第72話 バレンタインデー兼誕生日のことについて、女友達に聞かれました。

「ねぇねぇ春名くんさー2月14日がなんの日か知ってる?」


 塾の授業が終わると阿部さんが話しかけてきた。


 今は塾の駐輪場にいる。 今から帰ろうとしていたところだった。


「バレンタインデーと鈴の誕生日だよね?」


「あれ? 春名くん鈴の誕生日知ってたんだ」


「なら、あたし達の心配は杞憂だったかもしれないわね」


 近藤さんが驚いた顔で話しかけてきたと思ったら、続いて村上さんが両手を擦り合わせながら話しかけてきた。


 心配は杞憂だった? どういうことだろう?


 俺が疑問に思ったのが顔に出たのか、阿部さんが理由を話してくれた。


「いや、もし春名くんが誕生日知らないなら教えてあげないとなーって思ってたのよ! 今日は教えるなら最高のタイミングだったしね!」


 確かに今日鈴は家の都合で塾を休んでいる。


 いつもなら鈴もここに加わっているから、確かに最高のタイミングだな。


「因みに誕生日プレゼントとかもう決めてるの?」


「うーん……考えてはいるんだけどしっくりこないんだよね」


 俺は近藤さんの質問に答える。 色々考えたり調べたりしているけど、どれもしっくりこないんだよなぁ。


「でも、誕生日プレゼントのことしっかり考えてるみたいで安心したわ」


 村上さんはホッと息を吐く。


 それに阿部さんと近藤さんは良かったー!と賛同していた。


 どうやら知らないうちに3人に心配をかけていたみたいだ。


 ……気持ちが嬉しいなぁ。


「じゃあ、2月14日に鈴に告白はするの?」


「ぶふぅ!?」


 俺がホッコリした気持ちになっていると、阿部さんに言葉の爆弾を投げつけられる。


 俺は思わず吹き出してしまった。


「な、なに言ってーーーー」


「いや、春名くんが鈴のこと大好きなのは、うちら全員知ってるから」


 俺が慌てて質問をしようとすると、阿部さんに遮られた。


 3人ともどこか呆れたような表情をしている。


 その表情を見ると、なぜか俺は顔を逸らしたくなった。


「正直、告白は悩んでいるところ……」


 俺は小声で話す。


「そうなんだ。 ちゃんとそこら辺のこと考えてるんだねー」


「もう2人とも見てたら早くくっつけーって感じだったからね。 告白を考えてくれてるだけ安心したよ!」


 阿部さんと近藤さんが笑顔で話し合う。


 なんで俺は安心されてるんだろう?


「……今年あたし達受験の年じゃない? 3年になると部活も勉強も今以上に忙しくなったり難しくなるから、もし2人が恋人になれたとしても恋人らしいことってあんまり出来ないと思うのよ」


 俺の疑問に村上さんが近づいて教えてくれる。


 ふむふむ……。


「なら、鈴の誕生日っていう大きなイベントがある2月14日に告白して、そこで晴れて2人が恋人関係になれたとしたら、一緒に過ごしたり遊ぶ時間が増えるでしょ? だから、あたしたちの中では2月14日に春名くんが告白してくれたらいいねーって話になってたのよ」


 村上さんの話を聞いて少し納得する。


 確かに俺たちが2月14日に恋人関係になれたとしたら、2年生で恋人関係と3年生で恋人関係に少しは違いが出るだろう。


 でもーーーー


「まず告白して絶対恋人関係になれるとは限らないじゃん? それに、そんなに急いで告白して成功するのかな?」


 俺は不安を3人に吐き出す。 一体なにを言われるんだろう? 男の癖にはっきりしないわね!とか言われるのだろうか?


 俺は恐る恐る3人を見る。 3人ともなぜか微笑ましい顔をしていた。


 え、今までで1番理解できないんだけど!?


「微笑ましいわ……」


「ほんっと、この2人可愛いよね」


「いいなー! うちもこんな感じの恋愛してみたい!!」


「……えぇ」


 俺は思わず困惑の声を出してしまう。


 そんな俺に構わず、3人は告白するなら今しかないと熱く語ったのだった。


 それを聞いて、俺に元々あった告白してもいいかもしれないという気持ちが大きくなり、俺はその場で2月14日に松田鈴に告白することを、3人に宣言したのだった。

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