第42話 同じ塾の女の子達と体育祭について話しました。

「夏休み終わってすぐ体育祭の練習とかめーんーどーくーさーいー」


「炎天下の中での行進練習は堪えるわね……」


「なんでキツいのにあんなに行進の練習するんだろうねぇ」


「うーん……分からないね」


「琴はいいじゃーん。 吹奏楽の演奏で行進の練習しなくていいんだからさぁ」


「光、それ本気で言ってる……? じゃあ、炎天下の中重い楽器を持って演奏してみる?」


「……ごめん。 うちが悪かったです」


 今日の塾が終わり、俺達は近くのコンビニの駐輪場で雑談をしていた。


 結構な確率で、塾が終わると俺もこのグループにいるのが普通になっている。


 嬉しいけど、よく俺はここにいていいのか? 大丈夫か?って不安になるんだよな。


「みんなはなんの競技に出るか決まった? うちは借り物競走に出ることになったんだけど」


「あたしも借り物競走ね」


「私はジャンケンに負けて400mリレーと徒競走の二つだよ……! 二つ出ないといけなくて、しかも走る系だから大変だよぉ」


「鈴走るの速いんだからいいじゃない」


「良くないよぉ……凛も走るの速いんだから障害物競走じゃなくて、リレーとか出ればよかったのに」


「いやよ。 疲れるじゃない」


「なんなのよぉ~凛のアホ! 美人! 身長わけて!」


「途中から悪口になってないわね……」


「近藤さんはなにに出るの?」


「わたし? わたしはパン食い競争だよ。 春名君は?」


「俺は1600mリレーとパン食い競争だよ。 近藤さんとパン食い競争一緒だね」


「そうなんだ~じゃあ、春名君に負けないように頑張ろう」


 ……パン食い競争に勝ち負けがあるのだろうか?


「ちなみに春名君は1600mリレーのアンカーなんだよ!」


「え、凄いじゃない!」


「私、いっぱい応援するね……!!」


「うわ~アンカーなんて凄いねぇ。 かっこいいねぇ!」


 なぜか阿部さんが胸を張って自分のことのように自慢する。


 ……阿部さんが1600mリレーのアンカーに俺を推薦しなかったら、普通に400m走れば良かっただけなのに。


 俺はジト目で阿部さんを見る。


 すると、阿部さんは俺の視線に気づくと、視線を上の方に向けて口笛を吹き始めた。


 ……吹けてないよ阿部さん。


「ユウマ達も推薦してたから1600mリレーに出ることは変わらなかったと思うけどさ、アンカーになったのは阿部さんの推薦があったからだよね……」


「う″っ!?  で、でもアンカーが一番目立てるからいいじゃん。 それに前、体育の授業で春名君が400m走ってるの見たけど、速かったじゃん。 だからいいかなっ~て」


「まあ別にいいんだけどさ、アンカーってやったことないから緊張するんだよね」


 俺はアイスを食べながら愚痴る。


 すると、阿部さんが俺の近くまで来て、耳元でなにかを喋り始めた。


 ちょ、ちょっと近いって! 松田さんとは違う甘い匂いがするって!


「でもさ、アンカーでかっこいいところ見せることができれば、鈴にアピールできると思うよ?」


「な、なんでそこで鈴の名前が出てくるの!?」


「だって春名くんって鈴のこと…………ん? 〝鈴″?」


「あ、あぁぁ~~! 阿部さんそんな考えがあったんだぁ~! 俺にはそんな考え思いつかなかったなぁ~~! 凄いなぁ阿部さんはぁ!?」


「はぁ!? 春名くんいきなりどうし————————」


「え、なになに? 光なにか凄いこと思いついたの?」


「あの光が?」


「どんなのどんなの?」


「うぇ!? え、え~とそれはねぇ……それはねぇ!?」


 俺は阿部さんに追求される前に、注目を阿部さんに集中させることに成功した。


 このまま話よ流れてくれ……!


 俺はしどろもどろになりながら話している阿部さんを見ながら、そう思うのだった。

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