第8話 女の子と連絡をとるのが楽しい。
塾から帰って夕飯を食べ、お風呂に浸かってゆっくりストレッチをしている最中、スマホに連絡がきたことを伝える音が部屋で鳴った。
俺は少しの不安とドキドキを胸にスマホを開く。 表示されていたのは先ほど連絡先を交換した松田さんの名前だった。
『こんばんは。 これからよろしくね』
文章と一緒に猫が挨拶している可愛らしいスタンプが送られる。おぉ……俺、女の子と連絡とってるなぁ。
大抵友達と連絡取る時、絵文字とかもない簡潔なものか、あったとしてもスタンプだけだからなぁ。
『こんばんは。 よろしくね』
うーん……これだけだとなんか寂しいような気がするなぁ……よし! アイコンについて質問してみるか!
『質問なんだけどさ。 松田さんのアイコンの猫って飼っている猫なの?』
俺がそう送るとすぐに既読になり、返信が返ってくる。 うわっ返信はっや!
『そうなんだよ~! うちで飼ってるの! 名前はナナっていうの! 可愛いでしょ~!?』
『可愛いね。 うらやましいよ』
『春名くんも猫好きなの?』
『好きだよ。 俺犬よりも猫派だもん』
『私もだよ~! 一緒だね! 春名くんはなにか動物飼ってないの?』
『うちは亀を一匹飼ってるよ』
『へぇ~名前はなんていうの?』
『みどりって言うんだ。 由来は緑色だから』
『アハハッ! そのまんまじゃん! でも、そのシンプルさ私嫌いじゃないな~』
俺たちはそれぞれのペットの可愛いところや豆知識を連絡しあう。 なんかいいなこういうの。 楽しいや。
『いや~なんか春名くんの話聞いてたら亀飼いたくなってきたよ』
『俺も松田さんの話聞いて猫飼いたくなった』
『猫はいいぞ~』
『亀もいいぞ~』
そんなやり取りをしていると目に入ったのは23時という数字。 そろそろいい時間になってきたな。
『あっもうこんな時間じゃん。 そろそろ寝ないとね』
『そうだね』
俺はここで連絡は終わって、後はおやすみを言うだけだと思っていたが、松田さんからはまだ連絡が続いた。
『そういえば話変わるけど、中間テスト嫌だよね~』
……いや、なんかさっきので今日はもうおしまいみたいな感じだったじゃん。 まだ続くの? 俺は全然いいよ? だって女の子と少しでも長く連絡とっていたいもん。
『嫌だよね。 でも、テスト週間になって部活停止になるのは嬉しいかも』
『あ、それ分かる』
『まぁ、俺は走らなかったら身体鈍るから部活停止だろうが、自主練で少しは体動かさないといけないんだけどね』
『うわ~流石陸上部の長距離。 大変だね』
でも好きでやってることだし、部活よりは気軽にできるからそんなに大変じゃないな。
『あぁ~中間テストなんてなくなればいいのに』
『それは賛成かな』
『でも悲しいかな……勉強からは逃げられないんだよ……』
『辛すぎぃ!』
『あぁ……今回のテスト勉強どこでやろう』
『松田さんはいつもどこでやってるの?』
『塾の自習室か友達の家かな? 自分の家だと集中できなくてさぁ~』
へーそうなんだ。 俺も自分の家だと集中できないから気持ちは分かるな。
『案外町の図書館とかいいよ。 静かだし人もいないし』
『えっ! そうなの!?』
『そうなんだよ。 お年寄りか親子しかいないから案外穴場だよ? 俺も時々行くし。 なのに成績が悪いのは悲しいんだけどね』
図書館で勉強すると集中できる半面、俺勉強してるっていう自分に酔うのか、あまり頭には入らないんだよね。
『へぇ~そうなんだ。 なら、私も行ってみようかな?』
『俺、今週の土曜日に図書館で勉強するつもりだけど、松田さんも一緒に勉強する?』
誰か一緒の方が気が引き締まるような気がするし。……あれ? 今までならすぐに返信が来ていたのになんか今回はやけに遅いな? 既読はついてるけど……寝落ちしたのかな?
『じゃぁ、春名くんのお言葉に甘えて一緒に勉強させてもらおうかな』
『分かった。 じゃあ、日にち近づいたら詳しいことまた連絡するね』
『うん。 よろしく。 じゃあ私寝るね。 おやすみなさい』
『おやすみー』
俺はスマホを閉じて枕の方に投げる。 さて、土曜日は松田さんと一緒に図書館で勉強か。……んん?
「あれ? これは図書館デートと呼べるようなやつでは……?」
自分で言葉にして自覚する。 あれ? これ俺からデートに誘ったってとれなくもないよな? え、俺無意識に女の子をお誘いしたの?
「~~~~~~~っっっ!!」
自分の顔が赤くなるのが分かる。 あぁぁぁ今更になって恥ずかしくなってきた! ストレッチで火照った体が更に熱くなる。今日は寝るのに時間かかるかもな……。
俺はパジャマをパタパタさせながらベットに入る。 どうか寝れますように……!
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