――幕間――

 話を聞き終え、暫し余韻に浸るように黙り込んでいた羽切が、怪談の感想とは似つかわしくないくらいに穏やかな口調で言葉を紡いできた。


「ちょうど、今日はお盆ですし。まさに旬なお話でもありましたね」


 そして、スイッと首を上向かせ、年季の入った天井を見上げながら何かを探すように視線を左右へ移動させると、「……ひょっとしたら、私の主人も今近くに来ているのかしら」と、面白がるように呟きを付け加え微笑をたたえた。


「…………」


 返答に困り、ぎこちない愛想笑いを浮かべてしまう俺たちへ視線を戻した羽切は、おどけるように小首を傾げ、


「冗談ですよ。今年は迎え火を焚いていませんから、きっと今頃は山の中を彷徨っているんじゃないでしょうか」


 と更に返答に窮する発言を放ってきた。


「さてそれでは、次は私がお話をしましょうか。これは私が小さい頃、お婆ちゃんから聞かされたお話なんですけれど、子供ながらに恐いと感じて、未だに忘れられない話なんです。お婆ちゃんも、もうずっと前に亡くなりましたから、今となっては真実かどうかを確認できないのが残念ですが……」

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