第126話 受験当日①

「うーす。 春名と松田さんこっちこっちー!」


「良かった~これでみんな揃ったよ~。 揃って一安心一安心!」


 俺は朝、鈴の家に寄って□□高校に行く為に最寄りの駅に来ていた。


 周りを見てみると、スマホを弄っている高校生やスーツを着た社会人、俺達と同じように入試に向かう他校の中学生がたくさんいる。


 平日の朝早くに駅に来ることはほとんどないから、なんだか不思議な気分だった。


「昨日よく寝れた?」


「私はよく眠れたよ~」


「松田さんいいなぁ~あたしは緊張してあんまり眠れなかったよ……」


「春名はどうだ?」


「俺は気づいてたら寝てたな。 お前は?」


「俺もあいつと一緒であんまり眠れなかったよ。 ってか、気づいたら寝てたって……春名、神経図太いな」


「そうか?」


 俺達は1つの場所に固まってみんなで話をする。  普段あまり話さないメンバーだったけど、今から同じ高校を受験するからか、妙な仲間意識が生まれていた。


「あの制服ってこの辺で見ないけど、どこの中学なんだろ?」


「あの制服は☆☆中だと思うよ? あたし、部活の練習試合で☆☆中に行った時、そこの生徒があの制服着ていたような気がする」


「☆☆中? ☆☆中って確かに比較的近くにあるけど、最寄り駅ここじゃないんじゃないか?」


「家の関係でこっちの駅の方が近いとかあるんじゃない?」


「そんなことあんのか……」


 俺達はそんな感じで他愛もない話をしながら電車を待つ。 


 うん。 何人か眠れなかったって言ってたけど、表情はみんな悪くないし、こんな話ができるなら精神的にも余裕があるみたいだな。


「おっ! みんな電車来たぞ! 早いところ乗り込もう」


「ちょっと待ってよー!」


「陸くんも行こうよ!」


「うん」


 俺達は電車へと乗る。 通勤時間に被っているからか、中は多くの人で賑わっていた。


「うわっ……人予想以上に多いなぁ」


「そうだね。 鈴、俺の近くにいなよ」


「うん。 そうするよ」


 俺は鈴が人混みに潰されないようにする為に鈴の前に立ち、壁となる。


 よくテレビとかで通勤ラッシュは大変だ~って聞いていたけど、本当に大変なんだな。


 今日は同じ路線に何校も入試をしている高校があるから中学生が多いんだろうけど、それでも□□高校に入学したら、朝座席に座って通学っていうのは難しそうだな。


「うぎゅ~」


「大丈夫鈴?」


「だ、大丈夫だよ!」


 鈴の柔らかい頬っぺたが俺の胸板にくっついている。 なんだか周りから少し見られていて恥ずかしいな……。


「後少しで最寄り駅に着くはずだから頑張って!」


「う、うん!」


 俺達は電車に揺られる。 最寄り駅に着くと同じ中学の奴らと合流して、□□高校に向かった。 歩いていると同じ受験生と思われる人達がどんどん増えてくる。


 ここにいる人たちがもしかしたら未来のクラスメイト達かもしれないと思うと、なんだか不思議な気持ちになった。


 俺達は□□高校の校門を通り、玄関にある受験会場が張られている紙を見る。


 俺達は全員同じ受験会場だった。


「よしっ! みんな合格して春から□□高校に入学するぞ!」


 その掛け声に俺達は反応し、みんなで健闘を誓い合う。


 そして受験会場に入り、俺達は問題用紙と睨めっこし、シャーペンを走らせたのだった。

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