存在証明

燦々東里

出会いの章

1.いつものお遊び

「見てくださいよ、この写真」

「何これ……」

 とある国のとある町。暗く湿った路地裏で、ある一人の男の人が、綺麗な女性に写真を見せていました。女性は写真を見た途端、驚いたように口元に手を当てました。

 無理もありません。その写真には女性の恋人である男性と、見ず知らずのブロンドヘアーの女性が写っていたのですから。その距離はとても近いです。

「いやぁ、この二人、他人とは思えないほど仲よさげだったんですよ」

「なんですって」

 男の人は目深に被ったフードの中から女性のことを窺い見ます。女性の表情がショックと怒りに包まれると、ますます楽しそうに口角を上げました。

「彼氏さんは勿体ないですよね」

「何が?」

 イライラとした様子で女性は男の人を見ます。つりあがった瞳が綺麗な顔を台無しにしています。

「こんな素敵な彼女さんを放っておくなんて」

 男の人はフードを外し、顔を露わにしました。漆黒の髪は乱れているものの、その顔は端正で、見惚れるには十分の見た目でした。女性もその顔に釘付けです。

「こんな奴あなたからフッてさ、俺にしない?」

 男の人は女性の頬に手を添えて、妖艶に微笑みます。女性はとろけた瞳で男の人を見つめました。

「そうよね、裏切られたんだもの。少しはやり返さなくちゃ」

 そうしてすぐに意趣返しをする女性。男の人は醜いなと思いながら、女性の手を引いて歩き始めました。

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