嵌まった小部屋で男はうっすらと笑みを浮かべ目を閉じた。
妹を虐待する義父を惨殺した兄は次にどんな夢をみるのだろうか…。
保護室から出してもらうと弁護士は担当看護師に頭を下げ病棟を後にした。
夢応の鯉魚 真田真実 @ms1055
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