閑話・裏話 決着(色々)
【ロウファ視点】
模擬戦闘試験大会決勝戦、俺が待ちに待った舞台がやって来た。
相手は六連覇をかけたルシードとマリーツィアペア、俺はベルタと共に意気揚々と舞台へ上がり二人を待っていた。
だけど……………二人は現れなかった。
あとでマリーツィアが攫われてルシードはその救出に行ったらしく、そこで魔導技研の連中と戦闘になり、瀕死の重傷を負ったと聞いた。
一人浮かれて楽しみにしていたのが馬鹿みたいだった。
俺の知らない所でそんな事になっていたのだから、仕方ないと言えばそうだ。
ベルタもそう言ってたしな?
けど、これは俺の完全に我儘なんだけど――――――言って欲しかった、とも思った。
「手伝ってくれ!助けてくれ!」って、言ってくれたなら手を貸すくらいはした。
もしも俺やベルタ、あとはヨードあたりを引っ張って来て戦っていたならばアイツはそんな怪我をせずに済んだのかもしれない。
大会は俺とベルタの不戦勝となり、優勝が決まった。
こんなのちっとも嬉しくねぇ!!
俺はこんな結果が欲しかったわけじゃねぇ!!
優勝トロフィーも周囲からの言葉にも何の感動も湧かなかった。
話を聞いてすぐに俺とベルタはルシードが運び込まれたっていう治癒院に飛んでいった。
そこにはベッドに眠るルシードが居た。
幸い命に別状は無かったらしいが、ダメージがデカすぎて暫くは目を覚まさないだろうと聴いた。
今すぐにでも寝ているルシードを叩き起こして文句を言ってやりたかったが、そんなの冗談でも許される気配じゃなかった。
それくらい、ルシードは死線を彷徨って来たんだと思い知らされた。
アイツが目覚めたらしい、副会長のモアだったか?俺にも態々知らせてくれた。
「行かないの?」
見舞いになんて行く気になれなくて一人教室でぼんやりしていると、ベルタが声を掛けて来た。
「………………行っても何言えば良いかわからねーから行かねー」
大丈夫だったか?心配した――――――そんな言葉よりも先に、俺は………俺との勝負をすっぽかした事を責めちまいそうで、そんなガキくさい自分が嫌になった。
「ベルタは行かねーのかよ?」
「ん~…………ウチは今ルシドっちよりもロウっちの方が心配だから」
「なんだよそれ………」
校外実習からベルタとはよく話をするようになった。
手のかかる弟みたいに思われてるようでイラつく時もある。
だけど今はそんなウザさも有難い。
「ホントは今すぐ飛んでいきたいくせに~、素直じゃないんだからな~ロウっちは…………」
前言撤回、やっぱウゼェ。
俺は復帰したルシードに果たし状を叩きつけた。
勝負の方法は一対一、場所は訓練場。
模擬戦闘試験大会のやり直しがしたかった、ちゃんと戦ってきっちりと白黒つけねーとモヤモヤしてロクにルシードと話も出来そうになかった。
「ごめんね~?ルシドっち、ロウっちが戦いたいって聞かなくてさぁ」
「良いよ、俺も何処まで動けるのか確認しておきたいし」
はっ!俺との対戦はリハビリだってか?
気に食わねぇ!!
「ルシード、あまり無理はしないでね?」
マリーツィアが余計な事を言う、無理でも無茶でも何でもしてほしかった。
体が鈍った状態で何処までルシードが戦えるのかは知らないが、今日の日の為にみっちりとトレーニングを積んできた俺に負けて、勝利を渇望する姿が見たかった。
俺が一方的に思ってるだけだが、ライバルとして不甲斐無い結果にだけはなってほしくなかった。
「今から負けた時の為の言い訳してんじゃねぇよ」
俺の挑発にルシードはゾッとするような笑顔を見せた。
「言い訳?そんなのする訳ねぇだろ?最初から全力で行くからそっちこそすぐにへばるんじゃねぇぞ?」
俺は歓喜に震えた、今まで俺が求めていたものが漸く訪れた。
ルシードとの決着、ワクワクが止まらない。
審判を買って出てくれたオーズ先生の合図から試合は始まった。
「始めいッ!!」
結果として、俺の完敗だった。
入院生活で鈍ってるはずなのに、それでも俺は届かなかった。
「くっそぉ!!」
地面に寝っ転がる俺は起き上がる気力も起きず、地面を殴る。
ルシードは何も言わない。
何も言わず、俺が立ち上がるのをじっと待ってくれている。
憐みも、励ましもしない。
お前はまだそんなもんじゃないだろう?手を貸す必要なんて無いだろう?――――――そんな風に言われてる気がした。
そう思うと、自然と立ち上がる気力が湧いて来た。
そして立ち上がると、ルシードは嬉しそうに笑ってやがった。
「中央府でもどこでも行っちまえ!!そこでもたついてる間に俺はもっと強くなってやるぜ!!」
今はまだ只の負け惜しみだけど、それを実現するためにも精一杯吼えてやった。
そしたらますますアイツは嬉しそうな顔をして、
「俺だって負けるつもりはねぇよ」
俺とルシードは拳を突き合わせる。
【ベルタ視点】
「はぁ~………男の子って単純だね~?」
ウチはマリーツィアさんに向けてそれとなく話しかけてみた。
あんまし絡みないから苦手意識もってたけど、さっきまで戦ってたルシドっちを見てる時の心配そうな顔を見てると思ってたより可愛いのかも?
「私は…………少し羨ましいわ」
グータッチしてるルシドっちとロウっちを眩しそうに見てるマリーツィアさん、凄く優しく微笑んでいて――――――ヤバい、めっちゃ可愛い!
「マリっちはルシドっちの事ホント好きなんだね?」
「マ、マリっち…………?」
「ダメ?ウチは気に入った人の事”〇〇っち”って呼ぶ事にしてんの、可愛いっしょ?ウチの事はベルでもルタでもベルタ~でも好きに呼んでくれてオケだから♪」
「ベルタさんは、ルシードの事どう思ってるの?」
あれま、警戒されてる?
「安心して?ウチはルシドっちの事は気に入ってるけど、好きになるとしんどそうだし?今はルシドっちよりも心配なのが居るからウチの事は気にしなくてオケだよ?」
「……………そうなの?」
「そうそう♪」
弟みたいで手がかかるけど、頑張ってる姿を見てるとウチも頑張ろうってなる。
そんな人が近くに居るのに、他の男子なんて気になんないっしょ?
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