第5話 同じ塾の女の子たちが可愛い。

「そういえば今日さー部活で後輩が“先輩”って言ってくれたんだよ! まじテンションあがるわー! 凛もそう思うよね!」


「あたしは別に……」


「えー! 相変わらず凛はクールだなぁ。 琴美はどう思う?」


「わたしも言われたときは嬉しかったなぁ。 こう、胸にグッとくるものがあったよね~。 鈴はどうだった?」


「私は嬉しすぎて顔がにやけてたら、顧問に少し気味悪がれたよ」


「「「それはなんか想像つく」」」


 塾の授業が始まる前、俺はいつもより早めに来て仮眠をとっていたら、いつの間にか周りが女の子だらけになっていた。


 まじか……早めに来るとこういうことになるのか。


 俺は気まずさを感じているが、席を離れるためには彼女たちの前を通らないと行けないので、身動きがとれないでいた。


 俺は空気だ。このまま静かにしておこう。


「春名くんはどうなん? うちと同じ感じ?」


「えっ?」


 そう思っていた矢先、阿部さんが俺の方に話を振ってきた。


 女の子たちの意識が俺の方に向いていることが分かる。え、急じゃない?


「まぁ嬉しかったよ。 俺も“先輩”って言われるのに憧れてたからね」


「おぉ~春名くん分かってるねぇ~! ってか、何気にうちらと話すの春名くん初めてじゃね? うちとは同じクラスだけど話したことなかったよね?」


「そうだね」


 俺と阿部さんは2年7組で、松田さんと近藤さんが2年3組。


 村上さんが2年1組だったような気がする。


 まあ、うちの中学校7組まであってそこそこ生徒数も多いから、名前を知らない、話したことがない人がいるのは当たり前だよね。


「同じ塾に通ってることはなんとなく知ってたけど、これからは同じ曜日だし仲良くしてね!」


 そう言って俺に笑いかけてくれる阿部さん。笑顔が可愛い。これは人気出ますわ。


「まあ、よろしくお願いするわ」


 村上さんも俺に話しかけてくれて、なんと握手までしてくれた。 


 少し頬が赤いような気がする。


 照れてるのだろうか? ギャップ萌え可愛い。 これは人気出ますわ。


「1年生の時、同じクラスだったけどあんまり話したことなかったよね? これからはよろしくね!」


 近藤さんは俺の近くまで来て、しっかり目を見て話しかけてくれた。


 背が俺よりも低いから自然と上目遣いになる。 


 男心良く分かってる可愛い。これは人気出ますわ。


「もう何回も話したりしてるけど、よろしくね春名君!」


 松田さんが俺の手をブンブン振る勢いで握手をしてくれる。 元気とても可愛い。 これは人気でますわ。


 あれ? なんか思考停止して俺可愛いと、人気が出るしか思ってなくね?


「はいはい。 仲良くなったのはいいけどそろそろ授業始めるわよー! あんたたち自分の先生たちのところに戻りなさい」


 そう言って現れたのは北山凪先生。 スレンダー美人の女子大生だ。


 ちなみに俺が“女子日”になる前から教えてくれている先生だ。


「もうそんな時間かー! じゃあまた後でねみんなー」


「あたしたちも行くか。 琴美。 行くよ」


「はぁ~い。 今日も凛と一緒にがんばるぞー」


 みんなそれぞれ自分たちの先生のところに向かっていく。


 松田さんも俺の隣の席に腰がけた。


「よしっ! 今日も頑張ろうね春名くん!」


「うん。 頑張ろう!」


 力拳を作って俺の方に向ける松田さん。


 少し照れ臭かったけど、俺も力拳を作って松田さんの方に向けた。……不思議と嫌じゃないな。


 そんな俺たちを見て、微笑ましそうに笑っている北山先生の視線に気づいたのは、割とすぐだった。

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