――招きに応じて――

 現実的に判断して、これが一番まともな選択だ。


 そんな俺の考えを察したか、渋沢が「それはまぁ、そうだけどな」と妥協を示すような態度を窺わせ、横目で戸波を一瞥した。


「あたしは賛成だよ。夜の山さまよって、それで怪我したりするくらいなら、素直に助けてもらった方が良いじゃん」


 刻一刻と暗くなる空と野宿を迫られる状況を考慮し、宿を得ることが最善策と結論を下したか、戸波はいともあっさりと女の申し出に賛成を示した。


 たぶん、相手が自分と同じ女性で一人暮らしをしているということも安心に繋がったのかもしれない。


「お話はまとまったみたいですね。簡単なものではありますが、夕食もご用意することができますので、どうぞ友達の家に遊びに来たとでも思って遠慮なく寛いでいってください。さ、こちらへ。お足元に気をつけてくださいね」


 戸波の言葉で意見が固まったと判断したか、女はくるりと踵を返すとそのまま茂みの中を歩きだす。

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