第四話:鳴き声

 私のお婆ちゃんは、山間部にある田舎の村で育ちました。


 周りは田んぼや畑ばかりで、現代の都会にあるような娯楽や施設などは何もなく、近くの神社で近隣の友達たちとかくれんぼをしたり、川原で水浴びやザリガニを捕ったりして遊びながら毎日を過ごしていたそうです。


 そんなある日、季節は三月……初春だったと言っていました。


 お婆ちゃんが小学五年生の夏休みに、家で飼っていた猫が子供を産んだそうです。


 猫は人間とは違い、一度に多くの赤ちゃんを産みますから、お婆ちゃんの両親は「さすがにこんなには面倒みきれん」と、近所の家々に声をかけて回り、仔猫の里親を探しました。


 しかし、引き取りを申し出てくれたのはお婆ちゃんと仲の良い友達が住んでいる一軒だけで、他の仔猫たちは貰い手が見つからなかったそうです。


 当時は、普通のことだったとお婆ちゃんは言いましたが、昔は生まれた犬猫の赤ちゃんは、育てるには手間がかかるからとよく川へ捨てられていたらしく、このとき生まれた仔猫たちも、両親の一存で川原へ投げられることになってしまったのです。

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