第26話 パーティ結成しました



「いやぁごめんごめん、あんなに驚くとは…悪かったよ嬢ちゃん。」


「嬢ちゃんじゃない。」


 思い出し笑いを噛みしめながら、ニッキーが謝ってくる。


(この忍び、心臓に悪すぎ!!嬢ちゃん呼びもやめないし!!)


 神出鬼没なニッキーにミコトはご立腹だ。


「ほら、ミコトも機嫌直して…ニッキーももう笑わない!そろそろ魚焼けてくるよ。冷めないうちに食べな。」


 街道脇の泉のほとりで、しばし昼食を兼ねて休憩する。

 ちなみに料理担当は意外にもジークだ。


(王子様って料理するイメージないのになぁ…)


 キラキラの王子さまは泉で釣ったよくわからない魚に、その辺で採取したよくわからない草を擦り付け、塩コショウを振り、怪しげなキノコと一緒にこれまたその辺にあった大きな葉っぱで包んで蒸し焼きにした。


 葉っぱを開けると香ばしい香りの白い蒸気がぶわっと顔を包む。


「ふわあぁぁぁぁ!」


 蒸し焼きにしたことで魚の白身はふわっと口の中でとろけるように柔らかい。塩味が絶妙で素材の甘さを存分に引き立てている。擦り付けて一緒に蒸した香草がいいアクセントだ。そして魚からにじみ出た油とキノコが絡み合い、噛めば噛むほどコクが出て美味しい。


「最高ですジークさまぁぁぁぁ!!!!」


 自分で料理する機会なんてないはずなのにどこでこのスキルを身につけたっ!

 いろいろ気になるが細かいことなんて気にしていられない。ユキちゃんなんて一心不乱にえらいスピードで食い尽くしている。


「いっぱい食べてね。」


 ジークはみんなが食べている姿を見て嬉しそうに顔を綻ばせる。


(アカン…せっかくディアナと頑張ってちょっと絞ったのに…この旅危険やぞ…)


 そう頭は思うが、もう手を止めることが出来ない。

 もう限界…ってまでたらふく食べた。



 ♢♢♢



「よし、お昼も食べて落ち着いたことだし…作戦会議始めます!

 行先は、風の都のとあるダンジョン。ここのダンジョンコアが至宝の可能性があると冒険者界隈から情報が届きました。」


(おおお!異世界っぽい!!)


 思わずミコトは心の中で拍手した。


「我々はダンジョンのふもとの町、ロイズまで向かい、情報収集をしてからダンジョン攻略に臨もうと思います!!」


「はーい!!」


 ダンジョン攻略なんて非常にテンションが上がる。百獣の王のアルに、天才のユキちゃんもいるんだから楽勝だろう…自分の弱さは端に追いやり、攻略する気満々である。


「ここで一回、お互いの戦力を確認してパーティでの役割を決めておこうか…」


 ジークは水魔法と風魔法を使う弓使いアーチャー兼司令塔。

 アルは火魔法を使った魔法騎士。

 ニッキーは風魔法を得意とする、暗殺者アサシン。今回のダンジョン攻略では暗殺者というよりはアルと共に前衛として兵士ソルジャーでの役割のほうがメインとなってきそうだ。

 ユキちゃんは火・水・風の魔法が使える魔導士、中・後衛として全体のサポートに回る。


 そしてミコトは…


「とにかく怪我をしないこと、勝手に走り回らないこと、ちゃんと引っ込んでること、怪しいものには触らないこと。」


 完全なるお荷物だ。


 至宝の場所がわかるかもしれない、ので肩書きは道先案内人シェルパであるが弱っち過ぎて足手まといである。


(光魔法が使えたら治癒師ヒーラーとして活躍できたのになぁ)




 ここ1週間で練習し始めた光魔法の成果は…

 ささくれをきれいに治すことが出来るようになった…

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