第12話 お前らも

テレポートの光が開ける。


よし。村には着いたみたいだ。


どんどんヤミカの体温が失われていく。


やばいやばいやばい!


「誰か!村長を呼んでくれ!」


「お、おお?なんだ?スコール?ってえ!?

なんだその血だらけの子!」


近くの家の農家のおじさんが窓を開け、こちらに喋りかける。


「後で言うから早く!」


「お、おう!分かった!」


農家のおじさんは師匠の家の方へと走り出して行った。


「なぁ。スコール。その娘。もうダメだ。」


「な、何言ってんだよ!アヴォルフリード!

お前っ!」


「さっき話しただろう。それは地球龍じゃよ。

アースクルーガー。多分その眷属にされておる。はっきり言おう。無理じゃ。もうその娘、いやあそこの全員アイツの人形じゃよ。」


「な、なんでだよ!?魔法か?魔法なんだよな!?ならこれで!」

俺はそっとヤミカを地に置き、

俺は断罪を近づける。


魔法が壊れない?なんでだ、なんでだよ!?


「アイツは龍であり、地球でもある。

寄生されたのじゃ。アイツに。カラクリはな。

脳は全部食うのじゃよ。幻想を見せている間にな。

その代わりに新たな自分の体で作った脳を埋め込む。」


え、じゃ、じゃあ。アイツらも?幼馴染達もなのか?いや、でもモカには指輪がある筈。

だがあそこで見た中にはモカもいた。


「治してもまた襲ってくるだけ。もう生きる屍じゃ。弔ってやることも大事じゃろ。」


で、でも!でも!でも!でも!


「それに。使えないんじゃろ。時間操作。」


っ!


「脳が少しでも残って居ればな。再生できたのだろうな。でも。無い。諦めろ。もう無理じゃ。」


「じ、じゃあ、?モカは?俺。モカに指輪で完全精神異常状態耐性付けてたぞ?」


縋るような思いでアヴォルフリードに問うが。


「そんなの決まっておる。倒されたのじゃよ。

アイツに。そして。脳を喰われた。」


「な、なんでだよ…なんでなんだよ!?

アイツらなんもしてないぞ!?」


「そうじゃな。なんもしておらん。

だがそれは貴様らにも言えることじゃよ。

もし。もしじゃぞ?

モカがゴブリンに殺されたらお前はどうする?」


「そ、そんなの決まってんだろ?!討伐じゃないのか!?」


「そうじゃな。討伐じゃな。他の何もしていない個体も一緒にな。」


悲しそうな表情を浮かべこちらを真っ直ぐに見つめるアヴォルフリード。


「もし。ここの農家の畑が猿のモンスターに荒らされたら?群れを潰すよな。

唯食べ物を食べただけなのにな。」


「お、おい。つーことはさ…、」


「そう。あの人間達は我らの子供を奪った人間と間違って殺されたのじゃよ。」


は、は?は、は、は?


「というか。七星龍の殆どが人間を皆殺しにしようという奴らだぞ。

というか。我だけだ。人間を殺してないのは。」


俺が。あそこに残っていたら?

もっと周りに気を配っていたら?

そんな考えが俺を襲う。


「なぁ。スコール。お前は我らをどうする?

これでも。まだ協力するというか?」


そんなの決まって、っ!

俺の助けたいという気持ちとは裏腹に

憎いという思考が俺の脳を支配する。


「だよな。そうじゃよな。憎いよな。我らが。

なら解け。封印を。大丈夫じゃ。ここの人間には手を出さん。我は子だけが戻ってくれたらそれでいいからな。」


「ぁぁ。、ぁぁ。ぁ。」


「お、おい。アヴォルフリード。」


「恐らく。ヤミカと言ったか?あの娘の最後の言葉じゃ。本能的な物じゃろうが。聞いてやれ。我にはそんな権利はない。」


俺は横たわるヤミカさんに近づく。

喋った事もない。だが。


「本、当に、ごめん、なさ、いっ!」


嗚咽で途切れ途切れになる俺の声。

いつの間にか泣いていた。


俺はもう殆ど冷たくなった手を握る。

本当に小さい手だ。これからの未来。色々な幸せがあった筈なのに。


そんな俺の手を彼女は。残る小さな力で握り返す。

頑張れ。と語りかけるように。


一瞬。彼女の顔から微笑みが見えた気がした。


「な、なぁ。アヴォルフリード。」

俺は振り向かずに話しかける。


「なんじゃ?」


「俺。お前に協力するよ。そして残りの七星龍に文句言ってやる。」


俺は振り向く。そしてアヴォルフリードの顔を決意の眼差しで見つめる。


「覚悟は、決まったようじゃな。

なら行くか。王都に。まずはアースクルーガーに文句を言ってやれ!」


「ああ。行くぞ!」


俺は前に進むための1歩を踏み出す。

誰にも絶対にこの歩みは止めさせない。


「何やっとる。師匠に顔も見せんで。

そして勝手に殺すな。まだ生きてるぞ?」


し、師匠!?


「貴様が呼んだんだろバカ弟子が。」


おお。ナチュラルに心を読んでくるのは本当の師匠だな。


「師匠。実はアースクルーガーにきs」


「知っとる。だがそれがどうかしたか?

ほれ。そこに直れ。」


師匠は杖で魔法陣を描き始める。

鼻歌交じりで。


「そう言えばこれは教えとらんかったの。

時間逆行。その名の通り時間を逆行する魔法じゃよ。」


は、はぁ?


「これは対象物から全くと言っていいほど離れられないが時間を逆行出来るのじゃよ。

これなら歴史も変えられるぞい。

ワシも昔は良く美味しいご飯を腹いっぱい食べたくて何回も時間を逆行したものじゃ。」


いやそれ!先に言えよ!?


「ほれ。そこの娘をこの魔法陣に乗せろ。」


「は、はい。」


そっと俺はヤミカさんの体をお姫様抱っこする。これモカに見られたら殺されるわ。


そしてそっと魔法陣に乗せる。


「じゃあ魔力を流せ。」


俺は言われた通りに魔法陣に魔力を流す。

すると。時空が歪み始め、空間が裂けた。

うええ!?御使い?


「ほれ。」

師匠が杖で御使いに触れた瞬間。

御使いは爆散し、消えてしまった。


さっすが師匠だぜ!


「は、はぁ?」

困惑するアヴォルフリード。

それは俺も分かる。

あんなシリアル。いやシリアスだ。

シリアスな話をしておきながら助けられるってな。


あれ?ここでアースクルーガー倒してしまえば

歴史変わって皆死なないのでは?


「よし!師匠!行ってきます!」


「おお。行ってこい。あっ!そのヤミカとか言う少女とはこの時間に戻るまでずっと引っ付いてないといけないからな!モカに殺されるなよ!」


は?



そういう大事なことはさぁ!?

早く言えよ!ジジイ!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る