第4話 お姫様と女騎士が助けてくれるそうです
―――ボスンッとどこか柔らかいところに着地した。
身体は痛くないが落ちた衝撃ですぐには動けない。天井があるから何やらどこかの部屋のようではあるが…呼吸を落ち着かせて実琴はゆっくりと上体をあげる。
(あ、かわいい。)
白とピンクを基調としたかわいらしい雰囲気の部屋だ。乙女としては少し心が躍る。
部屋を見回していると急激にドアが開かれた。
「貴様は誰だ!!姫様の部屋で何をしている!!」
(ひょえぇぇぇ!!!)
気づけば紺色のストレートヘアを頭の後ろでポニーテールにした女騎士に鋭い目と剣を向けられていた。ついて早々の命のピンチに実琴は固まる。
「あら、かわいらしい侵入者ね。」
女騎士の後ろからヒョコッと金髪碧眼ゆるふわ美少女が顔を出す。
(うわあぁぁ!お姫様と女騎士!鉄板!!)
射殺さんとばかりの目で睨みつけられているにも関わらず感激してしまう。
「どうやってここに侵入した。何が目的だ。」
ドスのきいた低い声で女騎士は尋ねる。
「ええっと…なんか女神に落とされて…?協力者のところへ送るわ~とかなんとか…。私もよくわからなくって…。」
しどろもどろに返した実琴の言葉に今度は姫様と女騎士が固まる。
「女神といったか…?」
「もしかして…聖女!?」
驚いた声が重なり合う。
(なんか信頼しあっている仲良しな感じが最高!)
―――お気楽な女である。
「お父様に知らせなきゃ!」
と走り出した姫様を慌てて引き留める。
「待って!その前に助けて!!」
♢♢♢
姫様の居室に移動して実琴は先ほどの女神との話を話す。
「というわけで、私を男に見えるようにしてください!」
ガバッと頭を下げる。
「いいわよ~。なんだか楽しそう。」
「むぅ。胸は少々つぶして腰回りは…髪は…」
ニコニコの姫様とブツブツしている女騎士。
どうやら協力してくれるようである。
「ありがとうございます。それとこの世界のことと私がやるべきことを教えてほしいです。ざっくりと装置のメンテナンスを依頼されただけで方法も何もわからなくて…」
「準備しながら教えるわ。ここはユースタリア王国。私は第2王女のクリスティア。こちらは私の護衛騎士のディアナよ。」
「ディアナ・エルモンテだ。よろしく。」
「よろしくお願いします。仲村実琴です。ミコト・ナカムラって言えばいいのかな?ミコトとかミコって呼んでください。」
美しくかわいらしく親切な協力者にテンションが上がる。
しかしテンションが上がっているのは実琴だけではない。
「あぁワクワクしてきた。ロザリー歌劇団を実際にするのよ!」
姫様もディアナも、王国の女性たちの心を鷲掴みにする女性の女性による女性のための劇団“ロザリー歌劇団”の大ファンなのである。凛々しい女性たちの演じる男性に胸キュンが止まらないお年頃である、生半可な男装では許さない。乙女の夢をこの手で作り出すのだ。
「聖女が現れたことは長く隠しておけないし…とりあえず胸を隠してダボっとした服を着せて髪を切って、これからのことはゆっくり考えますか…ディアナ、あなたの胸当てでどうにか出来るかしら。」
「陛下に謁見する程度ならごまかせましょう。サイズに合ったものは急いで注文すれば3日あれば届くかと。」
「わかったわ…ミコト、とりあえず採寸するから!」
あれよあれよという間にあちこちのサイズを測られる。
「男性のふりをするなら全体的にもう少し引き締めたほうがいいな…」
(うわぁあ!わかってるよ!そんなかわいそうな目で見ないで!)
さすがは女騎士、見事なプロポーションをもつディアナが言いにくそうに伝える。
「う…ダイエットします…。」
(異世界飯は気になるが食べすぎには注意しよう…)
ディアナがどこからか調達してきたシャツとズボン、ベスト、そしてディアナが愛用している胸当て(脱いだら見事な巨乳だったディアナが動きやすくするために胸を固定していたもの。巨乳のディアナが使うと普通サイズに、普通サイズの実琴はもう見事なツルペタに、異世界って不思議だね!)を身につけ、姫様に耳のところで髪を整えてもらうとまあ少年に見えるかな?って感じの実琴が出来上がった。
「せめてもう少し身長があればなぁ~。」
鏡を見ながらうなる実琴。
「大丈夫よ、12、3歳くらいの少年に見えるわ。こちらでは女性は髪を伸ばすものだしきっとバレないわよ。」
「そうだミコト。立派な少年に見えるぞ。明日から稽古をつけてやる。筋肉をつければもっと男らしくなるぞ。」
(10歳も鯖を読むのか…そして女騎士の訓練厳しそう…)
遠い目になるのも仕方がない。
「ではミコト。お父様に連絡するわね。」
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