――幕間――

「――というお話なんですけれど、いかがでしたでしょうか? 実話かどうかは、私にもわかりませんよ? 子供だった私をからかって、適当な作り話をしていたということもないとは言えませんから」


 ふふふと笑いながら、語り終えた羽切はお茶を一口喉へと流し込む。


「巨大な猫の顔って、どんなだろ。あたしにはちょっと想像がつかないなぁ。見たら絶対に恐いだろうけど」


 羽切が語った話の中に出てきた異界の存在を想像しようと上目遣いに天井を見つめ、戸波が唸る。


「感覚としては、トンネルの穴と同じくらいの顔だったと、そう言っていましたね。それがぬぅっと夜闇の中から浮き出てきたらしいですから、小学生のましてや女の子一人でそんなものを見てしまったら、逃げ出してしまうのは当たり前ですよね」


「うわぁ、それあたしなら腰抜けて動けなくなりますよ。もう頭抱えてひたすら誰かが来るの待つしかできなさそう」


「その間に食われて終わりだろ」


 渋沢が茶化すように戸波へ告げ、即座に睨まれるのを横目に見ながら、俺はふと昔五歳年上の姉から聞かされた話を思いだした。

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