第116話 最後の大会。 ①
何回も来て、走った陸上競技場で中学最後の大会が始まった。
前日にはツバサとユウマが100メートル競走で県大会出場を決めている。 俺とユウマも続いて県大会出場を決めたいな。
「よう、陸。 久しぶり」
「久しぶりだね、ソウ」
俺は競技が始まる前に近くでストレッチをしていると、前回の大会で5000メートル競走3位だった選手、ソウに話しかけられた。
連絡先を交換してからはちょくちょく連絡を取っていたけど、こうやって会うのは前の大会以来だ。
「それにしても今日くそ暑いよなぁ」
「今日35度超えるってさ」
「うげぇ。 まじかよ……熱中症に気をつけないといけねーな」
「そうだね」
俺達はそんなことを話しながら、トラック内を走っている選手達を見る。
今は前の競技が絶賛行われているところ。この競技が終わったら5000メートル競走が始まる予定だ。
「それにしても、ついに俺達最後の大会だぜ。 陸は調子どうよ? 因みに俺は絶好調!」
ソウは楽しそうに笑いながら俺に対してピースサインを見せた。
「俺も絶好調だよ。 正直、負ける気がしない。 絶対1位取れるよ……!」
「……へぇ」
俺の宣言を聞いたソウは獰猛な表情を見せる。
それに対して俺は、自信満々な表情でソウのことを見返した。
「すげぇ自信じゃん。 たくさん練習したからか?」
「まあ、確かにそれもあるけど、他にもあるんだよ」
鈴からおまじないを貰った。
そして、今日はお昼ご飯で鈴お手製のお弁当を食べた。
彼女がここまで尽くしてくれたんだ。 正直負ける気がしねぇ。
「へぇ……元々負けるつもりは毛頭なかったけどよぉ、そうまで言われたら、俺も俄然負けたくなくなったわ……!!」
「前回は表彰台譲る形になったけど、今回は表彰台いただいて、ソウより上に立つから……!」
「俺は前表彰台立ったけどよぉ、まだてっぺん取れてねぇんだ。 誰にも取らせねぇよ」
俺とソウはバチバチに火花を散らす。
元々俺達に集まっていた視線が、更に集まるのを感じた。
「じゃあ、俺自分のところ戻るわ」
「了解。 またね」
「おう」
ソウはゆっくり歩いて自分の学校の生徒が集まっている場所へと戻る。
それと入れ替わりでユウマやアキラ、後輩たちが俺のところに来た。
「いやぁ、お前らバチバチじゃん」
「まるで漫画みたいだったっすよ!」
ユウマは呆れた顔、アキラは目を輝かせて興奮気味に俺に話しかけてきた。
「だって負けたくないし……」
「はぁ……お前もうちょっと周り見てみろって。 前回表彰台に立った選手と、県大会に出場した選手が話してたら少しは注目集めるだろうけど、あんな漫画みたいなやり取りしてたら、更に注目浴びるのは必然だろ」
「うっ……」
「えぇ〜ザ・少年マンガみたいな感じで、熱かったのに〜」
アキラが唇を尖られさながらユウマに話しかける。 そんなアキラの頭に1つ拳骨を落とした後、ユウマは俺に話しかけてきた。
「お前らがあんなやりとりしてるから、俺達お前のところに戻りにくかったじゃねーか」
「それはごめん」
「ったく……陸に負けたくねぇとは思ってたけどよ、あいつにも負けたくねぇわ……お前ら、上ばっか見てると下から掬い上げられるかもしれねえから注意しろよ」
「……もちろん、ユウマたちにも負けるつもりはないからね」
俺がユウマ達に宣言すると、そこで係員から招集の合図が出された。
俺達は係員のところへと向かう。
これから中学最後の競技が始まろうとしていたーーーーーーー
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