第45話 幕間:ミコトの場合ー③
第3騎士団訓練場にて、アルが後輩に指導をつけている。
真剣な表情で討ち合う様子は
(やっぱかっこいいんだよなぁ~)
即座に相手の弱点を見抜いてそこを突きながらも、改善策を提示して成長できるように促す。旅の間で知ったアルのお兄ちゃん的な側面で好きなとこの1つ……
(あぁやばい――駄目だ。)
これ以上見ていたら、心臓がおかしくなってしまいそうで、そっとミコトは視線をずらした。
「おぅい! 聖女ちゃん! この二人はどうかな? 」
いいタイミングだエロおやじ! おやじは深緑のショートカットがよく似合う長身の美女と、ふわふわの金髪をポニーテールにした可愛らしい少女を連れてきた。うん、おやじが侍らせている怪しい絵面だ。
「ロザリー歌劇団好きだっていうからさ、きっと聖女ちゃんと一緒に楽しめると思うぞ~。」
「待て、何の話だ。」
ちっ! 堅物護衛騎士に勘付かれてしまった。
おやじと顔を見合わせる。
「なんもこうもないよ~。アル今週金曜日、騎士団の大事な会議があるらしいじゃないか。俺もちょうど出かける予定があるから、ザック副団長にお願いしたんだよ。」
「待て! 俺は何も聞いてないが!? 第一お前以上に大切なものなんてない!! 」
(うっは!! それはアカンやつ!! )
思わぬアルの反撃に頭が真っ白になる。
「おうおうお熱いねぇ~。だがしかし、これは団長命令だ! たまにはお前の気難しい圧から聖女ちゃんを解放してあげろ。息抜きも大事だぞ~。」
ナイスフォローだ。エロおやじ!!
「俺の予定もさ、ロザリー歌劇団の新作舞台だから……そんな夜遅くならないし、一緒に楽しめる人と行きたいじゃんね。心配しないでアルも羽を伸ばしてきてよ。」
「――――そこまで言うなら。」
アルはしぶしぶ納得したが、まだ顔はしかめっ面だ。誠に不本意ですってオーラを出しながら、ミコトと護衛してくれる女騎士2人にクドクド外出時の注意点を説教している。それになんだ、ミコトは声をかけられたら誰にでもほいほいついていくから、絡まれる前に阻止しろって。そんなことした覚えは――少しだけだ!
「アル副団長-!! 俺の必殺技見てほしいっす! 」
大型ワンコ系騎士がアルの下に走り寄ってきて声をかけた。お説教タイムが終わることにミコトはホッとする。
「向こうで必殺技研究会してるんですよ! よかったら聖女様もぜひ!! 」
(必殺技研究会――? )
ワンコ騎士に促されるまま、騎士団員たちがわいわい盛り上がっている訓練場の中心まで来た。
「くらえ-!! 」
中央に立った二刀流の騎士が、それぞれの剣から、風魔法をまとわりつかせた斬撃を放つ。絡み合う相乗効果で離れれば離れるほど大きな渦を生み出し、その斬撃は遠くの的を木っ端みじんにした。
「おぉぉぉ!! 」
歓声が上がる。
「よくやったじゃないかザック! 」
ザックと呼ばれた先ほどのワンコ系騎士は周囲からの歓声に照れたように鼻の頭を掻く。
「よしじゃあ技名を決めるか! 風と2つの斬撃がわかる名前がいいよな。」
「それぞれが絡み合ってより大きくなるのもよかったですよね。」
「ザック! お前は何かこだわりはあるか? 」
「はい! 個人的に竜という字を使いたいです! 」
「よしわかった!! 竜、二刀流……」
アルを中心に周囲の騎士たちがそれぞれ興奮した様子で頭を悩ませる。ん? これはなんなんだ?
「あの、これはいったい……? 」
隣のショートカット美人女騎士、サマンサちゃんに尋ねてみた。
「これはですね……いわば自分固有の技を生み出そうとする会でして。ほら男って……。」
少し遠い目をしたサマンサちゃんが教えてくれた。なるほど、幼稚園児が枝拾って振り回しながらいろいろ叫ぶあれみたいなもんっすね。そして力と頭脳と技を身につけた、大人になった今その夢を叶えようとしてるんですね……
(そういやジークもユキちゃんも何も言わずに魔法使ってたのに、アルだけ言ってたなぁ。何だっけ……
男の心の中にはいつまでも“少年”が生きている――――
いつも冷静沈着なアルの、子どもっぽい一面を知ってしまい、少し胸がこそばゆくなる。
どうやらザックさんの必殺技は
(あぁもう。重症!! )
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