漁師の俺は海でのんびりお金を稼ぐことにします。
藤堂獅輝
第1話 漁師はクラス転移を体験する。
どこにでもある普通の私立高校に通っている高校2年生の俺、栖川絢翔は休み時間に起きた突然の状況に困惑していた。
なぜなら、自分たちが立っている地面がいきなり紫色の光が放たれ、いかにも魔法陣ですよと言いたげな円が教室をグルっと一周していたからだ。
「お、おいっ!どうなってるんだ!?」
「分かんないっ!ドアを開かないし、どこに行けばいいのっ!?」
生徒の皆は大分混乱していて、全員まともな行動が取れていなかっただろう。
だが、それでも逃がさないと言うばかりに、それは退路を全て塞いでいる。
そして光が最大になると、俺たちはどこが遠い場所へと一瞬で飛ばされてしまったのだ。
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「……ここは?」
ある生徒がそう言うと、皆はほぼ一斉に顔を上げる。
「よくぞ参った!異界の勇者たちよ!」
王座に座っているが、王と言うにはまだ幼いと思える金髪の青年が俺たちに向けて大声で話しかけてきた。
「そなた達にはこの世界で暴れ回っている魔物の討伐を頼みたい。このままでは、私達の世界が滅んでしまうのだ」
そう事情を伝えた王様に、クラスの学級委員長は。
「喜んでお受け致します」
一言そう答えた。
皆は全員不安そうな顔をしていたが、ここで何かを行ったってそう簡単に変わる訳では無い。そう感じたからこそ、何も言わなかっのだろう。
テンプレはこういう場合、帰れないしな。
「それではそなた達の職業の査定に入る。それぞれこの水晶玉に手を触れよ」
王様がそう言うと、水晶玉が運ばれてきた。
そして流されるままにどんどん査定が進んでいき、最後は俺の番だった。
皆は勇者や賢者、剣聖などといった有名な職業だった。
「さて、俺はどんなのかな……」
俺は水晶玉な手を触れると、現れた文字は【漁師】だった。
「は?」
思わず素が出てしまった。
周りはゲームなどで出てくる有名な職業なのに、俺だけ漁師?何故?
「なんと出たのだ?」
王様がそう聞いてくる。
「漁師……です」
「ほう?リョウシとはどう言った職業なのか?」
「え?」
本日2度目の驚きがそこにはあった。
「海で魚を取る職業のことですけど……知らないですか?」
「ああ。少なくとも私はそんな職業聞いたことは無い。それに海は人間には行けぬ領域だぞ?アソコは魔物の溜まり場だからな。阿呆しか近づかぬわ」
マジか……なんでそんな災厄級(不運の方)のジョブに着くのかなぁ……。俺ってそんなに悪いことした?
「だが、お主も勇者の一員。この国のため、この世界のため、我らと共に戦ってくれないか?」
「もちろん。今はそれしか出来ないでしょうから」
「……察してくれると助かる」
「みんな察してますよ」
俺はそれだけ言うと元いた場所へと戻って言った。
「それでは今日はこれにて解散とする。メイド達の案内に従ってそれぞれ部屋で休むように」
そう王に言われ、俺たちは部屋に通される。2年4組のクラスメイトと俺は様々な思いに駆られながらも、異世界での初日を終えた。
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異世界2日目。
朝に起きた俺達は食堂で一斉に食事をとっていた。
皆の顔にはやはり不安が拭えていなかった。
「今日から皆には訓練に移ってもらう。私は君たちの育成係に任命された将軍のアルトリウスだ。よろしく」
「「「「「よろしくお願いします」」」」」
こういうたとえ不安でも挨拶をしっかり返すところとことかを見ると、クラスメイトは本当に礼儀正しいということがよく分かる。
「食器を片付けた者から順にここの者の指示を聞いて移動してくれ。そして栖川絢翔さんは食べ終わってもここに残ってください」
将軍はそれを言うと、どこかへ行ってしまった。
クラスメイトの間でひそひそ話が始まる。
「ねぇ……訓練だって」
「まだこの世界にも慣れてないのに……」
「皆!こういう時にこんな事を言うのは失礼かもしれないけど、今はこれしか方法がない。生き延びるため、この世界で強くなろう!」
クラスの学級委員長(男子)のイケメンこと天野幸太郎はそう言った。
「そうだよ!こんな時だからこそ、ここで強くなって皆で一緒に地球に帰ろう!」
もう1人の学級委員長、美少女な高坂詩織は皆にそう激励する。
「そうだな。俺たちは皆で帰るんだ」
「皆で強くなろう!」
クラスの意思が1つに固まる。
「でも、どうして栖川くんだけ居残りになったんだろ?」
ふとクラスメイトの誰かがそう言ったことにより?が生まれる。
「やっぱり漁師だから?でも他にも錬金士や鍛冶師の子もいるよね?」
その人たちがうんうんと頷く。
「漁師って職業自体知らなかったらしいし、今後の予定とか確認したいんだろうな」
「皆で生き残るのは 栖川くんとも一緒なんだからね。無茶しないでね」
「分かってる」
それからしばらくして、みんなが食事を食べ終わり、俺以外全員が移動して言った。
そして俺のところに来たのは将軍のアルトリウスさんだった。
「待たせてしまったかな?」
「いや、そこまで待ってませんよ。それで俺に用って言うのはやっぱり漁師のことについてですか?」
「君たちは察しがいいな……。ああ。その通りだ。君の話だと、海で魚を取る職業だそうだね?」
「その通りです」
「じゃあ【ステータス】を開いてもらえるかい?ステータスはその通りに言えば問題なく出てくるはずだから」
俺はステータスと唱えると、目の前に光の板が見えた。
「できたかい?それじゃあそこに書いてある内容をここに書いてもらえるかな?」
そう言われ、ペンと紙を渡される。
俺のステータスはこうだった。
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名前:栖川絢翔
性別:男
職業:漁師
レベル:1
体力:E
魔力:0
腕力:SSS
敏捷力:F
運:E
スキル:漁師の網袋、漁師魂、魚類特攻超、漁の才能超
称号:異世界人
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だった。
……パッと見腕力が異常な程あるのが分かった。
俺はスキルの欄が気になったので、そこを押すと詳細な説明がでてきた。
漁師の網袋:漁師に必須アイテムが入っている。中にはほぼ無制限で物を入れることができ、魚も入り、時間が止まっているので鮮度も抜群。
詳細:船、釣竿、餌(沢山)等。
漁師魂:海の上ではたとえ致死のダメージを受けたとしてもギリギリで耐え、全ステータスが2倍上昇する。
魚類特攻超:魚類系の魔物に対してダメージが5倍になる。
漁師の才能超:漁師として必要な才能が備わっている。捕れる魚類に5割の補正がかかる。
俺はそれらをまとめ、アルトリウスさんに出す。
「これは……本当に生産職か……?」
頭を傾げ、必死にそう考えているアルトリウスさん。
「間違いはないんだよね?」
「はい」
「そうか……。はっきり言って予想外な程に化け物だね。海上では」
「やっぱりそう思います?」
「腕力SSSならまだ分かる。私もSSSだからね。でもこの漁師魂っていうのが……」
「回数制限が書かれてない時点で既にヤバいですよね」
「簡単に言えば海にさえいれば死なないって言うことだからね」
俺とアルトリウスさんがそう話す。
「それでは俺の処遇は……」
「それはちょっと陛下と考えさせてくれ。流石にこのステータスは予想外過ぎた……」
「分かりました」
「話し合いが終わったら呼びに行くから、それまでは部屋でゆっくりしててくれ」
そしてアルトリウスさんは去り際、こちらに軽く手を振りながら去っていった。
「じゃあ俺は部屋にでも戻りますかね」
俺は席を立ち、自分の部屋へと歩を進めたのだった。
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