第123話 受験勉強のストレスが溜まったので、デートで発散します。 ④

「さて、試合をするんだけど……準備はいいかい陸くん!」


「ばっちこーい!」


 俺達はラインとかを決めて試合を始める。


 1ゲーム10点マッチで、3ゲーム行う予定だ。


 そして、俺は初心者ということで先に3点をもらっている。


 だから俺は7点、鈴は10点を取れば1ゲーム取れるというわけだ。


 本来のバトミントンは21点マッチの3ゲームで行うらしいけど、流石に初心者の俺が経験者の鈴相手にその条件で勝負するのは難しいということで、今回はこのようなルールになっている。


 ま、10点マッチでハンデありでも、鈴に勝てる気はあまりしないんだけどな。


「じゃあサーブ権は陸くんからあげるね」


「ありがたき幸せ……!!」


「アハハッ! もうっ! 何言ってるのよ〜」


 俺は鈴からシャトルをもらい、相手コートに向かって思いっきりサーブを打つ。


 風を切る勢いでシャトルは鈴の方に向かっていき、最初のヘロヘロサーブとは比べ物にならない威力だった。


 しかし、そんな俺の渾身のサーブさえも鈴は涼しい顔で掬いあげる。


 だから、俺はおもいっきり振りかぶり、アタックをしたのだった。


「おっ!?」


「そりゃ!!」


「いいねぇ! 上手くなったねぇ!」


「そりゃどう、も!!」


 俺達は会話をしながらラリーを続ける。


 俺は必死に腕を振っているのに、鈴は涼しい顔で掬いあげていた。


 ……いやいやいや。 鈴強くない?


 これで最後の大会3回戦負けってマジかよ。


 上位陣どんだけ強いんだよ。


「あ"っ!?」


「やっりー! 私の点ね」


 俺は空振りをしてしまい、点を取られる。


 結局俺はほとんど点を取ることができず、1ゲーム目を落としてしまった。


「いや〜部活引退して久しぶりにバトミントンしたけど、やっぱりバトミントンは楽しいなぁ」


 鈴はごくごくスポーツドリンクを飲みながら、楽しそうに笑う。


 額には大粒の汗が浮かんでいて、汗で濡れた髪が少し顔に引っ付いていた。


「そりゃあバトミントンに誘った甲斐があったってもんだね……少し、手加減してくれても全然いいんだよ?」


 俺はタオルで汗を拭きながら鈴に話しかける。


 鈴のストレス発散の為にバトミントンに誘って、効果覿面だったのは嬉しいんだけど、それでも負けるのはちょっと悔しい。


 ハンデがあったのに1ゲーム目10対5だなんて……俺、ハンデ除いたら2点しか取れてないんだけど。


「手加減しないよー! 今日は私のストレス発散に付き合ってもらうんだから!! 陸くん、ほら次いくよ次!!」


「ちょっ! ちょっと待ってくれよ鈴〜!」


 俺は泣き言を言いながらも、鈴に引っ張られる。


 鈴の明るい笑顔を久しぶりに見ることができて嬉しかった。


 自分にも笑みが浮かんでいることがよく分かる。


 やっぱり鈴には笑顔が似合うなと思った。


「もっとハンデあげるからさ、負けた方は買った方に肉まん奢りってのはどう?」


「カッチーン。 そこまでナメられてるなら絶対に勝ってやる! その案に乗ったぁ!」


 俺達はそんなことを話しながら試合を再開する。


 帰り道のコンビニから出てきた時、鈴の手には肉まんが1個握られていたのだった。

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