そして想いは詩になった。

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第1話 通り雨

急に雨が降り始めた

通り雨

向こうの空は青いのに

頭の上の薄い雲が意地悪をする

雨はすぐにあがると分かっている

でも

だから

束の間の雨宿りを諦めてそのまま歩く


濡れるのも悪くない

そんな強がりを言えたのはもう昔の事

本当は濡れたくなんかない

だけど先を急ぎたい


何をそんなに急ぐ必要があるのか

分からない

本当は急ぐ必要なんかないのかもしれない


だけど

こんなにも広くどこまでも青い空に

意地悪な雲がここだけ雨を降らせるから

ちょっとだけ意地を張った


濡れてもいいなんて

先を急ぎたいなんて

思ってなんかいなかった


もう濡れてしまったから

今さら雨宿りしたって遅いよね

意地を張った事を後悔してたら



雨が上がった


そう思ったのは

君が後ろから傘をさしてくれたからだった


たったそれだけの事で

意地悪だと思っていた雲は

幸せを運ぶ使者に思えた

すぐに止むと分かっているけど

少しでも長く降っていればいいのにと思えて


空は青いままで

雨は光に照らされて輝いていて

同じ景色なのに

全然違って見えた


不思議で単純


また突然の雨に降られたとしても

通り雨が嫌いだなんて

きっとこの先思わなくなる



君が傘をさしてくれた


たったそれだけで






 

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