第65話 それは誰のせいでも無くて、俺のせいだ
今まで保険だった?【性描写】っぽいものがあります。
苦手だなーって方は御注意下さい。
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俺が用事から帰ると既に三人は帰宅していた。
そりゃそうか、淑女足る彼女たちが男の家に泊まる何てことする筈が無いよな。
それでも――――――今日はもう話せないんだって思うと何か寂しくなった。
その日はいつもの様に夕食を済ませ、スティレット家にある自分の部屋で眠りについた。
しばらくして、部屋の中に誰かがそっと入ってくる気配がした。
足音を忍ばせたその何者かは真っ直ぐ俺の寝ているベッドに近付いて来る。
「は…………ぁ……………」
微かに聴こえて来た荒い息遣い、この声は……………サリアか?
普段聞く事もない甘く響くような声、俺はゆっくりと眼を開けて声のする方を見た。
「あぁ…………ルシード坊ちゃまぁ…………」
そこにはやはりサリアが居た。
懐かしく「坊ちゃま」と呼ぶサリアの瞳は潤んでいて、部屋に差し込む月明かりに照らされ、俺と目が合うと嬉しそうに微笑む。
「坊ちゃま…………その…………似合いますでしょうか?お婆様がお爺様を墜とす時に使った衣装………だそうです」
サリアの着ているのは衣装…………というか下着姿だった。
薄い紫――――――ラベンダーのような色合いのスケスケのネグリジェ、それと同じ色合いのショーツのみだった。
ブラジャーなんてものはなくて、サリアの豊かな胸が透けている薄い布一枚被せられた状態で彼女の荒い呼吸に合わせて上下していた。
「サリア?その……………そういうのは好きな人にだけ見せた方が良いと思う」
「はい。ですからルシード坊ちゃまに見せているのです」
此処まで言われて意味が解らないなんて言うつもりは無い。
それでも、訊かずにはいられなかった。
「俺で良いのか…………?」
ずっと嫌われていると思っていた。
俺がこの世界に来た時から、傍に居てくれた女性だし今現在も世話になっている。
このクソガキが散々セクハラした相手だからこそ、嬉しさよりも信じられないって気持ちの方が先に出て来ちまっていた。
サリアはその姿が恥ずかしいのだろう、けれど隠すようなことはせずこくりと頷いた。
俺は布団を捲り上げ、サリアに隣に来るように促す。
「失礼いたします」
サリアは遠慮がちにゆっくりと俺の隣に入って来る。
前世を含めて初めての経験なんだが、不思議と緊張はしないもんなんだな?
ただ緊張はしないが、改めて近くで見るサリアの妖艶な姿に俺はさっきから興奮しっぱなしだった。
その証拠が身体に現れたのをサリアに見られると、彼女はうっとりとした表情で俺をその胸に抱きしめて来た。
「良かったです。ルシード坊ちゃまは、まだ私で興奮してくださるのですね?」
「あ、当たり前だろっ!サリア――――――」
俺が胸から顔を上げてサリアの言葉を返そうとすると、その口を塞がれた。
すぐにサリアにキスされたのだと理解すると同時に、唇にサリアの舌が触れて来た。
俺がゆっくりと口を開くと、サリアはすぐにその隙間に舌を滑り込ませて俺の舌を探り当て、絡ませてきた。
「んっ…………ん、ふ……………んぅ‥………」
サリアは俺の口の中の潤いは全て自分の物だと言わんばかりに吸い上げて来た。
卑猥な水気のある音が聞こえて、頭の中にすら響く。
俺も負けじとサリアの舌を絡ませて逆に押し返した。
「んむっ…………んぅ…………ん♡」
最初こそ抵抗してきたサリアだったが、俺が暫く主導権を握るとあっさりと降伏したらしく俺にされるがままになっていた。
どれくらいそうしていたかはわからない、俺が唇を離すとサリアは名残惜しそうに舌を最後まで伸ばしてきた。
互いの唇に引いた糸を引き離すと、サリアはとても嬉しそうに妖艶に微笑んだ。
「あとはルシード坊ちゃまのお気の召すままに抱いて下さいませ。私の心は既にルシード坊ちゃまのものですから、どうか私の身体もルシード坊ちゃまのものにしてください」
それだけ言うと、サリアは俺の手を自分の胸に導いた。
柔らかな感触の奥に感じる鼓動は早く、サリアが緊張しているのだと分かる。
「サリア、どうしてこんな――――――」
「夜這いをしたのか?でございますか?」
俺はサリアの言葉に頷く。
此処までされて何もしない程枯れちゃいない、今だってその………痛いくらいだ。
今すぐサリアを思うままに抱きたい衝動が暴れ続けている。
それでも何の意味も無くサリアがこんな事をするとは思えなかった。
それだけは訊いておかないと絶対に後悔する――――――そんな気がした。
サリアは一瞬だけ悲しそうに瞳を伏せると、すぐにまた嬉しそうに微笑む。
「…………ルシード坊ちゃまには本当に驚かされます、この状況でそんなことを訊いて来るだなんて………」
「デリカシーが無いだとか、そんなのは知ってるし解ってるし幾らでも謝る、けどサリアの話がどんなものだったとしてもあとで絶対に抱くしそこには謝らねぇから、そこまで俺は紳士じゃねーから」
俺の言葉にサリアは恥ずかしそうに俯き、そのまま俺の胸に縋る様に抱き付いた。
「今日訪ねて来られた御三方、ルシード坊ちゃまはあの方たちの好意に気付いておられますよね?それにお応えになられないのは――――――私のせい、ですか?」
質問の意味が理解できなかった。
あの三人の好意に気付いてるのは本当だ。但し、それに応えるのはスティレット家という地盤がもう少し安定して来てからにしようと考えていた。
半端な中級貴族がどれだけ求めたって上級貴族の令嬢を娶るのには足りねーんだから、せめて中級貴族の中では
それの何処にサリアの責任が在るんだ?
「私が、まだ幼いルシード坊ちゃまが触れる事を拒否したからですか?厳しく接してしまったからですか?それとも私が……………アルフォンスを拒絶して、上級貴族の地位では無くなってしまったからですか?」
身体を震わせて俺に縋りつくサリアの声も震えていた。
アルフォンスの件についてはきっとサリア自身も考え過ぎだって解ってるだろう、それでも言わずにはいられなかったんだろうな。
俺が女性に対して消極的なのは、自分のせいなんじゃないか?――――――なんて思い始めたら、きっと止まらなかったんだ。
そう思ったからこそ、俺はサリアを抱きしめ言い放つ。
「全部サリアの気のせいだ。触れる事を拒否したってのは、拒否してくれて良かったんだよ。サリアが拒否してくれたから
アルフォンスの事は…………絶対にサリアは渡さねーからどうでも良いんだよ」
そう言った後、俺はさっきの考えもサリアに話した。
スティレット家を大きくするまでは――――――だ。
全て聴き終えた後、サリアははらはらと涙を流して俺に謝った。
「申し訳ありません…………ルシード坊ちゃまにそのようなお考えがあることに気付かず、私の浅慮と勘違いでこのような――――――んむっ」
俺はそれ以上言わせるつもりなんて無いから、サリアの口を塞いだ。
サリアは驚いて身を固くしていたが、すぐに受け入れて俺にされるがままになった。
名残惜しくもあるが一旦唇を離すと、
「俺がそういった事に消極的なのはやっぱ失恋を引きずってるんだと思う、自分でもいつまでそんな事気にしてんだよって呆れるくれーだ。サリアには悪いんだけど、俺にそうした事全部忘れさせるくらい強烈なのをくれないか?」
イタズラっぽくそう言うと、サリアはその言葉の意味を徐々に理解してくれたみたいで、恥ずかしそうに布団を握り締めて、でもやっぱり嬉しそうに微笑んでくれた。
「はい――――――。私の全身全霊を賭けて、ルシード坊ちゃまの御心からあの無礼な女を追い出して差し上げます。ですから…………その……………」
握った布団を引き上げて顔を隠したサリアは、消えてしまいそうな声で、
「今宵はサリアを…………たくさん、愛してくださいませ」
――――――我慢の限界だった。
全部終わった後に聞いた話、サリアが言った最後のセリフはマーサが旦那を墜とした時に言ったセリフそのままなんだそうだ。
俺は心の中で静かにマーサにグッジョブを送った。
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