第5話 私が鳥になる

引きずるものが重いほど

残る轍は深くなる


止まっているかと思うほど

遅い歩みは

周りの速度に合わせられない


いっそ手放してしまおうか


けれどもそれは

身を削がれるのも同じ事


手放す事などできはしない


ならばこのまま進みましょう


まるで蜘蛛の糸にでもかかったように


もがけばもがくほど


強固に絡まる記憶のフィルムに


進む方向さえ見失いながら




どれほどの月日


歩んできたのだろう



くっきりと付いたその轍


鳥が種を蒔くよ




その轍が消える頃には


きっと花が咲くでしょう


地中深くに根を張らし


零れた涙を吸い上げて


綺麗な花が咲くでしょう




引きずるものが重いほど


零れた涙が多いほど



綺麗な花が咲くでしょう



 

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