19: final scene take 2

「おーっす新介」

 浅彦がにこにこ顔で教室に入ってきた。うちの教室は日が当たらないからこの時間は真っ暗。他の連中はもう着替えて体育館に行ってる。

「浅彦、ドア閉めろ」

「へ?」

 入り口に突っ立ってる浅彦の後ろで女子がキャーキャー騒いでる。俺はパンツ一丁だった。

「おおっと失礼。お嬢さん方、もっと見たかったら金払ってからね」

 浅彦は愛想良くそう言った後、ガラスが割れそうな勢いでドアを閉めた。

 その時、俺は見た。浅彦が、すげえ顔するのを。なんつーか、軽蔑? とか、 嫌悪感とか、そういう系のキツイ顔。でも俺がそれにつっこもうとしたらもう 元のにこにこ顔に戻ってた。でも俺はつっこむことにする。

「おまえ、なんだよ、今の顔」

 浅彦は外人がやるみたいに肩をすくめて手をヒラヒラさせた。それからニヤーってヤな感じに笑って言う。

「俺キライなんだ、奴らも、自分自身も」

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