第4話 晴れ間
私にとって憂鬱だったエナの祝祭日。
貶されて、思いを伝えることの虚しさを知って。それから、1年で1番嫌いな日になっていた。
真面目になるのも馬鹿らしく思えて、たいして考えずに参加していた。
けれど、不思議と今は1日1日近づくのが待ち遠しくなっている。
先生のアドバイスを受けて、観察する。
あの人の好きなものはなんだろう?
あの人の好きな色はなんだろう?
見ていくうちに、どんなことを過ごしているのだろう。
どんな景色を見ているのだろう。
同じ学校生活だけど、どんなことを感じているのだろう。
渋々と調べていた疑問だけど、いつの間にか好奇心からあれも知ってみたい、これも知ってみたいと増えていって。
眺めていくうちに、自然と目で追うようになっていた。
友人と夢を語っている様子、クラブに打ち込んでいる様子を見て、知れば知るほど好奇心は、好意へと変わっていった。
特に決定的だったのは、自分と出会ったときと同じように、転んでしまった女子生徒を助け起こして持っていたハンカチを傷口に当てている場面を見た時だ。
他の人でも同じように咄嗟に助けてしまう優しい人なんだと、またそういう事実を知れたことでうれしくなった。
意識していなければ、この思いはここまで育つことはなかったし、観ようとしなければ、こんな前向きな気持ちになることはなかっただろう。
学校へ向かう足取りが軽い。
今日は、あなたのどんな一面が見れるだろうか? そう考えただけで、ワクワクする。
放課後、先生とも会うけど、その度に彼の様子を報告して、話しながら、店を歩いて、どんなことをしたら喜んでもらえるか考えるのも楽しくて。
今、一番充実してるって感じるんだ。
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