第86話 告白の返事。
観覧車の中に一瞬の静寂が訪れた。
しかし、それはすぐに破られる。
鈴が俺をギュっと抱きしめながら、告白の返事をしたからだ。
「私も陸くんのことが大好きです……! 私を、陸くんの彼女にしてください!!」
その言葉を聞くと同時に、俺の涙腺は崩壊した。
涙を流しながらギュっと鈴を抱きしめ返す。 ただただ鈴を離したくない、ずっとこうしたいと思った。
「ちょっとぉ……! なんで陸くんも泣いてるのよぉ……!」
「だって……だってさぁ……! 嬉しいんだもん! こんな幸せなことってある!?」
「もうっ……泣き虫だなぁ陸くんは」
「そういう鈴だって泣いてるじゃん……泣き虫じゃん」
「へへっ……確かにそうかも……私たちって、似た者カップルだね」
俺達はただただ幸せだった。 このひと時がずっと続けばいいなと思った。
でも、しっかり観覧車は回っていて、そろそろ地上につこうとしている。
このまま泣きながら抱き合っている姿を他人に見られるのは恥ずかしい。
だから、俺達はそっと身体を離した。
でも、手は離したくなくて、2人ともほどこうとはしなかった。
「…………あったかいね」
「…………そうだね」
俺達はギュっと手を握る。 地上までは後少し。
俺はここでプレゼントを渡すことにした。
「鈴。 本当はプレゼント渡してから告白する予定だったんだけど、思いが溢れて先に告白してしまいました。 そんな俺からの誕生日プレゼント、受け取ってくれますか?」
俺はカバンから細長く、綺麗にラッピングされているプレゼントを渡す。
それを鈴は笑いながら受け取ってくれた。
「やったぁ~! 誕生日に彼氏から誕生日プレゼント貰えるなんて、彼女冥利に尽きるね♪」
その言葉を聞いて俺は気恥ずかしさを覚えるが、よく見れば言った鈴も恥ずかしそうにしていたので、なんだか背中がこしょばゆくなった。
「なんだろなんだろ~♪ もう開けていいの?」
「うん。 開けていいよ」
俺がそう言うと、鈴は丁寧にラッピングを剥がしていく。 こういうのって、性格出るよね。
「うわぁ……大人っぽくて、可愛い腕時計……!!」
箱から出てきたのはワインレッドの腕時計だった。 ベルトも赤系統の色で、見ていて大人っぽさや色気を感じる。
個人的には文字盤がキラキラしていて可愛く、かっこ可愛い感じがオシャレポイントだと思っている。
「これさ、本当に貰っていいの!?」
「うん。 鈴なら絶対に似合うと思ったんだ」
「やったー! 早速つけていい?」
「どうぞどうぞ」
俺がそう言うと、鈴はいそいそと腕時計を身につける。
光に照らされた腕時計はとても鈴に似合っていた。
「似合ってるよ鈴。 最高だ」
俺の言葉を聞いた鈴は、無言で下を向いて身体を震わせる。
どうしたんだろう?と思って身体を近づけると、鈴はガバッと身体を起こして俺に抱きついてきた。
「もうさいっっっっっっこうだよ陸くん!! 好き好き大好き愛してる———!!」
「ちょ、ちょっと鈴!? 気持ちは嬉しいけどもう地上に着くから!! 係員のお兄さんがこっち見てるから! あ、係員のお兄さんニヤニヤしてる…………み、見ないでくれぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
俺は鈴に抱き着かれながら、情けない声を出したのだった。
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