第22話 ゴブリンの巣 洞窟

 時刻午前8時。ザンバードの3人は、冒険者ギルド前に集まっていた。


「それじゃ今日は一直線に、洞窟まで行こう。」とリールは言う。


「魔法はなるべく使わない様にしてね。」とユキは言う。


「レベル上げたいから、私が弓で倒したい!」とユリカは話す。昨日木の矢を大量に買ってマジックバッグに入れて来たのだ。



「目標は、午後4時になったら帰宅の準備をしよう。」とリールは伝え門を出て森に入る。


「何で討伐の目標じゃなくて、帰る目標なの?」と何気無い会話をしながら、森を進む。



 森を進むとゴブリンを発見しては、ユリカが弓で倒し、リールがロングソードげ切りつけ倒していく。ユキは魔法を温存しているためあまり戦闘に加わることは無い。リールはロングソードを1本は腰に着け、マジックバッグの中に予備としてロングソード3本いれている。


「ロングソードで切ると楽だな」とリールは思いながら、戦っていく。刃の消耗を抑えるため、あまりロングソードを使っていないが、マジックバッグがあるので、荷物にならないので買ってきたのだ。最低価格の銀貨2枚のロングソード。



 ゴブリンやウルフを倒しながら、一昨日木を斬り倒し、氷で足を固めた場所にいくと、まだ氷は残っていた。


「凄いわね。どれだけ魔力を込めたのよ」とユキは呆れている。


 さらに進むと、ゴブリンの巣が見つかる。山に横穴を掘った巣だ。以前よりも大きな横穴でホブゴブリンの2メートルの体も入っていけるだろう。


「今は面倒だから。巣を潰すだけにしようか。」とリール達は、巣の周りにいるゴブリンを倒す。


「それじゃいくか。アイス」と横穴の前でリールは魔法を使う


「何してるの?」とユキは驚く。


「いや、毒肉で穴を塞ぐより。これなら確実に倒せるでしょ?」巣は、100メートルほど複雑な道になっているが、道全てを凍らせるイメージで魔法を使った。


「いやいや、魔力大丈夫なの?」


「これくらいなら、あと100回は大丈夫だと思うよ。」とリールは言う。


「本当にあなたは、なんなんだろう。」とユキは呆れている。


 ユリカは、少し疲れが見え始めた顔をしている。


「大丈夫か?」とリールは聞いと大丈夫とユリカは返事するが、今日はユリカの弓のおかげでここまできている。


「もうすぐで洞窟だから。ここの辺で休憩しよう。」とリール達は言い、横穴の山の上で腰をおろす。


 リールはマジックバッグの中から、飲み物と果物そして、回復ポーション出し、ユキとユリカに渡す。



「家にいるより冒険してた方が、贅沢な食事をしているわ。」とユキは呟く。


 ユリカは嬉しそうに食べている。怪我はしてないが、3人は回復ポーションを飲んでいる。


「ああ、やっぱりゴブリン達が集まってきたか。」と巣の前にゴブリンが集まり横穴を塞いでいる氷を不思議そうにみている。


「ちょっと魔法の練習でもするか」とリールは横穴の上近くで魔法を使う。


「カッター」と右人差し指をゴブリンの体中心に合わせ風魔法を唱えると、ゴブリンが中心から裂けていく。


 この威力ならあと1000回位いけるなと思いながらリールは、休憩している。


 そろそろいくかと30分ほど休憩をして洞窟へ向かって行く。



 洞窟へ向かう道でもゴブリン達が大量にいた。


横穴の巣は、全て凍らせた。


「やっぱり襲われた村からこっちに来ているみたいだな。」とリールは2人に話す。


「そうだね。なら早めに食い止めて行こう!」とユリカは元気よく話している。


「何がいるかわからないから、少しは気を付けて行きましょう。」とユキは注意する。



 1時間ほど歩きながらゴブリン達を討伐していく。



 洞窟に着くと、高さ8メートルはある入り口があり、奥に広く穴が続いている。


「前来たときは、奥にいくまで10分くらいかかったから、倒していくと、更にかかりそうだな。先にお昼休憩しようか?」とリールはユリカとユキに聞く。



「そうだね。いま12時30分だから、ちょうどいいね。」とユリカは話す。



 洞窟から離れ休憩場所を探すもいい場所がない。



「リール君、魔力に余裕ある?」とユキは聞いてくる。リールは頷くとユキは、マジックバッグの中から拳くらいの魔道具を取り出す。


「はい。これに魔力を込めて見て。」とユキはリールに渡す。リールが右手に魔道具をつかみ、魔力を込めると魔道具は白く光出す。


「これで、これがあるところから半径30メートル位に魔物が入って来たら、これが赤く光るのよ。」


「そうなんだ、なら奇襲される心配は、無さそうだな。ならここでいいか。」とリールは地面に手をつけて魔力を込める。


「ロック」とリールが魔法を唱えると高さ3メートル横5メートルの壁が出来上がる。それを4つ作り壁にして中で休憩することにした。


「これで少しは安心して休憩出来るな」とリールは思いながら、マジックバッグから昼食を出し、2人に飲みと一緒に渡す。


「ありがとう」とユリカは笑顔で受けとる。


 ユキは、一瞬驚いたがすぐに平常心を取り戻す。


「リール君だもんね。上からの攻撃に注意しましょう。」とユキは2人に言い、昼食を食べ始める。



 昼食を食べている間に魔道具が、赤くなったが、壁の外で叫ぶだけで何も起こらかった。


 時刻午後1時30分。


 洞窟の作戦を立てて、洞窟へ向かう。


 魔道具が白く、まだ魔力が消えていないのでそのままユキが持って洞窟まで向かう。



「Aランクの冒険者を呼んだら、冒険者ギルドにお金が掛かるだろ?だから洞窟中のゴブリンは、上位種以外は倒すだけでいいか?」とリールは2人に聞く。


「ええ、良いわよ。薬草も大量に採取したし。」とユキは言う。


「ふふふ、リールゴブリンの耳取るの面倒くさくなったでしょ?」とユリカは、笑いながら言ってくる。リールは、洞窟に近づくにつれて、目標金額を稼いだので、面倒になってきていた。



「正解だ。ユリカ。洞窟の中にゴブリンが何匹いると思う?」


「100匹位?」とユリカは首を傾げる。


「いや、1000匹超えると思うぞ。なかなか広い洞窟だからな。」と面倒くさそうに言う。


「ちょっとそんなにいて、大丈夫なの?私達だけで勝てるの?」とユキは慌てるだす。


「ちょっとこれを見てくれ」と2人をリールの近くに呼び魔力を込める。


「ファイアーウォール」と唱えると3人から1メートル離れ囲むように炎の壁が出来上がり。


「これで向かって来たゴブリンから守ろうと思う」


「熱くないね?」とユリカは不思議そうに見ている。


「ああ、炎の内側に風魔法と氷魔法使って温度を調節しているからな。矢が来ても魔法で凍ると思うぞ」と言って魔法を解除する。


 リールは2人に離れる様に言う。


「ユリカ、矢を射ってみてくれ」


 リールは、前に同じように、「ファイアーウォール」と唱える。


 そして、ユリカは離れて弓を炎壁に射ると、矢は炎を勢いで越えるも、すぐに凍りつき燃えていく。


「大丈夫そうだな。」とリールは安心する。


「魔法が来たらどうなるの?」とユキは聞くが、ああ、そんな強いゴブリンマジシャンはいないかと、一人で納得する。


「この壁なら余裕で30分くらい魔力が持つから、洞窟手前のゴブリンが集まって来たらこのまま進んで行こうとおもう。」


「なら奥に行ったら上位種を狙うのね。」


「凄いね!私も上位種倒したい!」とユリカは話す。


「ああ、せっかくの上位種だから、レベル上げをしていこう。危険だと思ったら俺の近くに集まってくれ」


 2人は頷く。


「準備は良いか?いくぞ」と3人は洞窟へと向かって行く。


「ファイアーウォール」


 3人はリールの2メートルほどの炎の壁の内側に集まり、ゆっくりと洞窟内に歩いていく。


「このまま5分くらい歩いていくか」とリールは言い歩いていく。


 リールの身長ならジャンプすれば、周りを見ることが出来る。


 5分後。


「変わったのいた?」とユリカは聞いてくる。


「ああ、先にうじゃうじゃいるぞ、レベル上げするか?」とリールは聞く。


 ユリカは頷くが、ユキは横に頭を振る。


「ならユリカ、あっちに矢を射ってみ。」と指を指す。


「どこでもいいの?」とユリカは言うと、氷の矢を弓で射ち始める。


「疲れる前に止めろよ。」


「わかった」と歩きながら射ち続ける。


「お!上位種が出たか」


「どうしたの?」とユリカは聞く。


「ユリカの弓を弾いたやつがいるぞ。」


「ならそろそろ出番ね。」とユキが気合いを入れる。


「炎の壁を広げて周りのゴブリンを倒す。そしたら少し下がってくれ」とリールは言い、炎の壁を20メートルほど広げ、壁を消した。


「うわぁ、まだまだいるな。」


「一先ず前やった氷の魔法をいくぞ」とリールは言い、アイスと唱える。暗いので、ライトの光魔法を唱え、昼間と同じくらいの明るさを維持する。


 目の前のゴブリン達は、リールの膝ほどの氷に足を凍らせられる。ゴブリンナイト3匹、ゴブリンマジシャン2匹、ゴブリンファイター3匹は、ジャンプして避ける。


 ゴブリンファイターとゴブリンナイトは、リールよりも大きな体長で、ゴブリンマジシャンは、普通のゴブリンより少し大きい位だ。


  上位種達は氷の上を走ってきた。



「8匹か、後方から狙ってくれ」と言いながらリールは、ロングソードを構えながら、前に出る。


「「わかった」」とユリカとユキは返事をし、弓と魔法を放つ。


 上位種はかわす。


「嘘!」


「大丈夫だ、奥にいるゴブリンマジシャンを狙ってくれ。」と言いながらゴブリンナイト達が近づいてきた。


 リールに、ロングソードでゴブリンナイト3匹が左右と正面から襲い掛かる。左を盾で受け、右をロングソードで攻撃に合わせる。正面にファイターウォールを唱えるとゴブリンナイトはさがった。


 2匹も下がり、同じ攻撃がくる。


「これならいけるな。」と盾とロングソードを床に落とす。


「ウォーターウォール」とゴブリンナイトが襲う瞬間発動する。3匹のゴブリンナイトは、3メートル幅の水の壁に閉じ込められた。


「カッター」と唱える3匹のゴブリンナイトの首を切り落とす。水の壁がゴブリン血で緑色に染まる。


 ウォーターウォールを解除すると、水が氷の上に広がる。


 その瞬間、3匹のゴブリンファイターが、殴りかかってきた。


 ゴブリンファイターはリールよりも大きい巨体で襲いくる。


 リールは、前腕を合わせ顔面を守る。無意識に身体強化の魔法を発動していた。ダメージはほとんどない。


「リール君、身体強化で、攻撃力と守備力をあげなさい!」とユキが叫んでいる。


「わからないがイメージでいくか。」とリールは、自分の攻撃力と守備力が上がるイメージで、魔力を体に巡らす。


「おお!これは、楽だな」とゴブリンファイターに殴られながら思う。これなら刃物以外ならそうそうダメージがなさそうだ。


「実験だな」と1匹のゴブリンファイターに肉弾戦を仕掛ける。他の2匹の攻撃を無視して、1匹に接近する。


「まず足だな。」とゴブリンファイターの膝を前から蹴る。曲がってはいけない方向に膝が折れ曲がり、力なく揺れている。ゴブリンファイターは叫び声をあげ這いつくばる。


 リールは更に左膝を踏みつける。他のゴブリンファイターはリールを殴り続けているが、拳から出血が見え初めている。


「うん余裕だな。」と他の2匹に狙いを定め、先に向かってきたゴブリンファイターの拳に合わせ拳を振り抜く。


 拳を合わせたゴブリンファイターの拳は潰れ、リールの拳がゴブリンの前腕の中心までめり込む。


「骨も刺さらないのか。凄いな」とリールは自分自身を感心している。


 残ったゴブリンファイターは、周囲を見渡して、リールが床に置いた盾とロングソードを装備する。


「うわ。ゴブリンファイターって武器使うの?」とゴブリンファイターに聞くが叫び声を上げているだけだ。


「速さも強化できるかな」とリールは、体に魔力を込める。


 ゴブリンファイターがロングソードを振り抜くのをリールは、余裕で避けた。


 でたらめに上下左右にロングソードを振るゴブリンファイター。ゴブリンナイトと比べて、技術が無い。


「つかめるかな?」とゴブリンファイターがリールにロングソードを振り下ろすと、リールは右手で下から受け止める。


「痛!」とリールの右手の平が薄く裂けて出血した。ロングソードを掴んだまま、ゴブリンファイターの右膝を蹴りぬく。ゴブリンファイターは、這いつくばっている。


「大丈夫!」とユリカが叫ぶが、ふざけ過ぎたと笑顔で伝える、回復ポーションを傷に振りかける。すぐに出血が止まり、傷も消え痛みもなくなった。


 這いつくばっている。ゴブリンファイターの頭を風魔法で中心から切る。残りのゴブリンファイターも同じ様に始末していく。


 ゴブリンナイトとゴブリンファイターをマジックバッグへとしまう。盾とロングソードも回収する。


「こっちは終わった。そっちは大丈夫か!」と後ろの2人近づきながらに聞く。


「うん、怪我は無い。けど面倒!」とユリカは疲労感もなく言う。


「足を凍らせた、ゴブリンの後ろから魔法を撃ってくるから、なかなか当たらないの」とユキは説明する。


「どうする手伝うか?」


「「大丈夫」」と声を合わせて拒否する。


「なら、この氷だけ溶かすぞ。」とリールは氷を火魔法で溶かす。


 溶かした瞬間、凍っていたゴブリン達の足は、燃えて無くなった。


 ゴブリンマジシャンは、隠れる場所が無くなり、ユリカは氷の矢で狙い、ユキはアイスアローの魔法で1匹づつ狙いを定める。


 2匹のゴブリンマジシャンが火の魔法で迎撃するが、ユリカとユキに数で押し切られ、頭や体に氷の矢を食らって絶命した。


「やったー!」

「よし!」とユリカとユキは声を上げる。


「やったな」とリールは誉める。


 2人は嬉しそうに笑っている。


 ゴブリンマジシャンをマジックバッグにしまう。


「もうすぐ最深部だから周囲を気にしながら、5分くらい休憩しよう」


「わかった」と3人は腰を下ろし座り、持って来た肉を焼き、回復ポーションを飲み休憩する。肉の匂いに集まって来たゴブリンは、リールのファイアーウォールで燃えている。



「そろそろいくか。」


 2人は頷き最深部へと向かって歩く。




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