第20話 騎士様は鋭い観察眼をお持ちのようです
自動浄化装置を壊した犯人、すなわち至宝を持ち出した犯人とロザリーの関係が明るみになったことから、劇場テアトリージョが至宝の隠し場所の有力候補の一つになった。
すぐに王城に連絡を取り、騎士団が招集され劇場内の捜索が始まる。
「えらい騒ぎになったね。しかしまぁ、王都のこんな近くに至宝が隠された可能性があったとは…」
騎士団と一緒にやってきたジークが声をかける。
「共鳴する感覚ってのがまだよくわからなくて…俺がサクッて見つけられたらいいんだけど…」
ミコトは申し訳なさそうに話す。
「いいんだよ。今まで何の手掛かりもなかったとこから大きな進歩だ。しかし、暗示を使っているとなると…」
ジークは難しい顔でユキちゃんと話し始めた。
「なぁ、ニッキーは?今日は別の仕事なの?」
しばらく騎士団と共に捜索しながら、ジークがいるときは必ずセットでいたニッキーの姿がないことにミコトは気がついた。
「あぁ、今は王子としての正式な立場で来ているからね…ニッキーは姿を見せられないのさ。でもきっと近くにいるはずだよ。」
ジークがどこか寂しそうな笑顔で笑いながら言う。
(影ってそんなもんなのか…?)
よくわからないが、誰も気にしていないのでそういうものなのだろう。
(でも誰にも気づいてもらえないって寂しくないのかな…ジークもニッキーのこと大好きなのに…)
“影”という存在に少しセンチメンタルな気持ちを覚えたが、今は至宝探しに集中しなくてはならない。見えないとこで頑張っているニッキーにミコトはエールを送った。
「なぁミコト。このままじゃらちが明かないぞ。劇団に来た時や、舞台中のお前は普段と違う様子だったが…何か感じてたんじゃないのか?」
「えっ!なんでわかったの??」
「お前は表情に出るからすごくわかりやすい。」
(アルすごいな…護衛対象者のことよく見てる…)
心の内を指摘されたことにミコトは少しばかり恥ずかしさを覚えた。
「ふーん、僕には全くわからなかったけど…ミコト、何を感じたの?それが至宝との共鳴ってやつかもしれない。」
ユキちゃんに聞かれる。
「えっと…初めて来たときは、この重厚感ある建物の雰囲気に圧倒されたというか…もともと遺跡とか歴史的なものや場所が好きだから、歴史を感じて感動したと思っていたけど!それで舞台中はなんかこう…何かがおかしいなぁという違和感というか…でも共鳴っていうからには魂揺さぶられるようなそんな感じでしょう?」
「知らないよ。誰も共鳴できないんだから。ミコトにしかわからないよ。」
ごもっともである。
「えっ!?じゃあ共鳴してたかもしれないってこと?」
「そうかもね。」
毎日毎日、おじさんたちの嫌味に耐えながら魔法の練習をしていた甲斐があった。
(もっと強烈な感覚と思っていたけどなぁ。)
どうやら共鳴とは自分の内なる感情と丁寧に向き合っていく必要があるみたいで、どちらかと言えばおおざっぱなミコトの苦手分野だ。多少のことはおいしいもの食べて、笑って、寝れば忘れてしまう。
(魔力だけじゃなくて、悟りの修行も必要か…?)
気が遠くなった。
「よし!じゃあミコトの気になる場所へ行ってみよう!」
ジークが提案する。
(そんな幼稚園生の冒険みたいな感じでいいの!?)
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