第12話 最強とは?
一連の事件が終息を迎えたらしい。
黒塗りのワゴン車の中で九重先輩からこれまでの事情を話したいとのことで、眠いのに九重先輩の家に連れて来られた。
元々、学園長が用意しているマンションに寄ってから帰ろうと思っていたから、すぐに自宅に帰る必要はなかった。
マンションに寄るのは単に眠むかっただけなのだが……
特に気になることと言えば、九重先輩のお母さんが苦手だというところだろうか。
いや、本音をいうと苦手ではない。
むしろ、好みだ。
超好みと素直な心では思っている。
しかし、人妻であり先輩のお母さま。
ここは無難にやり過ごしたい。
大人の余裕を全面的に出し、その魅力的な雰囲気に圧倒されてしまうから、苦手と表現しているまでのこと。
九重先輩の手前、こんな事は口が裂けても言えないが、俺はエロいお姉さんは大好きな訳で、九重先輩のお母さんは……その対象として十分な、いや十二分以上の破壊力を秘めている。
「お、お邪魔します」
緊張しきった俺を他所に、九重ママは玄関から渡り廊下まで裸足で出迎えてくれた。
「おかえりー! かずちゃん、疲れたでしょう。まずはお風呂に入ろうね!」
「それに、お邪魔しますは無いでしょう。ここに来る時は、ただいまでしょう? ちがう?」
体が無意識のうちに反応した。
首がフルフルと横に振られる。
「た、ただいま」
「うふふ、そうそう。良くできました! かずちゃんはうちの子なんだからね。遠慮したらダメですよ」
女神の微笑みで俺に抱きつき、大きな柔らかいおっぱいを、これでもかというほど俺の胸にぶつけてくる。
これが今回の仕事の代金(ご褒美だ)としても即刻、承諾できるレベルの気持ちよさ。
ああ、女神から天国に連れられていくー!
ついでに経験値0の俺の相棒も昇天してもおかしくはない。
だが、先輩が後ろから見ている手前、辛うじて我慢できた。
さあ、意識を切り替えよう!
お風呂か、ああ、助かるな。
体全体を覆う緊張感を解すのには風呂が適当だ。
これには感謝だな。
あっ、九重先輩から入ってもらうのが礼儀かな?
それとも男である俺の方が早く入るのが礼儀として正しいのか?
一体、どちらが正解なのだろうか?
スマホで検索するも、どちらとも言えないらしい。潔癖症な女性は男性の後には入りたがらないらしいし、家族ならどうでもいいらしい。
ということは、俺は家族ではないからまずは先輩から入ってもらう方が良いわけか。
しばらく自分の世界に籠もっていたが、先輩の声で現実に引き戻された。
「あのー、お母さん。私もいるんだけど?!」
「あら、ごめんごめん。お疲れ様、夢乃ちゃん。これからかずちゃんと私がお風呂に入るから少し待っててね!」
思考を凝らして考える中、九重先輩ママからかなりズレた爆弾発言があった。
「マーマ、それは犯罪だよ! かず君は私のパートナーだから、ママの出番は有りません」
……それってば、九重先輩が俺と一緒にということか?
ま、どっちも遠慮したい。
体を洗う前に男の事情で湯船から立ち上がれない状況はまずい。
それに、情けない事だが、そうなることを容易に想像できてしまう。
「ふふん、なら夢乃が背中を流したり、色々な所を洗うのね。という事なら、おかーさんは、もうすぐお孫ちゃんを抱っこできるのね。
そういうことなら、いいわ。仕方ないもんね! 私は当然だけど湯船には入らずに背中だけ流してあげようと思っていたんだけど? 夢乃はかずちゃんとどうしても一緒に入りたいのね! そっか、そっか、もう夢乃も大人の仲間入りするのね。いや、もう大人なのかな?」
「や、ち、違います。かず君は一人でゆっくりお風呂に入ってもらいたいから、私達が邪魔したら悪いんです! それに……未だだし」
九重先輩が自爆した。
果たして、このママさんに勝てる奴はいるのだろうか?
「ごゆっくり〜」という九重ママの言葉は九重先輩と俺の心を破壊するには十分なものであった。
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