▲10▼ どうしたの? お姉ちゃん
ひとしきり泣いた後、落ち着きを取り戻したくららが、ふと誠実に問いかけてきた。
「……あっ、あのさ、前からちょと、気になってたんだけど……。誠実って、前と喋り方
「……へっ?」
「いや、だって、さっき誠実『僕』って言ってたから……。そういえば前はそう言ってたよなって思って……。あと、敬語じゃなかったし」
そう言えば、そうだ。あのときは、昔のことをいろいろ思い出していたから、つい昔の口調に戻っていた。
「……そうですね。口調を変えたのは、姉さんことを本気で好きだと自覚したからですかね」
「……えっ⁉」
「姉さんのこと、好きだって気付いて、少しでも早く大人になりたかったというか、姉さんに近づきたかったというか……。まぁ、要は、それまでの自分と変わりたくて……ってところが大きいですかね。本気で弁護士を目指そうと思ったのもそのときだから、勉強も頑張りたかったですし。敬語だと、
そう言って、
我ながら、単純だと思う。
「そ、そうだったのか……。なんか、その、ちょっと照れるな。そんな風に言われると……」
「……そうですか? でも、これがオレの本音ですよ」
「……っ! そ、そうか……」
「…………」
顔を赤くしているくららを見ていると、つい
「……でも、姉さんが前の話し方のほうがいいと言うなら、戻しますけど?」
言いながら、くららとの距離を詰め、掛けていた眼鏡を外す。
そういえば、昔は眼鏡も掛けていなかった。
「えっ! い、いや、それは……!」
「どうしたの? お姉ちゃん、顔、真っ赤だよ?」
首を傾げながら、顔を覗き込んでみる。
間近で見るくららの顔は、さっきより真っ赤になっていて、ますますからかいたくなってしまった。
「ふぇっ……! せ、誠実⁉」
「ふふっ。そんな風に真っ赤になったお姉ちゃんも、かわいいね♪」
明らかに動揺している。本当に、なんて可愛いのだろう。
「えぇっ……⁉ いや、えっと……!」
「僕ね、お姉ちゃんのこと……、すっごく好きだよ」
好きで、好きで堪らない。いつもは
「は、はいぃぃいっ⁉」
「……だから、ねぇ。ぎゅって、してもいい?」
ついさっきまでも抱きしめていたけれど、やっぱり何度だって抱きしめていたいと思ってしまう。小さくて柔らかいくららの体は、とても抱き心地がいいのだ。
「えっ⁉ あっ、いや、それはいいけども……!」
「……本当? ありがとう。お姉ちゃん。大好き、だよ」
まさか、すんなり許可が下りるとは思わなかった。最後の言葉は心を込めて、耳元で囁く。そして、愛しい人を思いっ切り抱きしめた。
「あっ……! ……って、せ、誠実……! ちょっ、苦しい、苦しい!」
「あぁっ……! ごめんね、お姉ちゃん! 大丈夫?」
「あ、ああ……」
つい、勢い余って、強く抱きしめすぎてしまった。こういうときに加減が利かなくなるのは、やはり自分のわるい癖だと思う。直していかなければ。
「本当に、ごめんね……。お姉ちゃんがあまりにもかわいいから、つい……。もう、ぎゅってはしないから……。だから……」
「ちゅー、してもいい?」
「…………。はぅぇッ⁉」
「だめ……?」
懇願するようにくららを仰ぎ見る。やはり、キスまでねだるのは
「い、いや、だめではないけど……!」
「よかった……! じゃあ……」
『だめじゃない』ということは、『いい』ということだろう。嬉しくて、すぐさまくららを引き寄せた。
「ちょっ……!」
「んっ……」
引き寄せたままの勢いで、くららの唇を奪う。と言っても、唇に触れるだけの軽いキスだ。しかし、当然、それだけじゃ満足できる訳もなく。
「……どうしよう。お姉ちゃん。やっぱり、子どものちゅーじゃ物足りない……。だから、ねぇ……」
熱を持ち始めた、くららの唇を親指でそっとなぞる。
「大人のキス……、してもいい?」
「へっ⁉ あッ……!」
瞬間、くららの顔が真っ赤に染まる。返事が待ちきれなくて、ついそのまま口づけてしまった。
「んんっ! は、ぁ……。もっと……」
もっと、もっと――。
くららとのキスは不思議だ。もう、何回も交わしているはずなのに、もっと欲しいと、その度に思ってしまう。
「あっ……! せ、いじっ……! んぅッ……⁉」
さらに深く、深く舌を絡ませていく。くららが必死にしがみつきながら、健気に自分に応えてくれていると思うと、嬉しくて心が震えた。
「お姉ちゃん、本当にかわいいよね……。そんなに僕を煽らないでよ……。もっと、欲しくなる……」
キスをしているときのくららは、本当に色っぽくて、切なげで。何と言っても、その潤んだ瞳の中に秘められた、強く美しい輝きに吸い込まれてしまう。
「はぁ、んんっ……! やっ……! 誠実これ以上は……!」
くららが、必死で誠実の腕から逃れようともがく。
「ッ……! だ、めっ……! まだ、逃がさないよ」
でも、こんなものではまだ足りない。もっと、くららを味わいたい。
さっきよりもさらに深く、くららの唇を求めていく。
「ふっ、んんッ……!」
「っ……! くらら……‼」
「あっ……!」
気付いたら、勢い余ってくららをベッドに押し倒してしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます