第19話 魔導具の秘密に迫ってみました

 衝撃の事実に驚いていたが、さすがはカリスマ劇団長。すぐに立ち直り話し出す。


「クリスティア殿下、ディアナ侯爵令嬢、いつも舞台を拝見いただきありがとうございます。そしてエルモンテ魔導士殿、聖女様、お褒めに預かり光栄です。誰にも話したことありませんが…今夜は特別に…


と思いましたが無理です。すみません。」



 急にロザリーの雰囲気が変わった。

 その変化にミコトは違和感を覚える。


「ロザリーはこの件に関しては頑なで…」


 ノーラが申し訳なさそうに謝る。

 チラリとユキちゃんを見るとすごく険しい顔をしている。アルとディアナもだ。何かあったのだろうか…

 妙な胸のざわつきが治らない。


「それは残念です。これだけ聞かせてください。あなたがその魔導具を作ったのですか?」


 ユキちゃんが問いかける。


「いえ、劇場の工事中にとある魔導士が持ってきたのです。」

「ロザリー!?」


 ロザリーが答えたことにノーラが驚いている。

 今までは秘密にしていたことをサラリと話したのだ。無理もない。


(でもなぜ今、それを言うんだ?姫様がいるから?ユキちゃんが変な魔法でも使ったのかな?)


 違和感に違和感が重なる。

 ユキちゃんたちが何を警戒しているかもわからず、ミコトの緊張はピークだ。



「どんな方だったのですか?その魔導士は。」


「特に特徴のない男だったとしか…すみません、劇団創立当初のことであまり覚えていなくて…」


「魔導具を見せていただけますか?」


「すみません…劇場のどこにあるかもわかりません。魔導士が設置していったので…」


「見たことがない、場所がわからないと…なぜあなたはそれをずっと使い続けてたのですか?おかしいと思わなかったのですか?」


「それを使わなくてはいけないと言われて…なにか間違ってますか??」



「…………そうですか。見えない魔導具をどうやって使うのですか?」


「シナリオを舞台上に一晩置くのです。次の日の朝にはシナリオが消えていて、そしてそのシナリオを演じると自動的に舞台が変わるのです。」


「魔導具が、使え続けていることに疑問は抱かなかったのですか?どんな魔導具でも5年に1回はメンテナンスが必要ですよ。永久的にだなんてありえない。」


「あれ、確かに…なんでだろう…20年以上何もしていない…。」






 バタッと急にロザリーが倒れた。


 ディアナが間一髪で支える。

 ソファーに座っていたので幸い頭は打っていないようだ。


「何??何が起こったの??」


「ミコトも姫様も落ち着いて。ロザリーは暗示をかけられていたみたいだ…20年以上も…魔導具のことを話すときにスイッチが入るようになっていたらしい。詳しくは調べてみないことにはわからないけど…今まで誰に聞かれても答えなかったのは暗示がうまく作動していたんだろう。今回は僕が解きながらだったからここまで情報が引き出せたけど…」


「暗示って…人の精神に作用する魔法は禁忌のはずでしょう!」


 姫様が呆然とした様子でつぶやく。

 確かにさっきのロザリーは誰かに操られているって言われれば、そう思えてくる。目が濁り、セリフを棒読みをしているような違和感があった。


「あぁそうさ。でもその禁忌を犯した存在は誰もが知っているだろう。」





 49年前に、女王を苦しめた、そして王国を取り巻く暗雲の始まりの、あの魔導士だ。


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